成田家は事実を知ると対策を開始する
氏長に指名された4人は、三家の元に馬で向かいながら、
「丹波。和泉殿、酒巻殿、三人はどの様に見ておる?件の大軍を」
「十兵衛、それはあの大軍の代表と話してみないと分からぬ」
「流石に攻撃して来ない時点で、敵対している家ではないと思うが」
「戦になったら、この天才、酒巻靭負が追い払ってみせましょう!」
「はっはっは。酒巻殿は頼もしいのう」
「靭負、お主は戦経験が少ないから、その様な言葉が出るのじゃ!戦場で油断は禁物じゃ!」
「正木の爺様は心配し過ぎですぞ?もしかしたら、和泉殿の姿を見て、怯えて撤退するかもしれませぬぞ?」
「靭負!儂を熊か何かの人外の者と思っておるのか!?」
「ほらほら三人共、言い争いは後程にしてくだされ。大軍の旗印が見える距離まで来たのですから」
進んでいると、長親の指摘どおり三家の旗印が見える距離に来ていた。旗印を見た正木丹波は
「三つの家がひとまとめになっておるな。その内のひとつは、北条家と何度か戦った常陸国の佐竹である事は分かったが、あと二つは分からぬ」
佐竹家の旗印は分かったが、伊達家と小田家の旗印は知らなかった様だった。なので、長親は
「佐竹家と二つの家と分かったのならば、さっさと話をしよう。あまり大軍がうろうろしていては、百姓達が畑仕事が出来ぬ!ほれ、三人共行こう!」
見合っていてもしょうがないと判断して、三人を連れて三家の前に進む。そして
「大軍を引き連れている皆々様。拙者、あちらに見えます忍城の城主、成田新十郎の一門、成田十兵衛と申します。共の三人と皆々様の前に挨拶に参りました!
皆々様は、もしやこれから忍城に攻撃を仕掛けてくるおつもりですかな?そうでないのであれば、何故、大軍で集まっているのか、一部の方のみで忍城内にて説明していただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
挨拶を終えると三家に対して、事細かに話す。話を聞いた面々は
「伊達家の代表として、儂と小十郎が成田新十郎殿に会ってくる」
「なら、佐竹家は儂と家臣で会おう」
「小田家も儂と家臣で会おう」
それぞれ、当主が一部の共の者を連れて氏長に会う事を、長親に伝える。それを聞いた長親は
「それでは、我々が案内しますので、ついてきてくだされ」
三家の代表者達の先導を開始する。そして、城内に到着し、大広間へ案内されると
「伊達家、小田家、そして佐竹家の皆様ですな。此度は、どの様な用件で忍城に来られたのですか?」
氏長が少しばかり警戒した挨拶をする。その挨拶の後、政宗から説明がスタートする
「成田殿。此度我々が忍城に寄った理由は忍城を攻めるわけではありませぬ」
「伊達殿の言うとおりじゃ。此度、我々はこの武蔵国の鉢形城に居る、ある人物の元へ向かっておる」
「我々は、その人物との縁を強くする為、その人物が出陣しておる北条家の謀反を鎮圧する戦に加勢する為の出陣で、
成田家の方々が我々を後ろから攻めないでいただく為に挨拶に行こうとしておったのじゃ」
3番目の小田氏治の説明を聞いた氏長は
「ま、待たれよ小田殿。今、北条家の謀反と言っておった様に聞こえたのじゃが?その話は誠か?」
謀反の話を初めて知ったかの様なリアクションになっていた。なので、政宗から
「誠ですぞ、成田殿。この件は拙者の伯父である最上出羽守殿からの文で知りました。詳しく説明しますと、北条家家臣の松田という者が上野国北部を征圧し
南部まで征圧されては、武田家へ割譲した領地へ攻め込んだ事になり、織田家と北条家の同盟関係に影響が出るので、
そうなる前に、松田を叩く事を北条家の支城である鉢形城にて織田家から出向して働いておる織田家の重臣、
柴田播磨守殿が先陣を切って出陣しておる。成田殿も聞いた事がありませぬか?「柴田の鬼若子」と呼ばれる若き名将の事を」
六三郎の事を感嘆に説明すると、氏長ではなく
「おお、聞いた事がありますぞ!確か、元服前の八歳で初陣を経験して、敵の武田を撃退したという逸話や、十一歳で元服して自らの手勢だけで倍以上の敵が籠る砦を征圧した逸話を持つ若武者の事ですな?」
長親が反応した。その長親の反応を見て、政宗は
「その若武者の事です。その若武者である播磨守殿が拙者の伯父上に、「松田の軍勢がどれ程の数か分からないから、協力してくれ!」と頼んで来たのです!
我々伊達家が動いた事で、佐竹家と小田家が動いたのも、何かの縁でしょう。そこで、誤解を生まない為に忍城へ挨拶に行ってから、
松田を叩く戦に行こうと話し合っていた頃に、十兵衛殿一行が来たのです」
忍城に挨拶に来た理由を伝える。それを聞いた氏長は
「その様な事が起きていたとは。小田原城から何も知らせが無いのは、忍城まで松田が来ないと思われていたからかもしれぬが、
松田の謀反を知った以上、我々成田家も出陣するぞ!我々の軍勢は一千人じゃが、その半分の五百人を出陣させる!儂自ら出陣しよう!」
自ら出陣すると宣言する。それを聞いた面々のうち、
「殿!!拙者、出陣しとうございます!」
「拙者も同じく!」
「拙者も!!」
正木、柴崎、酒巻の3人が出陣したいと希望する。しかし氏長は
「お主達3人は忍城に残れ」
3人の希望を却下する。氏長の決定に3人は
「何故ですか!」
「我々も働きとうございます!」
「足を引っ張る事などしませぬ!」
納得出来ない事を示す。しかし、氏長は
「たわけ!!お主達まで連れて行って、この忍城にもしも松田の軍勢が攻めて来た場合、誰が前線に出るのじゃ!?
叔父上は八十歳を超えておるから、無理をさせる事は出来ぬ!十兵衛は前線よりも後方で皆をまとめる役割がある!万が一にも、松田が忍城まで攻めて来た場合
儂の娘の甲斐に前線で暴れ回れと申すのか!それをさせたくないからこそ、お主達が頼りだからこそ、お主達を残しておくのじゃ!分かったか!!」
3人を連れて行かない理由を細かく説明する。その説明を聞いて3人は
「その様な理由だったのですか」
「我々の事をそこまで信頼していただいているとは」
「殿のお心が分からず、申し訳ありませぬ」
納得した。3人が納得した事を確認した氏長は
「伊達殿、佐竹殿、小田殿。我々成田家も鉢形城へ出陣します。先導は我々にお任せあれ」
政宗、義重、氏治に先導役を兼ねて、共に鉢形城へ向かう事を伝える。それを聞いた3人共
「ならば、早く準備してくだされ」
「急いでいただきたい」
「今日のうちに出立しましょう」
氏長に「早く準備しろ」と促す。促された氏長は
「それでは、今から準備に入ります!」
と、言って、大広間を出て行こうとした時
「正木、柴崎、酒巻!お主達三人と十兵衛と叔父上を中心に松田が攻めて来た場合の対策を取っておけ!」
「「「ははっ!」」」
3人にそう命令した。その後、急いで準備をして、三家と共に鉢形城へ出立した。




