伊達政宗のある意味窮地は六三郎のせい
天正二十三年(1595年)十月二十日
陸奥 相馬家領内湊
「柴田様!こちらの船が、柴田様一行を乗せる船になります!最低限の水と食料しかありませぬので、お気をつけてくだされ!船頭にも、一大事である事は伝えております!」
「うむ。忝のうございます!それでは船頭の方、漕ぎ手の方々、よろしくお願いしますぞ!」
「「任せてくだせえ!」
皆さんおはようございます。朝早い時間から、船に乗っております柴田六三郎です。相馬殿が貸してくれた船ですが、速さ優先ではあるものの、安全面を考えた結果、中型の船になりました
まあ、仕方ないですね。これで俺が万が一海賊に襲われて死んだら、伊達家どころか陸奥国が大変な事になりますし、
自分で自分の事を偉そうに言うのもおかしな話ですが、一応、俺は織田家の重臣ですので。武家の重臣は未来の会社で言えば役員ですが、
どうやら俺は役員なのに、扱いは平社員の様です。しょうがない、本能寺の変が起きない為に動いた結果として受け止めよう!
ああ、すいません。独り言が過ぎました。それでは、常陸国へ出発です!
六三郎達が相馬家の湊から常陸国を目指して出発した数日後、伊達政宗達はというと
天正二十三年(1595年)十月二十六日
陸奥国 某所
「一旦止まれ!」
政宗が隊列の進行を一旦止める。隊列の数はおよそ500人。比較的スムーズに命令が行き渡り、すんなり止まると政宗は
「針生の屋敷はあれで間違いないか?」
およそ500メートル程、目の前にある屋敷を針生家の屋敷かと確認する。側に居た家臣は
「はい。あの旗印は、針生家の物に相違ありませぬ」
針生家の旗印だと答える。それを聞いた政宗は
「そうか、ならば、このまま見ておるわけにはいかぬな!針生家へ行くぞ!」
確認も早々に、針生家の屋敷へ行くと宣言する。それを聞いた家臣は
「と、殿!いくら何でも危険過ぎます!我々が先に行って、事の次第を説明してからでも!」
慌てて政宗を止めようとした。しかし、政宗は
「たわけ!良いか、この陸奥国の騒乱を早期に鎮圧する為に柴田殿が動いてくれておるのじゃぞ!本来ならば柴田殿は、
「危険だから」と言う理由で陸奥国から出て行っても良い立場じゃ!それでも残り、更には佐竹家に説明に行く大役を自ら引き受けてくれたのじゃ!
なのにも関わらず、儂が此処で何もしなければ、儂は何の為に柴田殿に頭を下げた!?右府様から陸奥国を統一出来ると信頼されたからこそ、
母上から父上の様な非業の死を無くしてくれと頼まれたからこそ、儂は針生家に行き、事の真相を確かめねばならぬ!分かったのであれば準備せんか!」
「殿、、、ははっ!ですが、先陣は我々が切りますので、殿は中央に居てくだされ!」
六三郎に任せっぱなしである事、信長に陸奥国をを託された事、輝宗の様な人間を出さない事、それらの為に針生家に行く事を伝えて、家臣達も了承する
そして、移動を再開して屋敷の前に到着すると、
「針生家の方々!伊達藤次郎にござる!此度、貴殿達にある事を聞きたく参った次第じゃ!門番の足軽ではなく、当主殿と話がしたい!」
大声で「足軽ではなく当主を出せ!」と叫ぶ。その声に反応したのが、針生家の重臣らしきじんぶつが現れ
「伊達家の皆様、拙者、針生家当主平四郎盛秋様と、その愚兄、平三郎盛春の叔父にあたります、針生平之助盛義と申します
当主の平四郎様は、大広間にでお待ちしておりますので、お入りくださいませ!」
針生家当主と、今回の事件の首謀者の叔父であると自己紹介して来た。盛義の言葉に政宗は
「案内していたただこう」
案内を頼む。そのまま盛義の案内で屋敷内を進み、大広間に到着すると、そこには針生家当主の針生平四郎盛秋が居た
しかし、その盛秋は政宗達を見ると
「叔父上。兄上よりも先に伊達様が、到着したのですな?それならば、後の事は」
何か安心した様だった。そんな盛秋に対して盛義は
「平四郎!伊達様が、あの愚か者よりも先に来たのじゃから、短刀を捨てよ!切腹なんぞするな!!」
そう返答する。しかし盛秋は
「いえ、叔父上。これは、拙者の、針生家当主としての償いです!伊達家に対して、佐竹家に対して、何より陸奥国に対して、
不要な騒乱を引き起こしてしまった事への、償いなのです!だから、拙者は切腹して、詫びまする!叔父上!後の事は!」
今回の責任を取って、切腹する覚悟を見せる。そんな盛秋に対して政宗は
「止めんか!!」
大声で盛秋を止める。その一瞬の隙が出来ると
「御免!」
「御免!」
「御免!」
「御免!」
政宗の家臣達が盛秋に飛びかかり、短刀や周囲の武器を奪う。赤備え達と数日とはいえ合同訓練で鍛えられた家臣達は、盛秋を保護して切腹出来ない状態にした。しかし盛秋は
「伊達様、お願いです。此度の、騒乱の責、を、拙者に、取ら、せてくだ、され。切腹を、させて、」
涙ながらに、政宗に「切腹させて責任をとらせてくれ」と頼むが、政宗は
「針生殿。一人で抱え込ますに、先ずは拙者に話してくだされ!此度の事、拙者は大まかな事しか分かりませぬ!
色々と針生殿から教えていただきたい!だから、先ずは落ち着きなされ。よろしいですな?」
何とか盛秋を宥める為に言葉を選びながら、話しかける。政宗の言葉を聞いた盛秋は
「分かり、ました」
何とか落ち着いて、政宗と会話する事を了承する。こうして、政宗の第一目的は達成された。




