鉢形城への文を届けて忍城へ到着したら
天正二十一年(1593年)七月十五日
武蔵国 鉢形城
六三郎達が忍城へ向かう事を決断した数日後、助五郎からの文が鉢形城で留守居役を務める幻庵の元へ届けられる
「幻庵様!館林城の助五郎様からの文でございます!」
「ほう。この時期に助五郎殿からの文とは。どれ、見せてみよ」
風魔衆の頭領の小太郎から受け取った幻庵は、文を開いて読み出す
「どれ。「鉢形城の留守居役を務める幻庵翁へ、館林城の助五郎です。文が届いて何事かと思っているでしょうが、前置き無しで伝えますと、我々館林城の軍勢に、柴田殿が「松田に加勢する振り」を求めていた、
出羽国の最上家が軍勢三千を引き連れて、我々に加勢する事になり、現在我々と共に行動しております
その結果、柴田殿の七千を筆頭に武田家、上杉家、最上家、更に拙者の軍勢と、松田の嫡男の軍勢、合わせて二万を超える大軍になりましたが、その大軍を忍城へ向かわせたいと思います
理由として、松田が本拠地で籠った場合、鉢形城の軍勢と徳川様と織田家の軍勢だけで充分だと判断した事と、
もしも万が一にも松田が本拠地を捨てて忍城を奪う選択をした場合、討ち取る事が難しくなってしまうと、柴田殿が提案したので、
松田が忍城を奪う前に、忍城に到着するか、松田を叩く為、動きたいと思います。この文が届いている頃には、忍城への道中に居るので、返事は不要です
松田が本拠地に居ても、忍城周辺に居ても、北条家が松田を討伐した。という事実が必要だと思いますので、源三兄上や新太郎にもこの事を伝えてくだされ」との事じゃが、
柴田殿は、側室が危険な目にあったというのに、主家の無能に武功を挙げる為のお膳立てをするというのは、どれ程優しいのかのう。
まあ、その様な為人だからこそ、上杉家と最上家も、協力したくなるのじゃろうな。誠に不思議な若武者よのう」
幻庵が文を読み終えて、六三郎が三介の為にお膳立てをしたと、微妙に間違った推測を出していると、小太郎から
「幻庵様。源三様と新太郎様へ、この事を伝える為に、すぐに動きますか?」
すぐに動くのかと問われ、幻庵は
「そうじゃな。今からほぼ同じ内容の文を書くとしよう。それと、松田の動きを見張っておけ。助五郎殿の軍勢に近い場所に居た場合は、助五郎殿に伝えよ」
「ははっ!」
「それから、鉢形城側と館林城側、双方に風魔衆を何人か潜入させておけ」
「ははっ!」
こうして、幻庵率いる風魔衆も久々の仕事が出来た。
一方その頃、六三郎達はと言うと
天正二十一年(1593年)七月二十日
武蔵国 某所
「いやはや、何という幸運!お会いしたかった柴田殿に会う事が出来るとは!」
「柴田様!お久しぶりです!伯父上!柴田様に変な事を吹き込んでおりませぬな?」
「柴田殿。あの時の飯の恩を返しに来ましたぞ」
皆さんこんにちは。館林城から忍城を目指している道中で、佐竹家、伊達家、小田家の軍勢に出会って挨拶をされております柴田六三郎です
三家共、何故に俺の行動を知っているのかと思ったら、まさかの最上殿が原因でした。なんでも、俺が新左衛門を最上家に行かせた時に、
その内容を含めた色々な事を書いた文を伊達家に送って、その伊達家の行動から、俺の元へ行く事が判明したので、三家共
「乗るっきゃない!このビッグウェーブに!」的なテンションになった結果、出陣を決意したとの事です
ですが、この事で1番の被害者は俺ではなくて、この人かもしれません
「助五郎様!忍城に戻っても良いのですな?誠に!誠に!」
「成田殿。大変だったのう。儂が三家の面倒を見るから、忍城へ戻るぞ」
忍城の城主である成田新十郎氏長さんです。クセ強な三家の当主の対応をしながら、鉢形城へ引率していた様で、とても顔が疲れておりました
そこに俺達が現れたので、後の事は助五郎殿が請け負うと聞いた時は、肩の荷が降りた様で、とても嬉しそうでした
この三家は、佐竹家が八千、伊達家が三千、小田家が五百の合計一万一千五百の大軍で動いておりまして、
俺達の館林城の軍勢と合わせると、三万超えです。これはまさしく「圧倒的ではないか我が軍は」な状況ですので
あとの事は皆さんに任せて、俺は帰っても良いですか?こんだけの大軍だと、何も出来ない軍勢が出てくると思うのですが、ダメですかねえ?
まあ、そんな事を言えるわけもないですし、赤備えの皆のペースで移動したから、
初体験の最上家は足軽の皆さんがボロボロになっておりますから、最上家の働きはあまり期待出来ないでしょうし、頑張りますか。俺がそう思っていると
「各々方!それでは、忍城へ向かいましょう!」
助五郎殿が忍城へ向かうと宣言したので、後をついていきましょう!俺が楽を出来る状況なんですから!
なんて、この時は甘い考えを持っておりました
何故、こんな話し方かと言いますと、助五郎殿の引率で忍城へ向かっている道中にて
「六三郎!ちゃんと働いておる様じゃな!お主よりも先に安房国の里見家が来たから、色々と話しておったぞ!」
「大殿!安土城に居るのではないのですか?」
まさかの大殿に会いました。いやいや、貴方。その身ひとつで情勢を動かす天下人なのですよ?軽々しく動くのはどうかと思いますが?
とうとう六三郎と信長が出会う。そして、六三郎はこの時
(はあ、戦以外での仕事量が増える事が確定したなあ)
これからの激務を想定していた。




