播磨国に到着すると
天正二十三年(1595年)三月二十五日
播磨国 柴田家屋敷
「親父殿!お市様!此度は拙者の娘の事で、無理を聞いていただき、誠に忝うございます!」
備前国を出発してから5日後、秀吉は吉田達の先導で柴田家屋敷に到着し、すぐに勝家と市が居る大広間に通されていた
そこで秀吉は、娘の吉姫の事で無理を聞いてくれた事の礼として、2人に頭を下げていた
そんな秀吉に、勝家が
「藤吉郎、とりあえず頭を上げてくれ。その様な状態では話が出来ぬから」
そう言って秀吉の頭を上げさせる。勝家に促されて頭を上げた秀吉は
「親父殿のお言葉に甘えさせていただきます!」
そう言いながら、頭を上げると
「改めて親父殿!拙者の娘の吉と次三郎様の件についてですが。何故、勘九郎様は知っておられたのでしょうが?何か分かりますでしょうか?」
早速、信忠が今回の事を知った経緯を勝家に質問する。秀吉の質問に勝家は
「藤吉郎、勘九郎様が此度の事を知ったのは、他ならぬ次三郎様からの文じゃ。次三郎様は胸の内を書いた文を安土城に届けていたそうで、そこから勘九郎様が知る事になったとの事じゃ」
大まかに秀吉へ説明する。勝家の言葉に秀吉は
「そ、そうだったのですか。次三郎様は祖父である大殿に似て行動力がありますな」
驚きながらも、長忠を褒めていた。秀吉の言葉に次は市が
「藤吉郎、次三郎殿の行動力は兄上は勿論ですが、父である勘九郎殿譲りでもありますよ。それこそ、勘九郎殿と正室の松殿の嫁入りの話なんて、正しくですよねえ。権六様」
「父親の信忠も同じ様な事をしていた」と話す。その話に秀吉は
「勘九郎様にも同じ様な事があったのですか!?親父殿!どの様な事か知っているのでしたら、教えていただきたく!」
当然、食いついた。2人の反応に勝家は
「まあ、出来るかぎり大まかに話すと」
大まかに当時の事を秀吉に伝える。聞いた秀吉は
「何とも運命的な展開ですな!そして、そのきっかけが六三郎殿とは!六三郎殿の人を引き寄せる天賦の才は最早、疑い様がありませぬな!
昔、親父殿が六三郎殿に親らしい事をしていないと仰っておりましたが、それでも六三郎殿が親父殿を頼りにしている事が分かる話がある時点で、
親父殿は厳しさと優しさが溢れる子育てをしていたのだと、拙者は思いますぞ?」
勝家がなんだかんだでしっかり子育てをしていたと、口にする。それを聞いた勝家は
「まあ、儂の場合は六三郎が常識外れではあるが、織田家の為に働いておるから最終的に良かったのじゃがな、
まさか六三郎の奴も儂と同じく子と離れてお役目に就くとは思わなかったからのう」
少し照れながら、六三郎が自分と同じ様に我が子と離れて仕事をするとは思わなかった。と秀吉に話す
それを聞いた秀吉は
「親父殿!六三郎殿に子が産まれたのですか!?」
思わず大きな声で勝家に質問すると
「う、うむ。甲斐国の復興事業の際に三人産まれたのじゃがな、四人目も産まれてあるのじゃが、藤吉郎、お主も備前国で吉田から聞いたと思うか、
六三郎は現在、大殿と共に陸奥国に行っておるのじゃが、実は陸奥国に行く前に徳川様の次男で元服して勝之尉様と名乗っておるのじゃが、その勝之尉様の元服の儀と祝言に出席した際、
同行していた側室の妊娠が分かったのじゃが、季節が冬になる頃合いだったので、徳川様のご厚意により、大殿と六三郎が戻るまで、
徳川様の居城で池田殿を含めた三百名が世話になっておる。しかも織田家から生活費を送ってもらっておるのでな、とりあえず六三郎の子は四人じゃ」
勝家は六三郎の子供達の事を秀吉に話す。それを聞いた秀吉は
「親父殿。もしも、もしも六三郎殿の男児に許嫁が居ないのであれば、拙者の三番目の娘の長乃など、どうでしょうか?これから良き女子になるでしょうから!」
まだ十歳前後の三女を甲六郎と宗六郎の許嫁にどうかと提案するが、
「藤吉郎、その様な話をする為に播磨国に来たわけではないでしょう?本来の目的は何ですか?」
市から「本来の話に戻せ」とツッコまれると、
「そうでした。親父殿、お市様。申し訳ありませぬ。改めてですが親父殿から拙者に頼みたい事があると、吉田殿から文を見せてもらいましたが、どの様な事でしょうか?」
本来の目的を思い出して、真剣な顔になる。秀吉の真剣な顔に勝家も姿勢を正して
「うむ。改めてじゃが藤吉郎、儂がお主に頼みたい事じゃがな、お主の娘の吉姫と次三郎様を安土城まで連れて行く事なのじゃ」
本来のやってもらいたい事を伝える。伝えられた秀吉は
「それは構いませぬが、親父殿。もしや勘九郎様からの命令なのですか?」
勝家に「信忠からの命令なのか?」と確認する。勝家は
「実際にはその通りじゃが、殿曰く「我が子の嫁取りに命令の形を取りたくない」との事じゃ。まあ、簡潔に言うならば殿なりの親心じゃな
それに、これは儂の推測じゃが殿は次三郎様と吉姫を連れて来た藤吉郎と話し合いをしたいのかもしれぬ。
本来ならば、儂が二人を安土城へ連れて行けば良いのじゃが、それを藤吉郎を指名したのじゃから、そう考えておられるのかもしれぬ
改めてじゃが、藤吉郎。次三郎様と吉姫を安土城に連れて行く役目を受けてくれるな?」
内容を伝えて、秀吉に確認すると
「ははっ!殿の親心、拙者にも理解出来ます!命令ではなく頼み事として受けましょう!」
秀吉は了承した。こうして、信長の孫の嫁取り話が進む展開になりつつあった。
少しでも面白いと思えましたら、ブックマーク登録お願いします。




