表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

73/657

風林火山の旗と覚悟

元亀三年(1572年)十二月二十日

遠江国 某所


山県は信玄に交渉の報告の為、寝所を訪れていた


「お館様。山県にございます」


「うむ。徳川はどう、いや。その顔を見れば分かる。戦に決した様じゃな」


「申し訳ありませぬ」


「お主の責任ではない。しかし、徳川と戦するは良いが、徳川の兵数はどれ程の数か。山県よ、お主の見立てではどれ程じゃ?」


「拙者の見立てでは、徳川と援軍に来た織田を合わせても一万二千から三千程かと」


「ふむ。我々の半分以下か。そして馬場達の見立てとほぼ同じ。普通に戦えば我が方の勝ちは間違いないであろう。しかし、織田のうつけを倒して上洛する為には兵は一人でも多く残したい」


ここからしばらく信玄は策を考え始めた。そして日も落ちかけた頃、


「うむ。策は決まった!武藤!」


信玄は見張りに立たせていた武藤を呼びつけて


「馬場を始めとした大将達を呼んでまいれ」


「ははっ」


命令を下して大将達を集めさせた。そして全員集まったのを確認すると


「皆、揃ったようじゃな。先ずは徳川の件じゃか、奴らは降らずに我々と戦う事に決まった」


「何と」


「命知らずな」


「自ら死を選ぶとは愚かな」


大将達がざわめいていたが、信玄が手を上げると静かになった


「皆の気持ちも分からんでもないが、一先ず、戦に集中せよ」


「「「ははっっっ」」」


「うむ。では、徳川と援軍の織田を倒す、いや殲滅させる策じゃが、武藤!地図を持ってまいれ」


信玄に言われた武藤は直ぐに地図を持って来て、信玄の前に広げた。そして信玄は大将達に説明を始めた


「良いか!我々が今居る場所は此処じゃ!此処から奴らの居城の浜松城までは半刻もあれば着く。が、此度は城攻めは行わぬ!奴らを叩きのめすには野戦じゃ!だからあえて、城の前を素通りする!そうなれば奴らはどの様な行動を取ると思う?四郎!お主が徳川の立場ならどうする?」


突然指名された勝頼は少し考えた後、


「拙者ならば距離を開けて後ろから攻撃します。例え卑怯者と罵られても勝利しなければならないのですから」


「そうじゃ。それが是が非でも勝たねばならぬ者が追い込まれる心の隙じゃ。しかも、倒さねばならぬ軍勢の数が自身の率いる軍勢と大差ない!と思えば思う程、目の前の敵に飛びつくものじゃ」


「お館様。もしや」


「うむ。我々の軍勢は三万。それを半分に分けて一軍と二軍とし、一軍だけで浜松城の前を素通りする。それに釣られた徳川と織田を挟む様に二軍を出陣させる」


「お館様!その策は二軍の出陣が遅れた場合、一軍が危険なのでは?」


「確かにそうじゃな。しかし、それは何も無い道を進んだ場合の話。一軍が徳川達を釣り出し誘い込む場所はここじゃ!」


そう言って信玄が指差した地名は


「三方ヶ原。でございますか」


「うむ。物見に調べさせたが、此処はまともな道が一つしかなく、周囲を山の様に囲まれておる。一軍は此処まで徳川達を連れて来たら魚鱗の陣を組み、徳川達と戦う。一軍と戦っている時に、二軍からの攻撃を受けた徳川達はまともに戦えぬ!という策じゃ!出陣は明後日とし、今日と明日は体を休めよ!」


「「「ははっっっ」」」


「では、孫六以外は戻って良い」


そう言われて信廉以外は出ていった。残された信廉は


「お館様。拙者は」


「孫六。この場には儂とお主しかし居らぬ。兄と弟として話そうではないか」


「ははっ。では兄上。何故、拙者を残したのですか?」


「うむ。此度の戦、状況次第では儂の生涯最期の戦となるやもしれぬ。もしかしたら戦の最中に気を失い、そのまま逝くかもしれぬ」


「兄上!その様な事は」


「孫六。お主の気持ちは分かるが、そうなってしまった時の為の策をお主に授ける為に残したのじゃ」


「あ、兄上」


「泣くでない。これより先は武田の当主としての万が一の場合の策じゃ!良く聞け!」


「ははっ」


「戦の最中に儂に何か起きた時、お主が儂の名代として采を振え。まず徳川が敗走していたなら四郎達に追撃させよ!恐らく浜松城に逃げるであろう。そこで五日程、攻撃をせずに城を囲ませて、五日目の夜の内に徳川に見つからぬ様、撤退せよ。良いな」


「ははっ!」


「さて、徳川の若造共に恐怖を馳走してやるか」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ