慶事に必要な人を呼ぶと
天正二十年(1592年)一月十九日
武蔵国 鉢形城
「医師殿!ど、ど、どうなのですか?かな子ときく乃は、やや子を授かっておるのですか?」
「まだ不安定な時期ですが、お二人共ご懐妊しております」
「うおおお!」
「遂に、殿のお子が!」
「殿に、殿に」
皆さんおはようございます。当初の目的である北条源三氏照さんの側室3人のうち、2人が妊娠した事が分かり、家臣の皆さんの喜びに驚いております柴田六三郎です
10年前の秀吉の時を思い出しましたが、やっぱり今まで子供が出来なかった人が、
まだ産まれてないけど、妊娠が分かっただけでも、そりゃ嬉しいよなという心境です
そんな温かい空気の中、源三殿が俺の所に来て
「柴田殿!誠に、誠に、誠に!どれ程の感謝を伝えたら良いか!」
俺の手を握りながら号泣しております。まあ、秀吉もこうだったなと思い出しながら、これからの注意事項を伝えておきましょう
「源三殿。そして、かな子殿ときく乃殿。先ずはご懐妊おめでとうございます。ですが、これはあくまで第一歩です。そこで、差し出がましいかもしれませぬが
羽柴様にやってもらった事を、源三殿にもやってもらいたいのですが、先ずは聞くだけでもよろしいでしょうか?」
「うむ!教えてくだされ!」
「では、先ずお二人の身体を冷やさない様に、常に気をつけてくだされ。そこで、眠る時に身体を冷やさない為に、督姫様の実家の徳川家から布団という物を購入してくだされ」
「分かった。御本家にすぐに頼もう!他には?」
「拙者の母と羽柴様の奥方様がやっていた事として、化粧をやらせないでくだされ」
「それは、何故ですか?」
「化粧の中で特に、白粉が有害なのです。母胎からやや子に吸収され続けると、やや子が死ぬ可能性が高まり、運が良くても障害を持って産まれる可能性が高いのです」
俺の説明に源三殿は
「そ、それは駄目じゃ!産まれてくる子には、五体満足で産まれて欲しい!かな子、きく乃は勿論、くる実と比左も、化粧をしなくて良い!」
「「「「はい」」」」
「柴田殿!他に何をしたら良いのじゃ?」
「あとは、とにかくお二人が腹や尻をぶつけない様に、徹底的に気をつける事と、塩辛い食べ物や生物を食べない事、身体を冷やさない事を物理的にやる事として、神頼み的な事になりますが
城の中の空いている部屋に、神棚を祀って安産祈願をしてくだされ。父も羽柴様も、それこそ拙者も子が産まれるまで毎日安産祈願をやっておりました」
「誠ですか!新太郎!」
「兄上!今から作りますぞ!」
新太郎殿に頼んで、神棚を作ってもらう事になった。そこから更に
「柴田殿、あとは何に気をつけたり、準備したら良いでしょうか?」
やるべき事や必須な物を聞いて来たので、
「あとは、そうですなあ。念の為、医師や産婆達を常駐させたりしても良いと思いますが」
やっていた事を言う。それを聞いた源三殿は
「新太郎。済まぬが」
新太郎殿に頭を下げて頼もうとすると、新太郎殿が
「兄上。兄弟でそれは無しですぞ。兄上の子が産まれるまでは、頼ってくだされ!」
とてもカッコイイ言葉を言っていたのですが、
「ですが、産婆や医師のあてが無いので、これから探す事になるのですが、柴田殿、誰かしらのあては無いでしょうか?」
まさかの俺に話を振って来ました。流石に織田家から派遣された産婆達を此処に連れて来る事は出来ないし、産婆の補助をした事ある人とかは、、、居るじゃないか
「新太郎殿、拙者の側室の1人が、多少なりとも医術の心得がありまして、産婆の補助も経験があります。なので、その者を此処に呼んでもよろしいでしょうか?」
「今は、ひとつでも不安を取り除きたいですから、申し訳ないですが、側室の方をお借しくだされ」
「分かりました。現在、武田家の屋敷で世話になっているので、そこからの移動になります。なので、新太郎殿も、その間に産婆や医師を探してくだされ」
「うむ。兄上の子が産まれる為に、全力を尽くさねばな!」
「皆、儂の子の為に、、忝い」
こうして、源三の子が無事に産まれる為のサポート体制が構築されていく中
天正二十年(1592年)三月二十日
武蔵国 鉢形城
「六三郎様!やっぱり私に会いたいと願っていたのですね!もう、そう思ってくださるのであれば、早く子作りをしましょうよ」
「ちょ、高代。北条家の皆様が見ているのだから」
皆さんこんにちは。甲斐国から、側室で医術の知識と経験があって、産婆達の補助経験もある高代さんに来てもいましたが、テンションの高さに疲れております柴田六三郎です
なんだかんだで、俺の近くに居る人だと、高代さんしか医術の心得が有る人は居ないですからね
あ、ちなみにですが、源三殿の側室で妊娠中のかな子さんときく乃さんですが、無事に安定期に入りましたので、源三殿も家臣の皆さんも、とても大喜びでした
それだけでなく、3人目の側室のくる実さんも、前月に妊娠している事が分かって、来月の上旬くらいには安定期に入るそうです
高代さんには、済まないが出産の頃には働いてもらおう。そんな高代さんを見て、新太郎殿は
「いやはや、柴田殿だけでも色々と凄い御仁なのに、奥方殿までも色々と凄そうですな!」
何か、軽くひとイジリ的な事を言っております。そんな新太郎殿とは対照的に源三殿は
「高代殿。夫である柴田殿がとても働いている中で、側室の高代殿まで働いていただき、誠に忝のうございます」
高代さんに頭を下げて感謝していた。その源三殿の隣で比左さんも頭を下げていたが、そんな比左さんを見て高代さんが
「あら?奥方様、顔色が優れない様ですが、もしや御懐妊では?」
なんて、驚きの発言をしたのです。いやいや、そんな、まさか、ねえ?




