一方的な戦になった結果と恥ずべき愚行
風磨衆の働きで、松田の軍勢を偽物の丘に移動させた事が助五郎に伝えられ、その助五郎の家臣から六三郎へ伝えられると
「諸将へ準備してくれと伝えてくだされ!そして、地震も起きるから、突撃は揺れが収まってからにしてくれとも!お願いします!」
六三郎は助五郎の家臣に、その様に伝える。その家臣は素早く六三郎の元を離れて、諸将へ報告する
報告を受けた諸将は
「遂に始まるか!」
「柴田の鬼若子の鬼手、見せてもらおう!」
「あれ程の大規模な策じゃ!楽しみで仕方ない」
興奮しつつも、六三郎の策を早く見たい気持ちを抑えていた。そして、
「始めるぞ。源三郎、源二郎、左衛門尉、彦兵衛!!お主達四人の火矢が、戦の幕開けの狼煙になる!しっかりと狙え!」
「「「「ははっ!」」」」
六三郎は真田兄弟、楠木正勝、松永久勝の矢を放つ大役の4人に檄を飛ばす。六三郎の言葉を聞いた4人は
「「「「それでは、参ります!」」」」
そう言うやいなや、火矢を放つ。その4本の火矢は、綺麗な放物線を描きながら飛ぶ2本の矢と、直線で飛ぶ2本の矢に別れて、松田の軍勢の居る、偽物の丘へ向かっている
そして、遂に
ドス!ドス!ドス!ドス!
時間差で縄に火を付ける矢、丘の土台部分に刺さる矢、松田の本陣に落ちる矢が2本とバラけながら命中する。本陣に落ちた火矢を見て松田達は
「敵襲じゃあ!」
「無闇に動くな!」
慌てふためいていた。そんな中で松田が
「落ち着け!矢の方向へ軍勢を」
軍勢を動かそうとした、その時だった
ドーン!ドーン!ドーン!
断続的に、爆発音が鳴る。その数秒後
ゴゴゴゴゴゴ!と土台部分が揺れ出すと、
「な、何事、う、うわああ」
「じ、地震じゃあ!」
「つ、土が!」
「ぎゃああ!」
松田も、家臣達も一気に土砂に飲み込まれる。その揺れは、忍城まで残り一里の距離まで来ていた家康達にも伝わり、
「忍城で動きがあった様ですな!急ぎましょう!」
源三が先導のスピードを早める。そして、源三達が到着すると、ほぼ同時に揺れも収まる。その揺れが終わると
「かかれえええ!」
六三郎の号令が響き渡る。その号令から数秒後
「「「「「おおおお!」」」」」
各家の足軽達が、土砂崩れから動き出した松田の軍勢へ向かって、走り出す。足軽だけでも2万以上の数になるので、そこから一方的な展開だった
土砂から出た者は、足軽達の最初の標的になり、その様子を見ていた者は、土砂の中で息を潜めていたが、足軽達の槍で土砂の上から串刺しにされる
偽物の丘の土台部分が、どんどん血に染まっていく光景に信雄は
「儂にも武功を寄越せええ!」
そう叫びながら、足軽達の元へ走り出す。そこで信雄は
「この者の頸は、儂の物じゃあ!」
目を血走らせて、足軽達が取ろうとした松田の家臣の頸を奪おうとしていた。その信雄の愚行に
「やめんか三介!!」
後ろから追いかけていた信包が止めようとする。信雄は信包の声を無視して、
「寄越せ!儂の武功にするのじゃあ!」
足軽達の武功を奪おうとする。信雄の醜態を見て信包は
「三介を縛りあげよ!この様な恥晒しの愚行を止める!急げ!!」
「「「「「ははっ!」」」」」
「御免!」
「御免!」
「御免!」
「御免!」
「御免!」
家臣に信雄を縛る様、命令した。家臣達も暴れている信雄と、土砂から出てくる敵に気をつけながら、
何とか信雄を縛りあげた。そんなやり取りを、諸将も当然、見ていた。だからなのだろう。土砂から出て来た松田を見逃してしまった
そんな松田の動きを見逃なかった者が1人居た。その者とは
「父上!父上の頸で拙者が此度の愚行と無関係であると証明したく!なのでその頸、取らせていただく!」
松田の嫡男の新六郎だった。その新六郎に対して
「新六郎!貴様、父を裏切るのか!?」
松田は激昂したが、新六郎は
「裏切ったのは父上ではありませぬか!拙者を、家臣を、領民を、何より北条家を!父上の愚行のせいで、成が離縁される事もありえるのですぞ!
ならば!拙者は、それを止める為に父上の頸を北条家に出して、成が離縁されない様に動きまする!覚悟召されよ!」
妹の成姫の離縁を止めると、松田に伝える!それを聞いた松田は
「たわけ!お主の領地を守る為の謀反だったのじゃ!それなのに、父に刃を向けるとは!この親不孝者め!」
逆ギレの様な言葉を新六郎にぶつけた。その言葉を聞いた新六郎は
「最早、何を言っても無駄ですな。ここから逃げたくば、拙者を殺して逃げなされ」
そう言いながら、槍を構える。新六郎の本気を感じた松田も
「父の言う事を聞かぬ親不孝者め!先に地獄で待っておれ!」
言葉を返しながら、槍を構えながら、
「「参る!」」
お互いに槍を構えて、少しずつ距離を詰め、
「「そりゃあ!」」
槍を相手に向けた。そして
「見事、じゃ」
松田の肩に、新六郎の槍が刺さる。その状態で松田は
「新六郎、成の事を、考えて、ない、と、儂に、言ったが、それは、違うぞ。儂は新、五郎が、北条、家の家督、を、継げる、様、動い、た、の。じゃ
今、と、なっ、ては、唯の、愚行で、あった。言いたい事、は、もう、無い。儂の頸を、早う、取れ。父の、最期の、願い、じゃ」
新六郎に己の気持ちを全てぶつけ、頸を取れと要求する。最期の願いと聞いた新六郎は
「分かり、ました。父上、拙者もいつか地獄へ行きます。その時は、酒でも呑みましょう!それでは御免!」
松田に最期の言葉を伝えて、頸を切った。そして
「松田左衛門佐の頸、松田新六郎が取った!!」
松田の頸を取った事を高らかに宣言する。新六郎の言葉に松田の家臣達は、
「終わった」
「殿が」
そう言いながら武器を捨てて、抵抗の意志が無い事を示す。こうして、北条家の謀反は鎮圧された。その事で六三郎は
「終わったか。それじゃあ、大殿に報告して帰る準備をしよう」
「「「「「ははっ!」」」」」
赤備えの面々に、そう伝える。しかし、信雄の愚行が自分達の反対側で行なわれていたので、これから精神的に辛い残業がある事を、この時点では知らないままである。




