三方ヶ原の戦い④〜猛将と知将と家臣達は奮闘する〜
「いいか平八郎!この武器はこの出ている紐に火をつけてから程なくして中の火薬が爆発する。儂達が機を見て投げるから、お主達は武田を何とか抑えていてくれ!」
「待て小平太!儂達も近くから投げる!それならば確実に武田に被害が出るだろう?」
「そ、それはそうじゃが。お主達が巻き込まれてしまうぞ?」
「覚悟の上じゃ!」
「ええい!分かった!お主達に半分の十三本渡す!上手く使え」
「済まぬな!」
こうして本多隊に簡易パイプ爆弾13本が渡った。それを忠勝は家臣の数名に託した
「良いか!これに火をつけて武田が密集しているところに投げよ!儂達が武田を抑えておく」
「し、しかし。それでは殿や皆に当たる可能性が」
「そう簡単には当たらぬ!自信を持って投げよ!」
「ははっ!」
忠勝から託された家臣達は、乱戦の中から岩陰に移動してそれぞれ身を隠した。そこで火打石を使い火をつけようとするが、簡単に着火しない。そこで1人が篝火から火種を取って来たが、投げようにも味方が押されているから、狙いをつけられない。その結果、火をつけられず味方が次々と討ち取られていく
「ま、まずい!このままでは」
忠勝の家臣達が狼狽えている中、康政は
「平八郎の家臣は動けぬか!ならば、儂らがやるしかないか。皆、気張れよ!」
「「「ははっ!!!」」」
康政が言うやいなや、家臣達はそれぞれの場所に動いた
「殿。先ずは某が参ります」
そう言った家臣は片手に火種を持ちながら武田に近づいて火をつけて即座に投げて、即撤退した
武田も気づいてない訳ではないが、敵兵の1人が意味不明な行動を取っている様にしか見えなかったので放置していた。しかし、その放置がいけなかった
投げ入れて落下すると「カン!」と誰かの兜に当たった音が鳴る。そして、着地すると同時に
ドン!!
と、爆発音が鳴り響く。爆心地付近に居た武田の足軽達の中には即死した者も居た
「ひいい!!」
「な、何が起きた?」
「いきなり大きい音が鳴ったと思ったら地面に穴が空いたぞ?」
武田の足軽達がパニックに陥ったのを見た忠勝と康政は
「「今が好機じゃ!!臆するな!!」」
それぞれの家臣に同じタイミングで同じ言葉をかけていた
それぞれの家臣達は主君に言われて緊張がとけたのかヤケクソになったのか、全員が火種を持ちながら武田に走り出し、着火から投げ入れて撤退を武器の数だけ繰り返した
その結果
「ぎゃああ!」
「や、焼ける!」
「と、隣のやつが黒焦げに!」
更にパニックに陥った。しかし
「くそ!もう例の武器が無い!武田に痛手は負わせたが少しだけじゃ」
武田の陣形に穴を空ける事は出来たが、人数の差があり過ぎる為、その穴も直ぐに埋まった。何度穴を空けても即座に埋まる。
それを本陣で聞いていた家康は
「もはやこれまで!撤退じゃ!」
撤退する事を決めた




