六三郎が欲を出したら激務が確定する
天正二十一年(1593年)七月三日
上野国 館林城
「さて、捕虜達全員の尋問が終わりました。いやはや、松田の奴、「領地が増える」という虚偽の言葉で、兵達を騙して出陣したとは、何とも非道な事を!許せぬ!」
「父が、申し訳ありませぬ」
皆さんこんにちは。約1ヶ月かけて捕虜となった松田の家臣達の尋問の結果を聞いております柴田六三郎です
いやあ、松田が悪徳領主過ぎてドン引きですよ。家臣の皆さんに「領地が増える」なんて大嘘をついて、出陣したのですから。嘘も方便とは言いますが、
命懸けの嘘は流石に、ねえ。で、そんな中で俺が気になったのが、「松田は本拠地に移動した」でした
松田の本拠地は、武蔵国の中で上野国北部に近い場所らしいので、現在、俺達が居る上野国南東部の館林城からは遠い場所になりますので、これは俺が楽を出来るチャンス!と判断した結果、
「助五郎殿!これは、松田の軍勢が本拠地を捨てて忍城を奪う為に動いている可能性から、忍城へ向かうべきかと!
本拠地に松田が残っていた場合、鉢形城に居る軍勢だけで松田を叩けますし、我々が到着した頃には戦が終わっている可能性もあります
ですが、戦に絶対はないので我々は忍城が松田に奪われない為に動いた方が良いかと思いますが、如何でしょうか?」
助五郎殿に「忍城へ行こう!」と提案しました。俺の提案を聞いて、しばらく悩んだ結果
「最上殿、上杉殿、武田殿。六三郎殿がその様に提案しておるが、儂はそれでも良いとと思うが、各々方の意見を聞かせてくだされ」
それぞれの家の代表者に質問して来た。その質問に
「上杉家はそれで構いませぬ!」
「最上家も同じく!」
「武田家として、いえ、拙者個人としては反対です。武功をひとつでも挙げないと」
虎次郎くんが武功を挙げてないからと言う理由で、反対だと言って来た。流石に説得するか
「虎次郎殿。既に武功は挙げているではありませぬか」
俺の言葉に虎次郎くんは
「六三郎殿。拙者はまだ、敵の頸を取っておりませぬ!それは武功を挙げてない事になるのではないのですか?」
「頸を取ってないから武功が無い」と言って来た。だけどね、虎次郎くん。その考えは間違いだぞ
「虎次郎殿。頸を取るだけが武功ではありませぬぞ?敵の居場所を掴む事、敵の進軍を止める事、敵の軍勢を分断する事、色々とあります。その中でも此度
虎次郎殿は我々と新六郎殿を調略した事が武功になります!なので、武功を挙げたと言って差し支えないのですから!ですな、助五郎殿、上杉殿、最上殿」
俺の説明を聞いた3人は
「そうじゃぞ虎次郎殿」
「確かに、頸を取るだけが武功にあらず」
「若いからこそ、その様な考えになるのも分かるが、戦の勝利に繋がりさえすれば、それは武功になるのじゃ!武田の若殿よ、柴田殿の言う様に、既に武功を挙げておるのだから心配無用じゃ!」
俺の考えを読んでくれたのか、虎次郎くんを説得してくれた。歴戦の武将の言葉に虎次郎くんは
「分かりました。拙者が武功を挙げていると言ってくださり、忝うございます。その様に言ってくださるのめあれば、拙者も忍城へ向かう事に賛成します」
忍城行きを了承してくれたので、
「虎次郎殿、了承していただき感謝する。それでは助五郎殿、鉢形城へその旨を書いた文を送ってくだされ」
「分かりました。それでは、出陣準備に取り掛かってくだされ」
「「「「ははっ!」」」」
助五郎さんに動いてもらう事になりました。それじゃあ、松田討伐は北条家本家と家康達に頑張ってもらいまして、俺は忍城行きという楽な仕事に行きましょう
※六三郎は自分の欲で激務になる未来を知りません
六三郎がそんな事を知らずに、絶対来ない明るい未来を夢見ていた頃、鉢形城と忍城の中間地点では
天正二十一年(1593年)七月七日
武蔵国 某所
「ほう、二郎三郎が三介を叱責したと」
「はい。言葉を選ばずにお伝えさせていただきますと、見当違いの場所に布陣して案の定、何も起きなかった結果、
徳川様も北条家の二人も、三介様を叱責したとの事です。三十郎様もどうにかしようとしていましたが、どうする事も出来ない状況でした」
信長が信包の軍勢に潜入させていた手の者から、信雄のやらかしの報告を聞いていた。全てを聞いて信長は
「三介は空回りしておるのう。このままでは、遠い場所に捨扶持を与えて、周囲に見張らせるしかなくなるのじゃがのう、何故それが分からぬのか」
何かを諦めた様な言葉を口にした。その言葉を横で聞いていた長重から
「お、大殿。三介様の事も気になるとは思いますが、六三郎様の動きも確認しておいた方が宜しいかと思いますが」
空気を変える様な言葉をかけられる。その言葉を聞いて
「そうじゃな、六三郎に関する動きで何か変わった事はあったか?」
六三郎の情報を求める。伝えられた情報は
「ははっ!柴田様ですが、松田の本拠地と逆方向の忍城という名の城に向かう決断を下し、館林城の面々もそれを了承しております
なので、近いうちにこちらの道を進んでくると見て良いかと思います」
六三郎が忍城へ向かう決断を下した内容だった。その情報を聞いた信長は
「ほう。六三郎め、三介に武功を挙げさせる為のお膳立てのつもりか?だとしたら、何とも優しいのう。これで三介が微々たる程度でも武功を挙げてくれたら良いが」
六三郎の行動を信雄の為なのかと疑っていた。そして、
「六三郎達が忍城に行くのであれば、我々も忍城へ向かうぞ!!六三郎が忍城を奪うのか、守るのかは分からぬが、何やら面白い事になりそうじゃ!」
自らの軍勢も忍城へ向かう事を決断した。こうして、六三郎の仕事量が増える事が確定した。




