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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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浜松城攻防戦⑥〜暴発に若武者は苦悩する〜

勝頼率いる武田軍が浜松城を包囲して3日目が過ぎた。この日も包囲だけに止めていたが、兵達からは不満の声が漏れ出していた


「何故、四郎様は攻撃の許可を出さないのじゃ?徳川なんぞ、例え城があっても我々なら一捻りじゃ!」


「そうじゃ!このままでは飢えと寒さで動けなくなってしまう!早く徳川達を倒して食料を奪ってしまおう!」


「最早、命令を待っている暇など無い!我々だけで夜襲を行うぞ」


勝頼が落ち着き、何処から攻撃するか?を再度考えられる様になって、馬場も山県も一安心している時に、兵達がこの様な軍令違反を考えているとは三人とも頭の中に無かった


そして事件は四日目の夜に起こった。突如、場内から


「敵襲じゃあー!」


「西側から武田が来たぞー!!」


「此処で討ち取れ!!」


一部の武田兵、およそ百人が暴発し勝手に夜襲を仕掛けた。それに便乗する様に他の兵達も参加し、その数五百に膨れ上がった


「何事じゃ!?」


城から聞こえる戦いの声に勝頼が慌てて本陣に来た。本陣には既に馬場と山県が到着しており、状況説明をした。すると


「ええい!愚か者達め!力攻めが出来るか分からないからこそ、包囲していたというのに!」


「四郎様。お怒りはごもっともですが、此処は他の者達も出陣させてしまいましょう。放置してしまっては、「四郎様は危機に陥った味方を助けない大将」などと悪評が流れてしまいます」


「四郎様。御下知を」


「ええい!分かった!全軍突撃!夜襲を仕掛けた者達と共に暴れてこい」


「「「うおおお!!!」」」


勝頼の命令を聞いた兵達は喜び勇んで、突撃して行った。しかし、武田軍は徳川と織田の合計が自軍と同じだと知らないので、


徳川の兵を一人倒しても、あっと言う間に他の徳川兵に討ち取られた。


そして、その様な状況が各所で起きた結果、


「撤退の太鼓を鳴らせ!!」


勝頼は兵の撤退を決断した。何とか戻って来た兵達の中から、夜襲を発案し実行した者を手にかけようと刀を抜こうとしたが、


その前に馬場が動いた


「この痴れ者が!!四郎様が城をどの様に攻めるか策を考えている中で、勝手に夜襲を仕掛け、徳川の兵を減らす事も出来ず、城に穴を開ける事も出来ぬだけでなく、味方を減らすとは!どの様に責任を取るつもりじゃ!?」


近くにあった木の枝で叩きまくった。それを見た勝頼は


「馬場殿!もう良い」


そう言って止めさせた。そして


「お主の武田の勝利の為に動いた気持ちはありがたいが、お館様と共に尾張の織田を討ち取り、そして京の都に風林火山の旗を立てる為に一人でも多くの兵が必要なのだ。それはお主も同じくじゃ。此度の事は不問とするが、今後はこの様な事はやらないでくれ。良いな?」


夜襲の発案者の肩に手を置いて、優しく問いかけた。すると発案者は


「四郎様の優しき御沙汰、有り難き幸せにございます。これからは勝手な行動は致しませぬ」


「うむ。そう言ってくれて忝い。皆も手当てをしてこい」


そう言って勝頼は戻ってきた兵達を解散させた。そして馬場と山県と三人だけで陣幕内で


「馬場殿。汚れ役をやっていただき、済まない」


「なんの。あの場で四郎様が、あの者を切ったならば兵達が離反してしまいまする。だからこそ拙者が汚れ役を行ない、四郎様が許す大将になれば兵達も纏まるというものです」


「馬場殿、流石、年の功ですな。四郎様もよくぞ怒りを抑えてくださいました」


「本当に二人には感謝しかない。改めてじゃが、このまま包囲を続ける。二人共、兵達の元へ行ってくださらぬか?しばらく一人にさせてくだされ」


「「ははっ」」


馬場と山県は何かを察したのか、何も言わず陣幕を出た。そして、1人になった勝頼は


「儂は何も出来ぬ。あの二人が居るから此度の事も何とかなった。しかし、兵達は儂の指揮下に居ても勝手に動く。これが父上の指揮下ならばこんな事は絶対に起きないだろう。儂も一応、武田の一族なのだがな。儂の事など誰も信じてくれぬ。儂は何の為に生きておるのだろう?儂の存在意義とは何なのじゃ?」


自らの存在意義を否定する程に不甲斐なさを痛感していた。

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