慶事の報告の後は婚姻要求祭りになる
天正二十一年(1593年)七月二十一日
武蔵国 忍城
「ほう。喜平次よ、茶々との子が授かったと」
「はい。茶々の伯父である右府様にも御報告をしたいと思っておりました」
「うむ。誠にめでたいのう!これから儂の孫よりも歳下の子供が増えていくのは良い事じゃ!
喜平次よ、茶々は側室を持ってもうるさく言わない筈じゃから、側室を設けて、子供を多く持てる様に頑張るのじゃぞ!」
「ははっ!」
皆さんおはようございます。前日の宴会から一夜明けて、忍城生活2日目の朝から、義弟の喜平次殿が大殿へ正室の茶々の懐妊を報告している場に同席しております
柴田六三郎です。いやあ、妹が母親になるのですから、その旦那を出陣させるなんて、改めて申し訳ない気持ちになります。なので、あまり前線に出ない配置にしようと思っております
そんな喜平次殿の慶事の報告の後、まさかの俺、正確には俺の身内に慶事の話が寄せられております
先ず、伊達家当主の政宗くんですが
「柴田殿!此度の戦が終わったら、弟の小次郎の元服の儀の為に、是非とも我々の本拠地の会津に来ていただきたく!そこで拙者の長女の五郎八と、
柴田殿の嫡男の婚姻について話し合いたく!よろしいでしょうか?」
お袋さんに強く言われたのか、俺の息子の甲六郎の嫁に娘を!と猛アピールして来ます。でも、すぐには決められないですし、
次に佐竹家当主の義重さんからは
「柴田殿!儂の孫の嫁に、柴田殿の姫を是非とも!これ、次郎!お主も柴田殿に頭を下げて頼まんか!」
「柴田様。拙者の息子は産まれて間もないですが、先ずは顔を見るだけでも、如何でしょうか?」
嫡男の次郎くんの孫の嫁に、俺の娘を。なんてリクエストされるし、
安房国の里見家の太郎くんからは
「柴田様!拙者、近々里見家の家督を相続します。その場に是非とも参加していただきたく!そして、出来ますれば、柴田様の親族の姫君を正室に迎えたく!」
「親族の姫を嫁にくれ!」とリクエストされまして
更に不死鳥さんからは
「柴田殿!儂の倅達はまだ幼い。なので、柴田殿の娘を許嫁としたい。どうじゃろうか?」
幼い息子の許嫁に俺の娘を。とリクエストされました。この状況は不味い!なので、大殿を使おう!
「大殿!いきなりの話で申し訳ないのですが、実は徳川様の次男の於義伊殿の正室が決まりそうなのです」
「ほう。何処の家の姫君じゃ?」
よっしゃ、食いついた
「はい。最上殿の姫君の竹姫です。この件は、最上殿も知っております。最上殿、拙者から徳川様へ話を持って行くよりも、大殿から持って行く方が話の進みも早いと思いますが」
そう説明していたら、大殿から
「これ!六三郎、お主が最上出羽守から頼まれた話ではないか!お主が最期まで責任を持って嫁取りまで進めぬか!」
なんて正論と笑顔で俺の押し付けをシャットアウトしました。チクショー!大殿の悪ノリがこんな所で出なくても良いじゃないか!しかも、最上殿まで
「柴田殿。確かに右府様が話に入るのであれば、滞りなく進むと思うが、やはり娘達は柴田殿の方が知っているのですし、
於義伊殿も幼い頃から柴田殿が知っているのですから、柴田殿が進めてくだされ。この通り!」
最上殿が頭を下げて頼んで来ました。もう、やるしかないじゃないか!!
「最上殿。そこまでしないでくだされ。しっかりと最期まで成し遂げますから!」
俺の言葉を聞いて、最上殿は
「ありがたい。それではよろしくお頼みしますぞ」
頭を上げて笑顔になった。チクショー!やっぱり人生経験の差は、簡単には埋められねーな!手のひらで転がされてる気分だよ!
しょうがない、気分転換も兼ねて赤備えの皆の所に行こう。戦略的撤退だ
「大殿。赤備えの元へ行くので、失礼します」
信長への挨拶を終えて、忍城の外で訓練をしている赤備えの元へ向かった六三郎だったが、そこで見た物は
「そうりゃああ!」
「まだまだ!」
「何のこれしき!」
「原様に鍛えていただく好機じゃ!遠慮なく挑め!」
「おおお!」
「我々も負けていられぬぞ!」
先ず、銀次郎が成田家の正木丹波と柴崎和泉の2人を相手に模擬槍で2対Iの訓練を行なっていて、
新左衛門は最上家の足軽200人相手に、かつて勝家にやってもらった100人超えの訓練を行なっていた
その2人に触発された赤備えの面々も、各家の足軽や侍大将相手に訓練を行なっていた。そんな訓練の最中
「私のお相手もお願いできますかな?」
まさかの参加希望者が現れた。その参加者希望者とは
「これ!甲斐!女子同士の長刀とは違うのじゃぞ!」
忍城の城主、成田氏長の娘の甲斐姫だった。それを見た六三郎は
(待て待て待て!某映画でも甲斐姫は、武辺者に描かれていたけど、この世界線でも武辺者なのかよ!
しかも、訓練の相手として希望しているのが新左衛門とかマジか!赤備えの脳筋トップ3じゃないか!これはまずい!絶対に止めないとダメだろ!)
絶対に止めないと判断して、新左衛門の前に出ようとすると
「殿!!そして、成田様!甲斐姫様に怪我は負わせませぬ!なので、安心して見ていてくだされ!」
新左衛門は大丈夫だと、六三郎と氏長に伝える。それを聞いた六三郎は
「分かった。成田殿、拙者の家臣に任せてくだされ」
新左衛門を信じて、氏長にそう伝える。氏長も
「仕方ない。新左衛門殿。じゃじゃ馬娘に、世の中を分からせてくだされ」
諦めた感じで、新左衛門に託した。その結果、
「それでは甲斐姫様。何処からでもかかって来なされ!」
「ありがたい!それでは参ります!そりゃああ!」
新左衛門と甲斐姫の訓練が始まったが、実力の差は歴然で、甲斐姫が突撃する度に新左衛門は
「遅い!」
「無駄な動きじゃ!」
「その様な腕ならば、城の奥で大人しくしていなされ!」
キツい言葉をぶつけながら、模擬槍を叩き落としていた。それが続く事、約1時間。最終的に甲斐姫は
「はあ!はあ!はあ!はあ!」
立つのもやっとな程、疲れ果てていた。そんな甲斐姫に新左衛門は
「甲斐姫様。失礼を働き申し訳ありませぬ。ですが、これが現実です。なので、お父上の成田様を心配させない為にも」
手を差し出して、小言を伝える。しかし、甲斐姫は新左衛門のその手を取って、一気に立ち上がったと思ったら
「ちょ、ちょっと!甲斐姫様?」
新左衛門の首に腕を回して抱きつき、父の氏長に向かって
「父上!甲斐は、新左衛門様の嫁になります!!」
新左衛門に嫁ぐと言い出した。それを聞いた氏長は
「甲斐。いきなり、その様な事、を」
そう言いながら、後ろに倒れ込む。近くに居た六三郎が身体を支えたので、頭を打つ事はなかったが、
六三郎は
(何で何も無く帰る事が出来ないんだよ!チクショー!神様かご先祖様か知らないけど、俺に胃を痛めながら働けってか!!)
内心、神様と先祖に八つ当たりしていた。
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