信長の悪ノリに北条家が罹った様で
天正二十三年(1595年)十一月十五日
常陸国 佐竹家領内 湊
「それでは皆、陸奥国へ出陣じゃあ!」
「「「「おおお!!!」」」」
皆さんおはようございます。朝から佐竹家の出陣人数に驚いております柴田六三郎です
その人数なんですが、なんと4000人ですよ!流石、およそ七十万石を領する大大名ですよ!出陣のお触れを出したら4日で4000人集まりました
で、この4000人を船に小分けして移動する為に、集めた船が大小合わせて400ですから、改めて治めている歴史が長いと協力する領民も多いんだなと納得です
佐竹家の慕われ度合を見ていると、柴田家の本拠地の播磨国は、どうなっているのか不安になっている所です。だからこそ、早くこの無駄な事この上ない戦を終わらせたいと思っております
あ、どうやら、佐竹家の皆さんの船が出発準備完了になった様ですので、俺と真田兄弟が乗って来た船を先頭に陸奥国へ出発したいと思います
六三郎が早く播磨国に行きたい欲が強くなって来ていた頃、相模国の北条家にも動きがあった
天正二十三年(1595年)十一月十六日
相模国 小田原城
「ほれ!!弥三郎!これくらいの事が出来なければ、元服の許しは簡単にはおりぬぞ!!しっかりと身体を鍛え、
そこから頭を鍛えてこそ元服出来て、竜代姫を嫁に迎えられると思えば、これくらい大した事ではないぞ!気合いを入れんか!」
「は、はいい!」
六三郎達が常陸国を出発した翌日、小田原城の一部では幻庵の曾孫の中で嫁取りに待ったがかかった最年少の弥三郎が筋トレをしながら、幻庵に叱咤激励されていた
しかし、未来で言うところの小学四年生に坂道ダッシュ一往復と、10回ずつとはいえ筋トレをさせた結果
「気を失ったか、まあ一度に出来るわけはないから仕方あるまい、三郎と新三郎!弥三郎を涼しい場所に連れて行って休ませてやれ!」
「「ははっ!」」
失神したので、同じ曾孫の三郎と新三郎に弥三郎を連れて行かせ、今日の訓練は終了となった
部屋に戻った幻庵は襖を閉めると
「小太郎、何か起きたか?」
部屋の中で待っていた風魔小太郎に問いかける。幻庵の言葉を受けた小太郎は
「はい。北条家に直接関係あるとは思えない事の様ですが、幻庵様に判断していただこうと思いまして」
何やら面白い事が起きたかの様な、含みを持たせた言い方をする。その言葉に幻庵は
「詳しく申してみよ」
説明を促す。そこから小太郎は説明を開始する
「では、陸奥国の伊達家の本拠地である会津の南部にあります蘆名家にて、当主蘆名平四郎が殺されたのですが、首謀者は蘆名家の一族にあたる針生平三郎と言う武将なのですが
どうやら殺されました蘆名平四郎は、常陸国の佐竹家からの養子だった様で、仇討ちの為に佐竹家が前日に領内の湊から陸奥国を目指して出立いたしました」
そこまでの説明を聞いて幻庵は
「ふむ。確かに、北条家に直接関係あるとは言えぬ話ではあるのう。松田の謀反の前までの北条家ならば、
この機に常陸国の一部を掠め取るくらいはやったじゃろうが、今の北条家はその様な事はやらぬ方針じゃからな
小太郎よ、教えてくれて済まぬが、報告しておきたい内容がそれで終わりならば、引き続き領内の警護に」
小太郎に領内の警護の任務に戻る様に伝えようとしたが、小太郎から
「その戦に柴田六三郎殿が参戦しておりますが、そのままにしておきますか?」
「六三郎が参戦してるよ?」と伝えられると、幻庵の顔が変わり
「それを早く言わぬか!」
軽く叱責した。更に
「六三郎殿が参戦してるのであれば、話は別じゃ!あの若者は織田家の天下統一事業は勿論、その後の日の本の安寧にも絶対に必要な人間じゃ!
此度の様な無駄な事この上ない戦で死なせてはならぬが、だからと言って北条家が大々的に軍勢を動かすのは良くない!
小太郎よ、この事は殿や大殿には伝えぬ!だからお主達風魔衆の中から精鋭を連れて行き、針生平三郎とその仲間達に少々嫌がらせをしてまいれ!」
「六三郎を守る為に針生達に嫌がらせをして来い」と命令する。それを聞いた小太郎も
「幻庵様ならば、そう仰ってくださると思っておりました。我々風魔衆、既に準備完了しております」
出発準備完了と伝える。伝えられた幻庵は
「お主達も元から行くつもりだったではないか!まったく、儂もそうじゃが小太郎
いや風魔衆全体も六三郎殿と過ごした事で考えが少しばかり変わった様じゃな」
風魔衆の変化を指摘する。指摘を受けて小太郎は
「はい。柴田殿は、我々風魔衆の正体に気づいてないでしょうが、決して我々を粗雑に扱わなかった武将です
北条家の方々以外では、初めてその様な方に出会いました。だからこそ、柴田殿の行動は気にしておりました」
「六三郎が自分達を丁寧に扱ってくれたから気にしている」と正直に答えた。小太郎の答えを聞いて幻庵も
「儂と同じじゃな小太郎よ、六三郎殿の「他者の為に働く為人」はこの戦乱の世でとても得難い稀有な存在じゃ!針生平三郎の様な己の事しか考えていない阿呆に殺させてはならぬ
ここ迄言えば充分じゃろうが、小太郎よ。急いで出立し、針生平三郎と仲間達が佐竹家と伊達家に負ける様嫌がらせをしながら、六三郎殿を守れ!」
「ははっ!それでは、出立致します!失礼!」
幻庵は明確に命令し、小太郎を含む風魔衆の精鋭20名は、その日のうちに小田原城を出立した。こうして六三郎は知らないうちに、護衛が増えていた。




