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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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織田家の大軍を見た愚か者は籠城を選択する

天正二十年(1592年)六月三日

播磨国 三木城


「まだ小三郎を見つけられぬのか!」


「申し訳ありませぬ。少しずつ捜索範囲を広げておるのですが」


「もっと広げんか!」


「ははっ!」


播磨灘で唯一の反織田勢力である三木城で、本来の別所家当主、別所長治の身柄を探している会話をしているのは


長治の叔父で、謀反の首謀者の別所山城守賀相べっしょやましろのかみよしすけだ。そんな賀相が謀反を起こした理由とは


「これから播磨国が織田家の領地になるなど、言語道断じゃ!我々播州武士が、尾張の大うつけなんぞに膝を折るなど出来るわけが無いのに、


小三郎め、何故それを理解出来ぬ!弱兵と知られる尾張の兵なんぞ、どれだけ数を揃えようとも、我々播州武士の敵ではないと言うのに!」


単なる無駄に高いプライドだった。そんな無駄なプライドの為に領民を巻き込む事を拒否した長治を殺そうとしたが逃げられたので


自らが当主の座について上機嫌の賀相だが、その上機嫌もすぐに終わる事になる


賀相が家臣に長治の捜索を命令した約2時間後、


「と、殿!織田の大軍が、こちらに向かっております!」


家臣から信長達が三木城へ進軍しているとの報告を受ける。その報告に賀相は


「どうせ大した事の無い弱兵共じゃ!この三木城には、武器も兵糧も充分な蓄えががある!それこそ、半年は持つ程にな!


儂達が籠城している間に、織田家が大した事が無い事を播磨国全土に知らしめてやれ!」


と、この時になっても、官兵衛からの文の中にある、「総勢五万超えの大軍勢」を、ただの弱兵の集まりだと思っていた様で、織田軍をバカにしていた


しかし、その思いも織田軍を見て、一気になくなる


「ふっ。あれが、織田、の、軍、勢、じゃ、と?な、何万、人、居るのじゃ?最後尾が見えぬ程の大軍ではないか!しかも、武断の家で知られる赤松家と、


当主が優柔不断のはすの小寺家も参陣しておるじゃと?おのれ〜、誇り高き播州武士のくせに、織田の犬に成り下がりおって!」


信長の大軍に圧倒された賀相だが、赤松家と小寺家の旗印を見て、勝手に裏切者認定をして、再び気合いを注入していた


しかし、賀相に気合いが入ったとは言え、圧倒的な数の織田軍の前に、家臣達の士気は下がっていた


城内がそんな状況である事を知らない信長は、三木城を見て


「ふむ。小三郎よ、三木城は力攻めをするには、骨の折れる城の様じゃな!」


本来の城主である、長治に言葉をかける。信長の言葉に長治は


「はい。攻撃する側になり、三木城の堅牢さに驚いております。拙者の祖父と父が築き上げた城とはいえど、これ程の攻めにくい城だったとは」


三木城の攻めにくさに、正直な意見を伝える。長治の意見を聞いた信長は


「うむ。儂も正攻法では三木城を落とすのは苦労する事は、攻める前から分かる。なので、三木城は正攻法ではない攻め方で落とす!」


独特な攻め方で落城させると、その場に居た勝家達に伝える。それを聞いた勝家は


「大殿。どの様な攻め方をなさるのですか?」


信長に質問すると、信長は


「権六よ、六三郎が上杉の山城を落とした時の策を、儂なりに変えた策じゃ。まあ、今日はその為の準備に費やすとしよう。本番は、明日の朝じゃ!皆、楽しみにしておけ!」


とても嬉しそうな、まるで子供の様な笑顔で、今日は準備で、明日が本番だと伝える。そんな信長の言葉に、勝家達はわけが分からないながらも、とりあえず、三木城を囲む事にした


そんな織田軍の様子を見て、賀相は


「はっはっは!やはり、織田の軍勢なんぞ、ただ数が多いだけで、弱兵だらけの烏合の衆ではないか!どうせ包囲する事しか出来ぬのじゃ!


無理に我々が攻撃に転じる必要も無い!このまま籠城を続けると、皆に伝えよ!」


「織田軍は、この三木城を落とせない」と判断して、籠城を続ける選択を取る。これが後にとても大きな被害を生む事と知らずに、まるでフラグの様になっていた


そのまま賀相は、織田軍が包囲しか出来ないと決めて、就寝する


翌日


織田軍の本陣では、信長が主だった面々を集めて、実行する策を伝えるところだった


「皆、どの様な策で儂が三木城を落とすか気になるところだと思うが、これから説明する。先ず、前日、夜闇に紛れ、六三郎が作った例の武器を、城の搦手門近くの土中に大量に埋めて来た


その武器に火を付け、爆破させ、小規模な地震を起こして、場内を混乱させる!混乱した城兵達は、様子を見に行くじゃろう!その時に突撃する!」


信長の策を聞いた面々は、


「成程、敵が二つに割れる様に仕向けると」


「それならば、城を守る兵達も、指揮を取る者達も、混乱する可能性が高いですな」


と、これから起きる展開を想定していた。そんな感じで軍議が進んでいくと、信長は最期、長治に対して


「別所小三郎よ、念の為に確認しておくが。あの三木城を修復不可能な程に壊してしまうかもしれぬぞ?お主の父や祖父が築き上げた、


見事な城じゃが、此度の戦、播磨国の領主達に、「織田家は甘くない」という事を示す戦になる!なので、城を気遣う事はせぬ!良いな?」


播磨国支配の為に、三木城を徹底的に攻撃する事を伝える。それを聞いた長治は


「壊してくだされ。三木城が壊れても、命があれば、次に住む場所もどうにか出来ます!なので、遠慮なく壊してくだされ!」


信長に覚悟を示す。長治の覚悟に信長は


「うむ!別所小三郎よ、お主の覚悟、しかと受け取った!それでは、策を始めよ!」


長治を誉めて、策の開始を告げた。

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― 新着の感想 ―
籠城策は救援が見込める場合にやるもの。 赤松、小寺、黒田は既に敵で畿内には佐久間、備前には羽柴と織田直属の重臣、さらに讃岐は信孝が、阿波は先に従属してる長宗我部がいる。 周囲全てが敵となってる状態での…
この時代の武士にとってプライドは馬鹿にできないので仕方ないけど、さすがに戦力差とか籠城した先の見通しとか諸々甘いのは救えないかな…。 信長が銃だけじゃなく爆破まで使えるようになったら火力上がっちゃう…
城は作り直せるし、あまりの堅城は裏切りを警戒されますからね 良い判断をしましたね
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