六三郎は歩くブラック企業の可能性有り
「柴田殿。儂にしか出来ぬ事とは一体、何でしょうか?」
幻庵に質問された六三郎は
「幻庵様、手の者が松田の軍勢の中に潜入しているのですよね?それならば、その手の者を使って、松田達が館林城に到着しない様に、現在地に足止めするか、
館林城から遠い場所に移動させるなどを行なっていただきたいのです!そして、それに加えて松田の軍勢の数も知りたいので、どうにか手の者を動かしながら
松田達の内部を混乱させていただきたく!勿論、やり方はお任せします!虚偽の情報を流しても構いませぬ!今はとにかく、松田達が館林城に到着しない事を優先していただきたい!」
やり方は任せるけど、どうにかして松田達を館林城に到着させるな!という、まるでブラック企業にありがちな「何でもいいからとにかく働け!」的な言葉を幻庵に伝える
この言葉を聞いて、幻庵は
(敵の内部を混乱させて、目的地へ到着させない様にしろ。とは、まるで、風魔衆がその役目を請け負っているかの様な口振りじゃな!
風魔衆が正体が忍びであると露見する様な失策をしたとは思えぬ。つまり柴田殿は、「手の者が松田の軍勢に潜入しているなら、儂の代わりに働かせよ!」
そう言っているわけか。いやはや、何とも人使いの荒い若武者じゃな。じゃが、我々がすぐに出陣出来ない現状では、最も効果的なのはそれと言っても良いか
やり方は任せると言っておるのじゃから、好きにやらせてもらおうか!風魔衆の働きを求められる戦は、久しぶりに心が躍るのう!)
六三郎に対して、人使いが荒いと思いながらも、風魔衆が目立つ策の提案に心が躍る程、テンションが上がっていた
考えがまとまったのか、幻庵は
「はっはっは!柴田殿は、戦に関しては中々に人使いが荒いですな!この年寄り爺を間接的に使うとは!ですが、それだけ戦乱の世を終わらせたいと言う思い、
この年寄り爺にも伝わりましたぞ!それでは、拙者の提案として、織田家に臣従した越後上杉家、出羽最上家が松田に協力する虚偽の情報を流したいと思います
その虚偽の情報の信頼度を高める為と同時に、要らぬ誤解を避ける為、柴田殿。上杉家と最上家に文を書いてくださいませぬか?」
六三郎に上杉家と最上家へ、文を書いてくれと頼むと、六三郎は
「幻庵様。それは、織田家を裏切った訳ではない事を示す為。そう言う事ですな?」
幻庵の意図を理解した。しかし、内心では
(おいおいおい!この爺さん、中々エゲツない事をするな!上野国半国、およそ二十五万石を手にして有頂天の可能性がある松田に対して、
援軍が来る可能性を示唆して、その場に足止めするとか。やっぱり、80年も戦国時代生きている海千山千な人間は、とんでもない謀略が簡単に出るものだな!)
幻庵の提案に引いていたが、それても
「分かりました。すぐに書きましょう!」
そう言って筆を取り、書き始める。書き終えると、
「それでは、これを」
家臣の面々に渡す。渡されたのは、
「銀次郎!お主は越後国へ!新左衛門!お主は出羽国へ!赤備えの皆の中でも、体力に抜きん出ておるお主達だからこその大役じゃ!1日も早く渡し、そして1日も早く戻って来い!良いな?」
「「ははっ!」」
「うむ!それでは、行ってまいれ!」
「「ははっ!」」
赤備えの中でも、納金度合いの強い銀次郎と新左衛門だった。2人が出立した事を確認した六三郎は
「さて、それでは我々の今からやるべき事として、館林城へ文を送ると同時に、館林城近くへ移動しておくべきかと思いますが、
新太郎殿、源三殿。一万を超える軍勢が身を隠せる場所は館林城近くにありますでしょうか?」
次の一手として、出陣して身を隠せる場所を質問する。その質問に新太郎は
「柴田殿、申し訳ないが、館林城周辺は、一万を超える大軍が身を隠せる場所は無いと言ってよいのじゃ」
そんな場所は無いと六三郎に伝えて、源三も
「新太郎の言うとおりじゃ。柴田殿が色々と策を考えてくれている中で、誠に申し訳ないが館林城周辺は、
山肌くらいしか、隠れる場所が無いのじゃ。だからこそ、館林城の攻防戦は苛烈になる。父上が生きている頃から、それは変わらぬ」
館林城周辺は、大軍を隠す場所が無い事を六三郎に伝える。2人の言葉を聞いて六三郎は
(大軍を隠せる場所が無いと奇襲や罠での攻撃が出来ないなあ。それでいて、館林城は重要拠点だから攻防戦が苛烈になると。もう、そんな城はぶち壊して良い様な気がして来たぞ!
ん?城をぶち壊す?北条家が許可を出したなら、ぶち壊してしまうが、ただ単純にぶち壊すのも面白くないな!どうせやるなら、松田達に被害を与えたい!
そうなると、松田達が館林城の中に入ってからぶち壊せば、被害を与えられる!つまり、あえて館林城を奪わせる!これも提案しよう!)
もう一つの手を考えていた。それを大広間の面々に伝える前に
「皆様!もう一つの策を提案させていただきます。よろしいでしょうか?」
確認を入れると
「「「「是非とも聞かせてもらいたい!」」」」
全員が了承したので、六三郎は説明を開始する
「それでは、もう一つの策ですが、松田達に「あえて」館林城を奪わせて、その後、館林城ば勿論、周辺も壊し尽くす事で、松田達に被害を出すと言う策です
その為に、新太郎殿、源三殿、幻庵様。小田原城の本家へ、館林城を壊す許可をもらっていただきたく!」
六三郎の言葉に新太郎も源三も
「いやいやいや、柴田殿!先程言ったではありませぬか!館林城は堅城だと!奪われては落城させるのは、かならの労力を要しますぞ?」
「それに、山城でもあるのですから、周辺も壊すという事は、山そのものを壊すという事になりますぞ?そんな事は不可能です!」
「そんなの無理だよ!」と否定的意見を出す。しかし、幻庵は
「分かりました。柴田殿、御本家へその旨を伝えてみましょう。了承を得たならば、助五郎殿達に館林城から出てもらいましょう」
六三郎の策に賛同する。幻庵の意図とは一体?
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