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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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慶事は連鎖する中、六三郎は疑う

天正二十年(1592年)十二月十日

武蔵国 鉢形城


「小田原城からの使者や援軍は、何故来ない!?いくら軍勢の準備に時を要するとは言え、遅すぎる!」


「まさか、松田の手の者に?」


皆さんおはようございます。師走に入ったのに、北条家の本家から援軍どころか使者も来ない事で、新太郎殿と源三殿が不安に陥っている軍議に参加しております


柴田六三郎です。新太郎殿は俺が甲斐国から戻る前から使者を向かわせているそうですが、誰ひとりとして戻って来てないとの事ですので、


恐らく、松田の手の者に見つかって殺された可能性が高いと思っております。ですが、この件で流石、経験値が桁違いの幻庵爺さんが、既に手を打っておりまして


「新太郎殿、源三殿。その事に関してですが、家臣の風間達を小田原城への主要な道へ向かわせましたし、


館林城の助五郎殿への使者にも護衛として付けましたので、これからは大丈夫でしょう」


使者に風間殿を含めた面々を護衛として付けたそうですので、一安心と言って良いでしょう


そんな軍議を開いている場所ですが、実はいつもの大広間ではありません。現在、軍議を開いている場所は


「源三様!それに皆様!ここは、安産祈願の為の部屋ですよ!軍議は後回しにして、くる実殿の安産祈願に集中してください!」


「分かった分かった。福よ、そう大きな声を出さないでくれ」


福さんと新太郎殿のやり取りで分かったと思いますが、神棚のある部屋に居ます。大広間で軍議を開いていた所に、くる実さんが産気づいたと知らされたので


神棚の部屋へ移動したのですが、やっぱり事が事なので、安産祈願よりも軍議をしてしまった。という事です。それで福さんに軽く怒られたので、改めて安産祈願を開始しますと


オギャー!オギャー!


安産祈願からおよそ、1時間で産声が聞こえました。3人目ともなると、源三殿も慣れたもので、くる実さんと子供の元へ行きました


まあ、慣れたとはいえ、足が少し震えていたのは触れないでおきますが。改めて、おめでとうございます


同日夜


「三人目の娘が産まれた事、誠に嬉しい。だが、現在の状況的に、大々的に宴を開く事は出来ぬので、軍議を兼ねた小さな酒宴といきましょう」


皆さんこんばんは。午前中に源三殿の三女が産まれた事と軍議を兼ねた小さな酒宴に参加しております、柴田六三郎です


今回の酒宴参加者は、北条家の3人に、俺と五郎さんを合わせた5人ですが、その酒宴の中で源三殿は


「三女の名前はこれから考えるとして、くる実が出産を終えた事により、残るは正室の比左のみじゃが、年齢的に不安は特に強い


そんな中での松田の愚行じゃ!どちらも疎かには出来ぬ!早く松田を叩きのめしたいが、松田の軍勢の数が分からないままなのは、何とも、もどかしい!」


源三殿はそう言いながら、酒を呑む。そんな源三殿に五郎さんが


「源三殿。敵の数が分からない戦は、武田家も経験しております。八年前、当時の武田家当主で、現在の御館様の父であり、


拙者の兄の四郎勝頼は、その身を挺して、穴山の謀反から武田家を守ってくださいました。あの時の戦にも六三郎殿は参戦しておりましたな?」


酒を呑んで、昔を思い出しながら、俺に話を振る


「そうですなあ。あの戦の時は、拙者は織田家の先陣として、仁科様の守る高遠城へ進軍しておりましたが、


その道中で虎次郎殿の姉君と、四郎殿の御正室を保護して、そのお2人から、仁科様との戦を回避してくれと懇願されて、仁科様との交渉を行ない、


そこから、大殿と殿へ話が行き、徳川様も巻き込んで、謀反を起こした穴山を討伐しましたが、その代償として、四郎殿は亡くなり、


甲斐国も復興に長い時を要しております。此度の戦も、状況次第では、北条家もそうなる可能性もありますので、出来るかぎり早く情報が欲しいですな」


俺はそう言いながら、酒を呑み干す。すると、幻庵爺さんが


「八十年以上も生きて、多くの戦場を経験して、我が子と孫に先立たれた。それでも、この戦乱の世が終わる事を望んでいた。しかし、そんな事は無いと思っていた


じゃが、此度の戦次第で、関東の、いや、東国全ての戦乱が終わる可能性が高い!それを考えると」


昔の事と今の事を語りながら、酒を呑み、泣き出す。まあ、この時代では超人的、それこそ妖怪扱いされるレベルの長生きですから、


俺や虎次郎くんみたいな若造からしたら、想像すら出来ない濃厚な人生を送って来たんだろなと思うところです


そんな事を考えていたら、幻庵爺さんは


「湿っぽい雰囲気にして、申し訳ない。話は変わるが、柴田殿。柴田殿は色々な婚姻を成立して来たと聞いておる。そこで、その腕を見込んで頼みがあるのじゃが」


俺に婚姻関係の話を振って来た。八十歳超えの人の嫁になりたい人なんて、遺産目当ての後妻業としか思えないし、そんな女は知り合いに居ないのだが?


六三郎がそう考えていると、幻庵は


「先に言っておくが、「儂に嫁を」と言う話ではないですからな。儂が頼みたいのは、長男の孫と孫娘、そして次男の孫と孫娘、そして三男の孫と孫娘、つまり、儂の曾孫達の婚姻を成立させる事なのじゃよ。


家臣や関東の諸家では、明らかに北条家と親族になる事での旨みのみを欲しておる


これから、戦無き世を作ろうとしている織田家の中でも、他者の為に働ける柴田殿に頼みたいのじゃ。老い先短い年寄りの頼み、聞いてくれぬか?」


六三郎の考えてを当てて、目的を伝える。伝えられた六三郎は


(そんなの、北条家の本家に頼んでくれよ!でも、幻庵爺さんの意見も分からんでもないからなあ。と言うか、あなたが老い先短いとか思えないのですが?


あと10年、いや、20年は生きてそうですよ?まあ、とりあえず北条家に恩を売る機会と考えるたら、良い話か)


頭の中で色々考えながら、算盤を弾いて、この話を受ける決断をすると


「分かりました。幻庵様。出来るかぎり良い嫁ぎ先と、良い姫君を見つけましょう」


幻庵にそう伝える。幻庵も


「忝い!」


そう言って、六三郎の手を握る。これで、酒宴も終わりの空気になった所に


「源三様!どちらに居られますか!?比左様が、産気づきました!」


廊下から、高代の大声が聞こえてくる。声を聞いた全員、急いで酒を飲み干し


「高代殿!儂は此処じゃ!比左の事、教えていただき感謝する!これから安産祈願しに行くから、比左を助けてくれ!」


高代に声をかける。源三の声を聞いた高代は、


「分かりました!」


そう言って、比左の元に戻る。そして、源三は


「皆、比左の安産祈願、よろしくお願いします!」


六三郎達に頭を下げる。六三郎達は


「「「「任せてくだされ!」」」」


そう返事をした後、源三を連れて、神棚の部屋に向かった。この時、時刻は推定夜9時。これから、未来でも滅多に無い、戦国時代では前例の無い、恐らく最高齢の出産が始まる。

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― 新着の感想 ―
正直、この出産の方が松田とかと比べ物にならない大戦まである。 六三郎のお見合いネットワークにかかると、西から東からマッチングできそうで困るw
ここで新たな転生者が!!!っていう冗談は置いといて、母子ともに健康な出産になりますよう祈らせていただきます。
よし!ここで天上天下唯我独尊チャレンジやな!産まれてくるベイビーに言わせたれ!
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