相馬義胤の決断は如何に
天正二十三年(1595年)一月十五日
陸奥国 磐城 相馬家屋敷
「それで、お主達は伊達殿と、その柴田とやらに良い様に叩きのめされて来たわけか!」
「「「「面目次第もありませぬ!」」」」
場所は伊達家屋敷から、相馬家屋敷に変わる。政宗に言われて、事の次第を義胤に家臣達が伝えている場面から始まる。ここでは義胤が、家臣達を叱責している最中からスタートする
「あの南蛮の女子を連れて来いと、儂は命令したのじゃぞ!それを捕まえるどころか、奪われ、挙句には一戦を交える事も無く、領地に戻って来たとは、何とも情けない!」
義胤は、家臣達に対して怒り心頭だった。そんな義胤に1人の家臣か
「お、恐れながら殿!立ち塞がりました播州柴田家の武将達は、我々の倍以上の軍勢で向かって来て、更には、体格も我々が牛蒡の様な体格に見える程、屈強な者達だらけだったのです!」
「柴田家の武士達は、数も体格もとんでもない奴らだらけだったから、戦うなんて無理だ!」と、遠回しに義胤に伝える。それに続く様に
「そ、そうです。殿は見ておりませぬから、信じられないかもしれませぬが、片腕で木幡殿の首を掴んだと思ったら、一気に持ち上げたのです!
それこそ、御伽話に出てくる人を軽々と持ち上げる鬼の様でした!持ち上げられた木幡殿は、何も抵抗出来なかったのです!」
「しかも、全員の甲冑が赤く染まっておりました!あれはきっと、我々など足下にも及ばない程、戦慣れしている軍勢に違いありませぬ!」
他の家臣達も「自分達では無理だ!」と伝える。それを聞いた義胤は
「ええい!忌々しい!大体、この磐城どころか陸奥国全土でも伊達家が偉そうな顔を何故しておる!そもそも、伊達家は要衝の地とは言え、
山に近い会津が本拠地なのに、何故に我が相馬家よりも、石高と税収が多い!相馬家は小さいとは言え、湊があるから他国と交易をしておるのじゃぞ!それなのに、何故伊達家に負けておる!」
本来の目的のロシア美女を捕まえる事よりも、伊達家に色々な事で負けている事に腹を立て始めていた。そんな時に最悪のタイミングで
「殿!木幡殿が、伊達家から戻って参りました!」
伊達家に捕まっていた木幡が義胤の前に到着した。殺菌である木幡の到着に義胤は
「おお!木幡よ、よくぞ戻って来た!戻って来たと言う事は、伊達家は南蛮の女子をお主と共に帰したのじゃな?」
機嫌良く木幡に質問するが、木幡は
「殿!お話したい儀がございます!」
神妙な顔で義胤に話を振る。木幡の様子に義胤も
「何じゃ?申してみよ!」
真剣な顔で聞く態度になる。義胤が聞く態度になった事を確認した木幡は
「殿!伊達家に臣従してくだされ!今ならば、まだ間に合います!この機を逃しては領地が、いえ、磐城全体が灰塵に帰してしまいまする!なので、どうか!」
平伏しながら、義胤に伊達家に臣従する事を求めた。それを聞いた義胤は
「木幡!無事に戻って来たと思ったら、伊達家に何を吹き込まれたのじゃ!?」
木幡の出陣前とは明らかに違う様子に、動揺していたが、木幡は
「殿、拙者が説明するよりも、こちらの文を読んだ方が早いでしょう。お読みくだされ」
そう言いながら、義胤へ文を渡す。文を受け取った義胤は
「とりあえず読ませてもらおう」
そう言って文を開く
「どれ。「この文を木幡某から受け取ったであろう、相馬孫次郎よ、この文を書いた儂の名は織田従二位右大臣三郎と申す
此度、お主達の家臣か織田家家臣となった伊達家の領地に無許可で入り、助けを求めて来た家族を保護した儂の家臣に対し、
「返さなくば、一線交えてでも取り返す!」と、織田家に対して戦を仕掛けたも同然の言葉を吐いた事、誠に許し難い!
じゃが、織田家家臣でもある伊達家当主である伊達藤次郎より、「相馬孫次郎殿は、拙者の親類なので、出来れば穏便に済ませたい!」と懇願されたので、
最初は伊達藤次郎に任せる事を判断した。じゃが、お主達相馬家が、伊達家に対し臣従する気配が無いと判明した場合、伊達家は勿論、織田家も相馬家を攻める
その際、この陸奥国でも多少は名前が知られておるじゃろう「柴田の鬼若子」が、相馬家の領地どころか磐城全体に攻め込むぞ!
更に申すならば、お主達の南に位置する田村家は、伊達藤次郎の正室の実家であり、此度、儂から伊達家へ臣従するか否かを確認する文を届けたら
快く臣従する事を了承してくれた!ここ迄言えば分かると思うが、織田家は家臣である伊達家と伊達家に臣従した田村家と共に、相馬家に攻め込む!
この事で、相馬孫次郎!お主本人が伊達家屋敷に来る事を求める!そして臣従か否かを、その場で決めてもらおうではないか!
儂は伊達藤次郎こそ陸奥国統一が出来ると判断した!だからこそ、藤次郎には陸奥国統一の障害になる者はたとえ親類であっても討ち滅ぼす覚悟を求め、藤次郎もその覚悟を決めた!
改めてじゃが相馬孫次郎よ!この文を偽物と思うかどうかは、お主の勝手じゃが、文を持たせた木幡の様子を見た上で、良く考えよ!睦月のうちに伊達家屋敷に来て、考えを聞かせよ」とあるが、木幡よ、これがお主の言っておった内容なのか?」
文を読み終えた義胤は、木幡に質問する。木幡は
「殿、拙者も伊達家にて人質になっている者達も右府様にお会いしました。あの威圧感や覇気を持っておられる人物は、
この陸奥国は当然として、関東にも居られませぬ!!中央の戦や政を経験した者にしか出せない物でした!
なので、間違いなく本物の織田右府様だと断定出来ます!それだけではありませぬ!その右府様に近い立場の柴田播磨守という武将は、右府様が伊達殿を叱責されている時も
涼しい顔をしておりました!あの様な肝が太い行動を取れるのは、間違いなく修羅場を潜っている証に他なりませぬ!なので殿、磐城を戦場にしない為、
相馬家を存続させる為にも、ここは伊達家に臣従してくだされ!この通りにございます!」
信長が本人である事、六三郎が歴戦の武将である事を説明しながら、義胤へ臣従してくれと平伏して頼み込む
木幡のその様子に義胤は
「今日一日、考えさせてくれ」
そう言って、大広間を出て行った。自らの欲望を優先した結果、相馬家存続の危機に陥ってしまった義胤は、どう決断するのか?




