安土城に慶事が起きて息子からの文か届くと
天正二十三年(1595年)三月二日
備中国 備中高松城
「それでは、播磨国との中間にある備前国に移動しておく!小一郎!しばらくの間、家中の取りまとめを頼むぞ!」
「ははっ!兄上もお気をつけて!」
秀吉が長女の吉姫の相手である次三郎の事で、モヤモヤしながらも勝家に文を送り、早く到着する為に備中国と播磨国のおよそ中間にある備前国へ移動し始めた頃、
次三郎の父の信忠の居る安土城では慶事が報告されていた
天正二十三年(1595年)三月三日
近江国 安土城
「そうか!藤四郎と周殿の間にやや子が!誠にめでたいのう!」
「内府様、ありがたいお言葉にございます。順調に行けば葉月の中頃の出産になるとの事です」
毛利家から人質になっている小早川藤四郎の正室の周が妊娠した報告を信忠が受けていた。報告を受けて信忠は
「それならば、周殿に無理をさせてはならぬな。安芸乃、周殿の身体の負担を減らす為、しばらく自分で出来る事は自分で出来る事は、自分でやるのじゃぞ?」
「はい。毛利家の子が増える事は、大変喜ばしい事ですので、無理をさせません」
どうやら信忠への報告は藤四郎と安芸乃が行なっていた様だった。2人からの報告を聞いた信忠は
「誠にめでたい事じゃ!そうじゃ、めでたいで思ったが安芸乃、お主、嫁入りに関して聞きたい事があるのじゃが」
「構いませんが、どの様な事でしょうか?」
安芸乃に対して、嫁入りでも聞きたい事があると質問する。安芸乃も了承した事で信忠は質問を始める
「うむ。既に安芸守には文を届けてあるが、安芸乃の嫁ぎ先として、儂の弟達と叔父上が候補に上がっておる
そこで安芸乃に聞きたいのじゃが、嫁ぎたい男は歳上が良いか?それとも歳下でも良いか?教えてもらいたい」
「私として嫁ぐ殿方の年齢にそこまで拘りは無いのですが、家臣の娘に過分な程、そこまで気を使ってくださるのですか?」
信忠の質問は、「嫁入りするなら歳上と歳下、どっちが良い?」だった。その質問に安芸乃は「どちらでも良い」と答える。しかし、「何故そこまで気を使ってくれるのか?」と、信忠へ質問を返す
安芸乃の質問に信忠は
「うむ。それはじゃな、これから新たな時代になっていくのじゃから、無理矢理夫婦にする等の風習を無くしていこうと松と話し合った結果じゃ。のう、松」
「もう、勘九郎様。こういうのは勘九郎様が決断したと言えば、箔がつくのですから。私の名は出さなくても良いのですよ?」
「いやいや、松。夫婦に関する事なのじゃから、夫婦で決めた事を伝えないと説得力が出ないじゃろう?だから儂は、松と共に決断した事を伝えたのじゃ」
松姫に話を振ると、松姫と共に惚気ながら安芸乃に説明していた
その様子に安芸乃は
(イケメンと美女がイチャイチャするなー!!はっ!いけないわ安芸乃!来年には30歳になるけど、何故かこの世界線の戦国時代の女性は30歳、人によっては40際に突入しても出産してるし
それから考えると、私も出産のチャンスは間違いなく有る!じゃあ、私か拘る条件は、これだな!)
軽くイラついたが、直ぐに気持ちを切り替えて、拘りたい条件を思いつく
「内府様、松姫様。その様な事情があった事を教えていただきまして、ありがとうございます。殿方の年齢に関しまして、あまり拘りはありません
ですが拘りたい事として、嫁ぎ先の殿方か歳上の場合、夫婦になってから30年は生きてくださる事、つまり壮健で長生きする事を頑張ってくださる殿方である事に拘りたく!」
安芸乃の拘る条件とは、「旦那がポックリ早死にしない事」だった。それを聞いた信忠は
「ほう。嫁ぎ先が歳上だった場合は、長生きする事を求めるか。となると、三十郎叔父上に安芸乃が嫁ぐ可能性を考えて、例の件を早く片付けぬといかぬな」
安芸乃の嫁ぎ先候補の1人、信包に嫁がせる場合の問題点を早く片付ける事を決断する。その決断後に信忠は
「うむ。安芸乃、とりあえず父上が戻って来てから本格的に話を決めたいと思う。それまではいつもと同じ様に過ごしてくれ
改めてじゃが藤四郎、周殿の事を最優先に考えて働いてくれ」
「「はい」」
「うむ。それでは戻ってくれ」
「「それでは失礼します」」
2人を部屋に戻した。2人の足音が聞こえなくなると信忠と松姫は
「松、他家の子とはいえ、新たな命が生まれてくる事はとても喜ばしいのう」
「勘九郎様、それは私も同じく。義父上が居ても、きっと喜んでくださるのでしょう」
自分達の事ではないが子供が増える事をとても喜んでいた。そんな信忠の元に
「殿。柴田家にて学んでおります次三郎様からの文が届きました」
家臣が次三郎からの文を届けて来た。文を受け取り信忠は読み出す
「ほう。この十ヶ月、何も音沙汰が無かったのに、どういう風の吹き回しじゃ?どれ。「父上へ、柴田家の巨大な寺子屋にて色々と学んでおります次三郎です
凡そ十ヶ月、大叔父上達に戦、茶の湯、町割を教えられ、柴田家の家老である佐藤利兵衛殿、山県源四郎殿に理財を教えてもらいながら、過ごしております
そんな中で、羽柴殿の長女である吉姫殿と共に過ごすと、胸が熱くなります。これは拙者が幼い頃に父上が母上に対して抱いていると教えてくれた「想い」なのでしょうか?
まだまだ未熟な拙者が、この様な気持ちを持っていては、三法師を支えられる兄になる日が遅くなってしまうのでは?と、不安になる時もあります
父上、この様な場合、拙者はどうしたら良いでしょうか?」との事じゃ。まったく次三郎め、想い人が出来たか!元服したとはいえ、まだ子供だと思っていたが
もう、そんな歳頃が。親として、何とも嬉しいかぎりじゃ!松よ、次三郎に何かしらの助言をしてやりたいのじゃが、どんな言葉をかけたら良いかのう?」
読み終えた信忠は、次三郎の思春期感溢れる内容に、成長を実感しながらも、何かしらのアドバイスをしたいと考えて、松姫に質問した
信忠の質問に松姫は
「勘九郎様。この様な場合、勘九郎様が美濃屋で私に直接伝えてくださいました様に、次三郎殿にも直接伝えた方が良い結果を出すと思います」
「次三郎に直接伝えた方が早いと思うよ」だった。それを聞いた信忠は
「そうじゃな。文ではなく、直接伝えた方が良いな!五郎左、権六に「子供達がどれだけ鍛えられでおるか見に行く」と文を書いておいてくれ!」
「ははっ!殿、内容を精査しないといけないので一日お待ちいただきたく!」
「む。そうか、分かった」
柴田家に行く事を決断した。こうして、秀吉と信忠が直接会う可能性が高まって来たが、長秀は何か思う所がある様で、一日待ってくれと信忠を止めた。




