土木作業を進めていたら
信長が蘭丸と、六三郎の仕事量増加計画を話している頃、六三郎は
「さて、各々方!もう一つの小高い丘を作り出して、間もなく完成となります!我々の目的としては、松田の軍勢を、此方に導く事です!
その為に、百姓の皆にも一時的に田畑を潰す事を許してもらいました!そして、その偽物の丘に大量の硝石を埋め込み、火をつけて連鎖的に爆破させて行きます!
これが、松田を一網打尽にする為の策です。松田の到着前に、火付用の紐に油を撒いておきましょう」
一緒に土木作業をしていた諸将へ、今回の土木作業の意味と、これから実行する内容を説明していた
そして、その日の夕方
「完成しましたぞ!」
「遂に!」
「いやあ、最初はどうなるかと思ったが」
「あまりに規模が大きすぎて、形も見えなかったですぞ!」
とうとう、偽物の丘を作り終えた。丘の内部には大量の硝石が油紙に包まれた状態で設置されている
この事を六三郎は勿論、諸将、そして足軽に至るまで全員か知っており、六三郎はこれから信長へ伝えるところだった
今日で土木作業も終わった事、偽物の丘に大量の硝石がある事を信長へ伝えに大広間へ行った六三郎だったが
「大殿!本日で、目的の物を作り終えました!」
六三郎の言葉に信長は
「六三郎、済まぬ!少し、いや、かなり面倒くさい事になりそうじゃ」
いきなり謝ってきた。当然、六三郎は疑問に思うので
「何か、良からぬ事が起きたのですか?」
信長に質問する。六三郎の質問に対して、信長は
「二郎三郎から文が届いたのじゃが、松田の本拠地を攻撃したが、反応が無かったので忍城へ向かっておると書いてあった」
家康達か、忍城へ向かっている事を六三郎へ伝える。それを聞いた六三郎は
「徳川様達は、松田の軍勢に追いついていないのですか?」
家康達が松田の軍勢に追いついているのかと聞くが、信長は
「恐らく、まだ追いついていないじゃろう!なので、六三郎よ!松田の軍勢が先に到着する事は間違いない!
その中で、万が一にも二郎三郎達の軍勢が同じ頃合いで到着したら、お主の策に巻き込まれる可能性が高い!勿論、この事は文で伝えておる!
しかしじゃ、具体的に忍城まで残り何里の位置に居るか分からぬ!手の者を動かしておるが、まだ情報を掴めぬ!
六三郎よ、ここ迄言えば分かると思うが、松田達が到着したら即座に爆破せよ!北条家と徳川家の面々は、出来るかぎり巻き込むな!」
家康達の現在地も分からないだけでなく、六三郎に作戦の一部変更を伝える。その要求を聞いた六三郎は
「お、大殿!仰る内容は理解出来ますが、万が一にも織田家の面々が先陣を切って来た場合は如何なさるのですか?確か、織田家の軍勢には三十郎様と三介様が」
織田家が先陣を切っていた場合、信包と信雄が居るけど、どうするのかと質問する。信長の答えは
「最悪の場合、三介は死んでも構わぬ!」
最悪の場合、信雄は死んでも良い!だった。しかし、
「最悪の場合は。じゃからな、これを忘れるな!最悪の場合が起きたのであれば、救出する優先順位は三十郎が先じゃ!
六三郎、お主に多くの役目を任せてしまい、申し訳ないが、よく見極めてから、戦に励んでくれ!」
信長は「最悪の場合」を強調していたが、それでも信雄よりも、信包の方が優先順位は高かった。それを聞いて六三郎は
「分かりました。最悪の場合が起きない様に、動きたいと思います」
信長にそう伝えて、大広間を出て行った
その足で赤備えの元へ行き、信長との会話内容を伝えると
「殿!右府様の言う通り、あの者は見殺しにすべきかと!」
「源次郎の言う通りです!高代様を手篭めにしようとした、愚か者ですぞ!」
「源次郎と銀次郎の言う通りです!」
源次郎、銀次郎、新左衛門の3人が「信雄は捨てよう!」と強く言ってくる。その3人に対して源太郎は
「三人共、右府様はあくまで「最悪の場合」と仰っておる。そうならない為に、殿は悩んでおるのじゃから、その様な事を言うでない!」
落ち着かせる為に、諫めた。しかし、
「ならば、源太郎殿はそのままで良いのか!?」
この質問に源太郎は
「儂も本音は、あの者を見殺し、いや、自らの手で殺したい!だがな、それをやってしまっては、殿や大殿が、これまで築き上げて来た信頼が無くなってしまう!
儂達、赤備えは今や柴田家の先陣を超えて、織田家の先陣と見られておるのじゃ!その我々が、殿の為にならない事をしてはならぬ!それを分かってくれ!」
本音を話しながらも、皆へ「六三郎の為にならない事は抑えてくれ!」と諭す
その言葉に、殆どの赤備えが静かになる。しかし、最年長の昌幸が
「まあまあ、殿が無策のまま進むなど、これまで無かったのじゃ!きっと、殿も何かしらの策のきっかけを得たくて、此処に来たはず。殿、そうではありませぬか?」
空気を変える為に、六三郎へ話を振る。振られた六三郎は
「流石、喜兵衛じゃな!戦経験が豊富なだけある。喜兵衛も言っておったが、儂としては、どうにか松田の軍勢だけを叩きたい!
その為に、偽物の丘に松田の軍勢を引き寄せる為の出陣も覚悟しておいてくれ!」
もしかしたら、出陣が前倒しになるかもしれない事を伝える。その言葉に赤備え達は
「殿!その様な事、お気になさらないでくだされ!」
「そうですぞ!我々は殿と共に出陣する事は当たり前の事です!」
「何なら、その出陣で松田の軍勢を殲滅しましょう!」
「そうじゃ!細かい事など考えず、松田の軍勢を叩けば良い!」
六三郎を励ますかの様な言葉を使う。その言葉に六三郎は
「皆。忝い!少しばかり、気持ちが軽くなった、今日はこのまま休んで、明日から色々とやっていく」
そう言って、赤備え達の元を出ていった。こうして、六三郎は不安が完全に消えたわけではないが、気持ちが楽になってから、部屋で休む事にした。




