プチパニックになってもやるべき事とは
六三郎はプチパニックから立ち直ると、長親に対して、
「十兵衛殿!二十年前や三十年前、いや、それより昔の戦の話を、他の方からも聞きたい!誰か、話せる方は居ますか?」
昔の忍城攻めの話を聞きたいと頼む。六三郎の希望に長親は
「それでしたら、拙者の父上が知っているかと。父上に聞いてみましょう」
「忝い!」
父の泰季に聞いてみると答えて、六三郎もそれを了承する。そして、忍城に戻ると
「父上!失礼しますぞ!」
長親は挨拶も早々に、泰季の部屋へ六三郎達を連れていく。いきなり部屋に入って来た長親に泰季は
「これ!部屋に入るのであれば、儂の了承を得てからであろう!」
長親を叱責したが、長親は
「父上、叱責は後程。此度は父上に昔の戦の話を聞きたいと、柴田播磨守殿が仰っているので、連れて参りました」
「文句なら、六三郎に言ってくれ」とばかりに、六三郎を紹介した。六三郎の姿を見て泰季は
「柴田様が拙者の昔の話を。どれ程、お役に立てるかは分かりませぬが、この老いぼれ、成田十三郎の昔話で良ければ、お話しましょう。それで、どの様なお話を?」
六三郎に話をする事を了承する。その泰季に六三郎は
「十三郎殿。それでは、前置き無しにお聞きしますが。この忍城が攻められた戦では、どの様な形で攻められましたか?」
すぐに本題に入る。六三郎の質問に泰季は
「そうですなあ。拙者の父の頃も、兄の頃も、忍城を多くの兵で囲んでおりましたな。忍城方が攻撃する場合、囲んでいる者達が疲弊した所を、
城から出陣して、突撃し、そして城に帰る。これを繰り返して、囲んでおる者達が兵糧が切れて撤退する事を狙っておりました。此度の松田討伐の軍勢のひとつである、
上杉家の先代で、軍神とも呼ばれておりました不識庵謙信にも、その方法は通じました
まあ、周囲が沼や田畑が多い上に、周囲の川から水が絶えず流れている事も、忍城を攻めてにくくしている要因と思いますが」
昔の忍城攻めの話を六三郎に細かく伝えると、六三郎は
(やっぱり、川の水が絶えず流れているのか!水の流れをコントロール出来たら、絶対水攻めが出来るじゃないか!あとは、上杉謙信が本陣を構えた場所とかを聞かないと!)
「十三郎殿。貴重なお話、誠に忝うございます。最期にひとつ、お聞きしたいのですが。不識庵謙信は、何処に本陣を構えておりましたか?」
上杉謙信が本陣を構えた場所を泰季に質問する。泰季の答えは
「不識庵謙信の本陣ですか。この忍城の大手門を見下ろせる、山にしては低く、丘にしては高い場所でしたな。何でも、昔の貴人の墓と言われている場所ですな」
早い時間に六三郎達が居た場所の事だった。全てを聞いた六三郎は
「十三郎殿!貴重なお話を聞かせていただき、誠にありがとうございます!十兵衛殿、なんとなくですが、松田討伐の第一歩が見えて来ましたぞ!」
「柴田殿!誠にござるか!一体、どの様な策が?」
長親に何かしら思いついた事を伝えて、長親も期待していた。しかし
「それは、右府様と諸将の前でお話させていただきます。それまでの楽しみという事で」
信長達が居る場所で話すとだけ伝える。それを聞いた長親は
「分かりました。楽しみに待ちましょう」
そう言って、納得した。そして、そこから大広間へ行き、主だった面々を集めた六三郎は
「大殿!そして、各々方!此度の松田討伐において、松田の軍勢を一網打尽にする為の提案をさせていただきます!」
「うむ!聞かせてみよ!」
大広間に集まった面々に、今回の作戦を発表する。その内容とは
「ははっ!先ずは松田が忍城を見下ろせる場所に行かせますが、松田の軍勢が到着する前に、その場所に大量の硝石を埋め込み、
松田が到着して本陣を構えて、安心した時に火矢を放ち、火をつけ爆破させます。その爆破で松田の軍勢が全滅する事はありませぬ
ですが、生き残った者達は、忍城を見下ろせる安全な位置から、土砂に埋もれたり、平地に引きずりおろされたり等の、無防備状態になる流れにございます」
例の丘に、松田が本陣を構えて安心した所を下から爆破で攻撃する。という内容だった。それを聞いた信長は
「ほう。あくまで、柴田家だけで武功を独占せずに、全家に武功を挙げる機会を残すか。相変わらず「武功は皆で挙げる物」という考えは昔から変わっておらぬな
軍議に出ておる諸将よ!六三郎の提案した策で松田を迎え討つと決めたが、それで良いか?他の提案を出してもか構わぬぞ!」
一応、他の作戦も聞いてみたが、諸将は
「柴田殿の策で行きましょう!」
「「柴田の鬼若子」の鬼手、楽しみにございます!」
「松田討伐で武功を挙げる機会、楽しみです!」
「異議なし!」
「六三郎の作戦で行こう」で一致していた。この流れを見て信長は
「決まりじゃな!六三郎、「柴田の鬼若子」の鬼策、楽しみにしておるぞ!」
「ははっ!」
六三郎に全て任せたかの様な言葉を伝えて、六三郎も返事をしたが、内心
(あれ〜?いつもだったら大殿は、「六三郎の策を原案として、いくつか改良する」と言うのに、今回は何も言わなかったぞ。これは、俺が自由にやって良いって事か?
だとしたら、各家の皆さんも巻き込んで、俺の仕事量が少しくらい減る様にしようじゃないか!)
信長が何も言わなかった事に、違和感を覚えながらも、仕事量が減る為に悪知恵を使おうとしていた。




