出張先からの出張(10年ぶり3回目)
天正十九年(1591年)十一月十日
武蔵国 鉢形城
「いやあ、柴田播磨守殿!良くぞ来てくださった!源三兄上の嫡男誕生と言う、兄でもある先代様の無茶を聞いていただき誠に感謝しかない!のう、源三兄上!」
「まったくじゃ!新次郎様の事で、織田家と北条家が戦になってもおかしくなかったのにも関わらず、織田家重臣の柴田殿が武田家に居てくれたおかげで
武田家の面々を抑えられた事もあり、戦に発展せずに済んだのじゃから、誠に柴田殿には感謝しかない!それなのにも関わらず、儂こ嫡男が産まれる可能性を上げる為に働いてくれるとは」
皆さんおはようございます。現在、武蔵国の八王子城に来ております柴田六三郎です。殿と大殿の悪ノリの結果、甲斐国の復興を一時中断して、北条家先代当主、北条氏政の弟達の妊活指導役として、
10年ぶり3回目の出張先からの出張をしておりますが、北条家というのは、俺の想像の遥か斜め上を行く大大名過ぎて、驚きの行動を取っております
その行動と言うのが、俺が今居る鉢形城の城主、北条新太郎氏邦殿が居るのは分かるのですが、その鉢形城に、八王子城の城主、北条源三氏照殿が居る事なんです
俺としては、どちらか片方に全力を出して、しばらくしたら、もう片方の城に移動する。というのを想定していたのですが、
「それで柴田殿!子を授かりやすくするには、どの様な事をやったら良いのじゃ?」
「お父上が還暦を超えてから、子を授かった話も教えてもらったのじゃが、どの様な事をしたのか教えていただきたい!」
親父の話が衝撃的過ぎて、居ても立っても居られない状態になったので。鉢形城に源三殿が来ている様です
まあ、2人の身体を見るに、秀吉の様に細くはないが、親父の様に逞しくもない。いわゆる中肉中背、この時代だと普通の身長で普通の体型です
そんな俺の視線に気づいたのか、新太郎殿が
「柴田殿、もしや、嫁だけでなく我々も問題があるかもしれぬという事か?」
自分達も問題あるのか?と聞いてきて、源三殿も
「我々が問題となると」
色々と考えてしまっています。これは、最初の段階からだな
「新太郎殿と源三殿。少しずつ確認したいので、正直にお答えくだされ。先ず最初に、正室側室問わず、奥方殿は何人居ますか?」
俺の質問に新太郎殿は
「儂は既に3人男児が居るから、源三兄上に集中してくだされ。儂としては、源三兄上とと同じ事をして、子が更に産まれるのか、試してみたいだけじゃからな」
と、お試しでのチャレンジだから、源三殿を見てくれリクエストして来ました。それならば、源三殿に集中出来るので、それはそれでありがたいですが
「そうでしたか。それではお言葉に甘えて源三殿、改めてお聞きしますが、奥方殿は何人居ますでしょうか?」
「儂には正室の比左しか嫁は居らぬのじゃ。今年で四十四歳じゃから、流石に子を望むのは無理じゃろう。それで、側室になっても良い女子を探したのじゃが」
源三殿は少し暗い顔で、正室の比左殿が年齢的に出産は無理だから、側室を探したと言っているんだけど、何かマズい事でもあるのか?
「源三殿、何か気になる点でも?」
「うむ。側室は三人迎え入れたが、全員二十歳を超えておるから、比左よりは大丈夫だと思うが、それでも子を産むのは難しいのではないのかと思ってな」
成程、戦国時代の出産の常識的に、10代で出産してない女の人は、歳を重ねたら出産が難しいんじゃないのか?という不安か
それなら、親父とお袋は勿論、秀吉と寧々さんの、この時代どころか、未来でも高齢出産にあたる事例を話してみるか
「源三殿。二十代ならば、まだまだ子を産む望みを持てますぞ!何故かと申しますと、子を授かる為には
男と女の両方が頑張らないといけないのです!その事で男が頑張った話として、拙者と共に織田家の家臣として働いております羽柴弾正様という方がおられます
その方は、現在、正室の奥方様と夫婦になって30年経ち、その奥方様との間に1名、側室の方達との間に8名の子をもうけております
ですが、実は10年前まで子を授かる事が出来なかったのです。それこそ、正室の奥方殿は33歳で初産でした」
俺が秀吉と寧々さんの話をすると、源三殿は
「し、柴田殿!その、羽柴都は、どの様にして、一挙に九人の子をもうけたのじゃ?」
見事に食いついて来ました。まあ、子を、それも男児を授かって育てて行く事が至上命題の戦国武将からしたら、当然だよな
「源三殿。羽柴様は、拙者の父上と同じ暮らしを真似したのです。それこそ、食事と身体を鍛える事を中心に」
「ど、どの様な事を、お父上はどの様に身体を鍛えたり、食事に取り入れているのですか?」
「源三殿。その動きを拙者の家臣がお見せしますので、こちらに呼んでもよろしいでしょうか?」
「是非とも!早く見せてくだされ!」
「分かりました。源次郎!大広間に来てくれ!」
俺が源次郎を大広間に呼び出して、
「源次郎、いつとの四種の動きを10回で良いから、皆様へ見せてくれ」
「ははっ!それでは」
源次郎に腕立て、腹筋、背筋、スクワットを10回ずつやってもらうと
「こ、これを毎日、還暦を超えたお父上がやっておられるのですか?」
うん。軽くひいておりますね。でも、筋トレをやる理由も教えないといけません。なので
「源三殿。身体の中にある血を川に見立て、子種を魚に見立てて見た上で考えてみてくたされ。流れが遅い川では、魚はどの様な状態でしょうか?」
「それは、魚が川の中に止まっておりますな」
「そうです。それでは魚が川下に行きませぬ。これを人の身体に当てはめると、川の水である血の流れが早い事は、魚である子種の動きが活発になるのです」
「おお!成程、身体を鍛える事に、その様な意味が!では、食事はどの様な物を食べているのですか?」
「猪や鹿といった獣肉です」
「そ、それは」
「拙者の父も羽柴様も、身体を鍛えてから、獣肉を食べた結果、羽柴様は四十半ばで、父は還暦を超えてから、子を授かったのです
新太郎殿、年齢を重ねてからの子作りは、生半可な覚悟では成し遂げられませぬ!その覚悟を持ってくだされ!」
俺の言葉に、源三殿は
「わ、分かり申した。覚悟を持って、子作りに励みます!」
覚悟が決まった様で、そんな源三殿に新太郎殿も
「源三兄上。良くぞ決断なされた!兄上の子作りを、拙者も最大限手伝うぞ!」
とても嬉しそうに笑っていた。とりあえず、これでスタートを切る事は出来たかな?
妊活の主役は、北条源三氏照さんと奥方達です。ごっちゃになって分かりにくい。と指摘がありましたので書いておきます。




