事態は動く!到着するのはどちらが先か
天正二十三年(1595年)十月十七日
陸奥国 田村家屋敷
「柴田殿!前日の続きとなりますが、誠に船での移動で、その船を相馬家の湊から出立させるのですな?」
皆さんおはようございます。朝も早くから、陸奥国の騒乱を鎮める為の軍議に参加しております柴田六三郎です
先程、伊達殿が言っておりましたが、陸路よりも海路の方が早いとの事で、領地に湊がある相馬家に今から話を持っていく事に決まりましたが
いくつか問題がありました。それは
「ただ、相馬家の湊の大きさも船の数も分かりませぬぞ?柴田殿と赤備え達を常陸国へ何人連れて行けるのかは」
「相馬家の湊の大きさと船の数」という、目の前で見ないと分からない内容でした。こればかりは出たとこ勝負としか言えないな。それでも動くしか無いよな
政宗の胸のうちを聞いた六三郎は
「伊達殿!相馬家の船の数が少ないのであれば、乗る人間も少なくしたら良いだけの事!最悪の場合は、儂1人だけが佐竹家に行けば良いだけじゃ!
だが、実際はそうも行かぬ!儂と共に佐竹家に行くのは2人として、残りは陸奥国で万が一に備えて残しておく!なので伊達殿、相馬殿を納得させる為の文を急いで書いてくだされ!」
「最悪の場合を考えて、赤備え達の殆どは陸奥国に残すから相馬家への文を書け!」と政宗の背中を押す。六三郎の言葉を受けて政宗は
「わ、分かりました」
相馬家への文を書き始める、書き始めて20分後
「完成しましたぞ!」
そう言って、政宗は六三郎に文を見せる。その文の内容に六三郎は
「伊達殿!お見事な内容です!これを見せた上で、相馬殿に船を出していただく様、説得して来ますぞ!」
そう宣言した。すると、今回の軍議に参加していた昌幸から
「殿、ひとつよろしいでしょうか?」
何やら質問がある様だったので、六三郎は
「喜兵衛、申してみよ。この騒乱を一日も早く鎮める事に繋がるのであれば何でも言ってくれ!」
「言ってみてくれ!」と発言を促す。六三郎に促された昌幸は
「では。殿が相馬殿の元へ行き、船を出してもらい海路で佐竹家の元に行く事は分かりますが、絶対に抑えておかねばならぬ針生家の対処はどうなさいますか?
今のところ、針生家の一部の者の暴走なのか、針生家全体での暴走なのかが分からない以上、針生家全体が敵だった場合、伊達家と田村家の間どころか相馬家との間に楔を打ち込まれた様な形になってしまいますぞ
そうなっては、佐竹家が軍勢を率いて陸奥国に進行して来ても、何処から何処までの家が味方かが分からずに泥沼の戦になってしまいます!
なので、拙者の提案といたしましては、殿が相馬家と佐竹家に交渉に行くのですから、伊達様にも針生家を交渉して味方に引き入れる、もしくは針生家全体の暴走ではない事を確認する為に交渉に行ってもらうべきかと存じます!」
「殿が働くだけじゃなく、伊達政宗も働かせろ!」と言い切った。その言葉を聞いた政宗の家臣達は
「真田殿!それはいくらなんでも!」
「そうですぞ!殿は屋敷に戻る事を最優先とすべきです!」
「これで針生家に行った時に殿が討たれた場合、どう責任を取るおつもりか!」
当然、反対意見を出す。しかし政宗は
「やめんか!!」
家臣達を一喝し、黙らせる。大広間が静かになった事を確認した政宗は
「皆の気持ちも分かる。だが、儂達が産まれ育った陸奥国の騒乱を鎮める為に、柴田殿が働いておるのに、右府様から陸奥国統一を命じられた儂が、何もしないなど間違っておる!
だからこそ、儂は針生家に行き、此度の事を問いただす!そして此度の事が、針生家の一部の者達の暴走ならば、その者達を討つに留める!
その為に、儂は一部の者達と共に針生家に行く!皆も覚悟を決めてくれ!」
針生家に行く事を決断する。その政宗に対して、軍議に参加していた氏顕が
「義兄上。家臣の皆様を一部と言わず、全員連れて行ってくだされ。この田村家は戦力は一千人は居ます、それに、この半年、赤備えの方々と共に身体を鍛えて強くなっております
だから義兄上が先ず最初にやるべき事は、針生家の真意を確認する事、そして愚行を犯した者達を討つ事です。それに、万が一にも嫡男の熊菊丸様が人質になってしまっては、全てが水の泡となります
だから義兄上!いえ、殿!一刻も早く屋敷へお戻りくだされ!」
「田村家は大丈夫だから、全軍を率いて早く針生家に行って来い!」と力強い言葉で政宗の背中を押す
義弟の言葉に政宗は
「生意気を言いおって!じゃか、その言葉、義兄として、主君として、誠に嬉しいかぎりじゃ!そこまで言ってくれるならば、田村次郎よ!お主、儂の正室の愛を戦が終わるまで、保護しておけ!良いな!?」
笑顔で、連れて来た面々を全員連れて行くと宣言して、正室の愛姫を保護する様、命令する。政宗の命令に氏顕も
「ははっ!」
力強い返事を返す。こうして、伊達政宗が騒乱を鎮める為に立ち上がった頃、蘆名家屋敷では
同日
陸奥国 蘆名家屋敷
「殿。領地の八割程が征圧出来たとの報告です」
義広を殺した針生盛春は、その後屋敷を占拠し、蘆名家の領地を征圧していた。そんな中で家臣が盛春へ征圧地域の増加を報告していた
「そうかそうか。やはり、偽者の当主の元では、領民達も反抗的だったが、誠の蘆名家の血筋の者が当主になったからこそ、早い段階で言う事を聞いておるな
しかし、蘆名家の本来の領地はもっと大きかったのじゃ!こんな領地で満足してはならぬよな?」
報告を聞いた盛春は上機嫌になり、更に領地拡大の野望を口にする。盛春の野望を聞いた家臣は
「どの家から攻撃していくのですか?」
攻撃目標を確認する。家臣の言葉に盛春は
「そうじゃな、先ずは弟と一部の者達を残した針生家を改めて味方にする。それが終われば、田村家に対して臣従か否かを問うとして、そこから更に相馬家の湊を奪う為に攻撃と行こうではないか!」
これからの予定を伝える。しかし、それを聞いた家臣は
「殿。伊達家への攻撃は如何なさいますか?」
「伊達家はどうするのか?」と質問する。その質問に盛春は
「伊達家は最期の最期じゃ!まあ、儂の考えとしては佐竹家からの養子を殺した件を伊達家になすりつけ、それを佐竹家に伝えて、佐竹家に伊達家を始末してもらうつもりじゃ!
伊達家も佐竹家も織田家に臣従したらしいが、いくら強大な権力を持つ織田家と言えど、畿内に居るのに奥州の事で即座に動く事など不可能じゃ!
だからこそ、儂達が密かに動いている間に陸奥国の南部を征圧して、少しずつ支配地域を広げ、最終的に陸奥国を儂が当主になった蘆名家が統一する!」
六三郎が考えていた事を実行する考えを、家臣に伝えた。こうして、伊達政宗と針生盛春、どちらも最初の目的は針生家を味方に引き入れる事になった
針生家に到着するのは、どちらが先になるのか?そして、六三郎はどれだけ早く動けるのか?




