妊活の第一歩は身体を鍛える事から
天正十九年(1591年)十一月十五日
武蔵国 鉢形城
「う、う、うおおお!「
「兄上!あと一回です!頑張ってくだされ!」
「こ、これ、で、十回、目」
「見事、成し遂げましたな!柴田殿が作ってくれた猪肉の料理をしっかり食べて身体を回復してくだされ!」
皆さんこんにちは、北条家の一門の1人の、北条源三さんの妊活に伴い料理を作りました柴田六三郎です
初めて顔合わせした日に、筋トレと食事の重要性を理解した源三殿の為に、弟の新太郎さんが
「猪や鹿の肉を食べていけば、子を授かる可能性が高いのであれば、儂や家臣達が山を案内しようではないか!
柴田殿達は、兄上や奥方達に食わせる猪や鹿を退治してくれ」
と、言ったので、退治に出発しようとしたら、源三殿が。
「退治したとしても、料理出来る人が居ないのじゃが」
と言って来たのですが、
「拙者が料理出来ますので、ご安心くだされ」
と、俺が言ったら
「柴田殿は何にでも挑戦するのですなあ!儂の倅に見習わせたいですぞ!はっはっは!」
新太郎殿に大笑いされました。まあ、俺がこの時代ではレアな存在だから仕方ないとしようと判断して、
そのまま猪狩りに行って、退治して、血抜きして、冷やしたら、食べやすい大きさに切り分けて、
最初は猪の生姜焼きを出しましたら、源三殿は
「初日より、は、マシに、なった、が、それ、でも、箸が、重い」
腕をプルプルさせながら、何とか食事をしております。そんな状況ですが、源三殿の顔は嬉しそうですので、自らの変化を実感しているのでしょう
それじゃあ、次の妊活対象である側室の皆さんに色々と運動をしてもらいましょうか
「それでは、源三殿、新太郎殿。次は、側室の皆様に、拙者の母上がやっていた事を説明に行きたいのですが、拙者が1人で行くのはよろしくないので、
どなたかに付き添いをお願いしたいのですが、お願い出来る方はいらっしゃいますでしょうか?」
俺が付き添いを希望すると、
「儂が付き添いをやろう!柴田殿のやる事なす事、面白いから、きっと此処でも何かしてくれるかもしれぬと、思えて仕方ない」
新太郎殿が、付き添いをやると言って来ました。ですが、
「殿。柴田様に殿が常に付き添っていたら、内政が滞ります。なので、別の方を付き添いにお願いします」
家臣の1人にそう言われて、新太郎殿は仕方なく
「そうか。ならば仕方ない。光福丸と庄三郎、お主達と、猪俣、お主が柴田殿の付き添いをせよ」
「「「ははっ!」」」
息子の光福丸くんと庄三郎くん、そして家臣の猪俣さんを俺の付き添いに指名しました。そんなこんなで、源三殿の側室の皆さんが居る部屋へ移動したのですが
その道中
「柴田様。元服前の初陣では、最前線で戦ったというのは誠ですか?」や
「戦において、どの様な時に見事な策が思いつくのですか?」等
質問攻めにあいましたが、まあ、光福丸くんは9歳、庄三郎くんは5歳だから、そこら辺の話に興味が出るのは仕方ないですね
そんな2人に猪俣殿が、
「お二人共、柴田様は北条家がより盤石になる為のお手伝いに来ておりますから、戦のお話は後程にしましょう」
「その話はあとで」と軽く注意する。このやり取りだけを見てると、史実の秀吉の小田原征伐の引鉄になった、名胡桃城への攻撃を実行した1人とは思えません
そんな感じの会話をしていたら、側室の皆さんの部屋に到着しましたので、声掛けをしてから襖を開けようとしたら、中から
「柴田播磨守様と、付き添いの方々ですね?どうぞお入りください」
女性の声が聞こえて来たので、とりあえず中に入りましたら、3人の側室さんが居ると聞いていたのに、5人の女性が居ました
訳が分からなかったのですがとりあえず、自己紹介をしておきましょう
「柴田従五位下播磨守にございます。此度は、北条源三殿の嫡男誕生の為の手伝いとして参りました」
俺の自己紹介のあとに
「源三様の側室のかな子と申します」
「同じく側室のきく乃と申します」
「同じく側室のくる実と申します」
側室の3人が自己紹介してくれましたが、残りの2人が
「新太郎様の正室の福と申します。此度は、柴田様の手伝い役になっておりますので、気になる事は聞いてください」
「源三様の正室の比左と申します。此度は、北条家の無理難題を、源三様の悲願を叶える為に来ていただきまして、誠に、誠にありがとうございます」
まさかの新太郎殿の正室の福さんと、源三殿の正室の比左さんでした。比左さんの言葉の内容がとても重い。きっと、初めて会った時の寧々さんがそうだった様に
「自分が男児どころか、子供を産めなかったら」と言う負い目を持っているんだろうな。でも、比左さんには悪いが、
今から身体を鍛えて四十数歳で出産なんて事になったら、それこそ、「母か子のどちらかしか救えません」なんて事になりかねないから、
比左さんには側室3人の世話役として頑張ってもらおう。そして、福さんには4人をフォローしてもらおう
「ご丁寧な挨拶、忝のうございます。それでは本題に入りますが、拙者の母が20代後半や30代半ばで出産出来た理由ですが、
男女問わず身体を鍛えて、食事に気をつけていたからです。身体を鍛える事を具体的に言いますと、毎日、部屋の掃除をして、長刀を一刻は振っておりました
福殿、この鉢形城に、その様な事が出来る場所はありますでしょうか?」
俺の言葉に福さんは
「ほっほっほ。柴田様、この鉢形城、少しばかり独特な縄張りのせいで、使ってない土地も多めにありますから、新太郎様に頼んで、そこに作ってもらいましょう」
とても頼もしい言葉を言ってくれました。これなら、俺がやる事は少ないかもしれないな、そんな予感がする!
六三郎は願望を込めた予想をしていたが、当然、そんな予想はフラグになっている事を、本人は知らない。




