間話 若かりし頃の勝家と家族②
勝姫と吉田家の面々の姿が見えなくなると義勝は
「さて、権六よ。今から勝幡城へ行くぞ!準備せい」
「えっ!?父上、今からですか?確か、殿からは慶事なのだから、三日は休んで良いと言われていた筈だと思うのですが」
いきなり、この頃の織田弾正忠家の居城、勝幡城へ行くと勝家に伝える。しかし、勝家は当時の弾正忠家当主であり、
信長の父の信秀より「三日は休んで良いと言われた」と言われた事を義勝に伝える。勝家の言葉に義勝は
「この大たわけ!殿から休んで良いと言われたからと言われて、そのまま休んで良いわけが無かろう!!
殿のお言葉に甘えさせてもらうのは、祝言の日だけじゃ!これからはお主が、儂のお役目を少しずつ引き継いでいかねばならぬのじゃぞ!呑気に構えておる暇は無いと思え!」
家督相続を示唆する言葉で、勝家を叱責する。しかし当時まだ15歳の若武者の勝家は
「父上。拙者はまだ十五歳ですし、父上もまだ三十五歳なのですから、そんな慌てずとも良いではありませぬか」
呑気に答える。勝家の言葉に義勝は
「やはり分かっておらぬではないか!!」
再び勝家を叱責する。そこから続けて
「よいか権六!この尾張国は、北を美濃国の斎藤家、東を三河国の松平家という、国主が定まって落ち着いておる国が近くにあるのじゃぞ!
その家が万が一にも尾張国に攻め込む可能性を、何故考えられぬ!そこから戦になるだけでなく、松平家と斎藤家が手を組み、尾張国に攻め込む可能性すらあるのじゃ!
そうなった時、弾正忠家以外の織田家では尾張国を奪われてしまうじゃろう!だからこそ我々柴田家は、弾正忠家をお支えする姿勢を示すのじゃ!」
尾張国内の混乱と周辺国の情勢を踏まえて、尾張国を統一出来るのは弾正忠家だけであると力説する
義勝の迫力に勝家は
「分かりました、分かりましたから!父上、そこまで仰るのですから勝幡城へ行きましょう、急いで行きましょう!」
義勝を落ち着かせる為に、勝幡城へ早く行こうと伝える。勝家の言葉に義勝は
「最初からそう言わんか!ほれ、準備に取り掛かかるのじゃ!急げ!」
「さっさと準備しろ!」と勝家を促し、自身も準備に取り掛かる。そして、準備を終えると馬に乗り勝幡城を目指して出発して行った
天文四年(1535年)五月八日
尾張国 勝幡城
「殿!娘を無事に吉田家に嫁がせる事が出来ました!本日より倅の権六と共に、前以上に弾正忠家の為に働きます」
「柴田土佐守の嫡男の権六にございます」
屋敷を出発してから2日、義勝と勝家は勝幡城の到着し、城主で弾正忠家当主の織田信秀に挨拶をしていた
2人の挨拶を受けて信秀は
「はっはっは!柴田土佐よ、あと一日くらいゆっくりしても良かったのじゃぞ?それ程慌てずとも良かったのじゃが、その忠節は誠に嬉しく思う!倅の権六共々これからよろしく頼むぞ!」
笑いながらも、義勝を褒め称えた。そんな信秀は勝家に対して
「さて、話は変わるか柴田土佐の倅!名を権六と言ったな!既に親父から聞いておると思うが、儂にも前年に嫡男が産まれたのじゃが
これからお主と長い付き合いになるじゃろうから、此処で初顔合わせとしようではないか!誰ぞ、吉法師を連れて参れ!」
軽く挨拶をすると、幼い信長を連れて来る様に命令する。命令を受けた家臣は、急いで信長の元へ行き、信秀の元に連れて来る
数え年で2歳、実質1歳の信長は大広間に到着すると
「父上!こちらの見事な身体の武士二人は、父上の家臣なのですか?それとも、織田家の本家から来た使者なのですか?」
義勝と勝家を見て、「家臣なのか?それとも本家からの使者なのか?」と、いきなり質問する。そんな信長に信秀は
「はっはっは!吉法師よ、この二人は本家からの使者ではなく、儂の家臣じゃぞ。土佐守と権六、自己紹介をせよ」
「ははっ!吉法師様、柴田土佐守義勝にございます」
「土佐守の嫡男の柴田権六勝家と申します」
2人に自己紹介を促し、それぞれ自己紹介を行う。2人の自己紹介を受けた信長は
「柴田土佐守と嫡男の権六じゃな!儂は織田吉法師じゃ!儂が元服して、父上から家督を継いだら、尾張国は勿論、東海道、畿内、いや日の本全ての武家が織田家に臣従し、日の本全土から戦が無くなるぞ!
だから、お主達も長生きして、弾正忠家を支える為、儂を支える為、しっかりと働け!良いな!」
「織田弾正忠家が自分の代で天下を取る」と宣言をした。それを聞いていた信秀は
「これ!まだ二歳の小童が何を言う!土佐守と権六、気にせず忘れてくれて構わぬぞ」
2人に「子供の戯言だから忘れて良いぞ」と言うが、義勝は
「ははっ!この年寄りも、元服した吉法師様の元で働ける様、長生きする所存にございます!」
そう答えて、信長の言葉を肯定した。続いて勝家も
「ほはっ!若輩者なれど、弾正忠家が出陣を御決断なされた際は、先陣を切り、道を開きまする!」
これからの織田家の為に覚悟を示す。2人の言葉を聞いた信長は
「うむ!これからよろしく頼むぞ!先ずは、父上の為に働いてくれ!」
そう答えた。こうして、勝幡城での挨拶を終えた義勝と勝家は自宅に帰って行った。その道中、義勝は
「権六、正直に答えよ。お主、吉法師様を見て、言葉を聞いて、どう思った?」
勝家に信長の印象を質問した。義勝の質問に勝家は
「他の武家の幼子をあまり知らないので、明確には言えませぬが、あれで二歳とは信じられませぬ!
ですが、拙者としては三河守様が吉法師様を甘やかさないと思うので、あの考えは変わらずに成長し、元服し、早い段階で尾張国を統一すると思っております」
正直に「吉法師なら、本当に尾張国を統一する」と答えた。勝家の言葉を聞いた義勝は
「はっはっは!何じゃ権六よ、儂と同じ考えではないか!それならば、とやかく言わぬ!じゃがな権六よ、吉法師様は尾張国統一で満足しないと儂は思っておるぞ!
だから、儂は長生きして、お主は早く嫁をもらい、子を多くもうけて、柴田家を発展させよ!」
数十年後に勝家が六三郎に言った言葉を、勝家に伝えていた。それを聞いた勝家も
「善処します」
六三郎と同じ言葉で答えていた。こうして、信長と勝家の初対面は、強いインパクトと信長の将来性に義勝と勝家の両者が可能性を見出す形で終了した。
本来の1歳は、こんなに喋らないだろ!と思うかもしれませんが、フィクションと言う事でご了承ください。




