どこから見ても親バカな父親
この作品はフィクションです。史実と違いますので、その点、ご理解ご了承ください。そして、主人公は出ないです。ほぼ勝家回です。
元亀元年(1570年)6月20日
近江国
「浅井も朝倉も壊滅寸前じゃ。攻め立てよ!」
「「「おおお!!!」」」
織田信長の号令の元、織田軍は浅井朝倉連合軍に対して攻勢を強めた。その結果、浅井朝倉は両軍共に決戦の地である姉川から敗走していった
「深追いせずに兵を休めよ」
信長の命令を聞いた各武将達はそれぞれ兵を休めた。その内の勝家の陣では、こんな会話がされていた
「殿。此度の戦も我々が先陣を任されましたな」
「うむ。我々は織田家において常に先陣を切る事を任せられる事と戦果を挙げる事を目標にしておるからな。しかし、此度の戦では徳川様の軍勢が居なければ負けていたかもしれぬ。そう考えると我々もまだまだ未熟じゃ。更に強くなり織田家の天下を支える家にならねばな」
「ですな。ところで殿。若様は今年で五歳に成りましたが、何でも以前猪退治を行ったら、大殿にお褒めいただいたとか?」
「うむ。儂も殿と一緒にその場に居たが、誠に見事な大きさの猪を退治して、村人からも慕われていた様子が見えたからのう。それにな吉六郎が••••」
「殿。やはり若様の事を話す時は大層嬉しそうな顔をなさいますな。八年前までは家臣の殆どが声をかけるのも恐れる程の御顔をしておりましたのに」
「こ、これ。又左達と同じ事を言うな。儂が人では無い何かみたいではないか」
「実際、その頃から殿は「鬼柴田」と呼ばれ始めていたではありませぬか。やはり、御方様を娶った時から殿は強さだけではなく、優しさも持つ武将に変わりました」
「そう言われると気恥ずかしいな」
「若様がお産まれになってからは、更に優しくなりましたが、その優しい一面を若様に見せても良いのでは?」
「気持ちは分からないでもないが、今は乱世だからこそ、吉六郎には強くなって欲しい。優しさだけでは乱世は生きていけぬ。だからこそ厳しいと言われても吉六郎を鍛えているのじゃ」
「殿、やはり嬉しそうな顔をしておりますな。だからこそ我々も戦に勝って殿を若様の元に無事にお帰りいただける様に粉骨砕身働きまする」
「うむ。其方達の働きあってこそ、儂は織田家において重臣と呼ばれる立場におる。誠に感謝しておる」
「有り難きお言葉にございます。しかし、未だ戦は終わっておりませぬ。油断はなされぬ様」
「殿!大殿がお呼びでございます」
別の家臣に呼ばれた勝家は信長の本陣へ向かう準備をした。その際
「殿。雨が降りそうですので、蓑を着て行って下さいませ」
「うむ。では行ってまいる」
そう言って勝家は本陣に向かって行った。その道中
「吉六郎が見た風景のとおりになって来たが、まさか?なあ?」
疑問を呟いていた