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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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武将の子供に安息は無い!

元亀三年(1572年)十一月十日

遠江国 浜松城大広間にて


「吉六郎よ。この武器はどの様に使うのじゃ?」


おはようございます。現在、徳川家の皆さんにガン見されている柴田吉六郎です。


まさか俺が作った簡易パイプ爆弾、又は初期のダイナマイトをいくら同盟相手とはいえ徳川家に送って「これで武田を倒してね」とか殿がやるなんて普通思わないだろ?八日前の将棋を終えた後の家康と謀臣さんの話し合いがこの事だったとは


まあ、殿はそれだけ徳川家を大事にしていると同時に武田を脅威に感じているという事の現れでもあるんだけど、このままだと俺は武田との第二ラウンドに巻き込まれてしまうよな?親父の性格上、「徳川様に助太刀いたす」とか言いかねないけど、もう知らん!


教えろと言うなら教えてやる。


「徳川様。そして家臣の皆様、その武器の真価は外に出てこそでございます。何処か広い開けた場所は有りませぬか?」


「広い開けた場所が。弥八郎、何処か良い場所はあるか?」


「でしたら殿。城から三里程、北に行ったところに整地されてない土地があります。そこか宜しいかと」


「よし。ではそこに主だった者達は来る様に。吉六郎、改めて頼むぞ」


で、着きましたよ。だだっ広い野原に。草はボーボーだし、岩もデカいのがゴロゴロ。まあ、こんな感じの場所なら威力も充分伝わるでしょう。始めますか。でも、その前に


「では皆様、この武器の使い方を説明しますが、先ずは使用不可能になった種子島の筒を外して、一方の穴を塞ぎます。そして、開いているほうの穴から火薬、刀や槍の破片、小さい石を入れて、その中に油を流し入れます。そして筒の中ほどまで入れる長さの紐を入れて、再び火薬、破片、石を入れて、中に入れた物が溢れない様に固めて、最期に紐に火を付けて敵に投げたら完成です。火の周りを早くする為に紐を油に浸しておくのも宜しいかと」


俺の説明を聞いた家康は


「思っていたより難しくはなさそうじゃな。して、吉六郎よ。効果のほどを見せてくれ」


「承知しました。源太郎」


「ははっ」


「あの岩と岩の真ん中くらいに投げよ」


「畏まりました。では」


そう言って源太郎は俺から受け取った簡易パイプ爆弾に火を付けて投げた。「カランカラン」と金属音が鳴って数秒後


ドーン!!


どでかい爆発音と共に砂煙が流れてきた。俺も飯富兄弟も親父も徳川家の皆さんも一斉に顔を覆った。土煙がはれた先を見て、親父と徳川家の皆さんはドン引きしてました


だって投げた先にはそこそこ大きな穴があるし、直撃しなかった岩にもコゲが少しついていたし、周辺の草は燃えてたし


今思えばこれを武田の足軽達に投げつけていたんだから、俺も悪人だな。そんな事を考えていると


「これは見事な武器じゃ!武田がどれ程の強固な陣形で攻めて来ても、この武器を投げつけてしまえば間違いなく陣形は崩れ、兵も減る。皆、この武器の使い方を覚えて武田を倒すぞ!」


「おおー!」


「おおー!」


「おおー!」


「おおー!」


めっちゃテンション上がっているんだけど正直、この簡易パイプ爆弾使うよりは火縄銃を大量に揃えて1チーム100人くらいで発射して次のチームに交代してまた発射して交代。とかの方が汎用性は高いと思うんだけど、これだけテンション高い時に水を差す発言は言えないよなあ。俺がそんな事を考えていたら


「殿。この武器は確かに素晴らしいですが、使う場所が限られてしまうのではないのでしょうか?」


「小平太よ、何故そう思う?」


「この武器は素晴らしいですが、野戦でしか使えないと某は思います。敵が籠城していたならば、この武器を城内に投げ入れる為に城に近づかなければなりませぬ。それでは投げ入れる前に見つかって死ぬ可能性が高いかと」


小平太さんとやら、ナイスな指摘をありがとう。これで俺達は帰っていいよ。となってくれたらありがたい


しかし現実は甘くなかった


「ふむ。小平太の意見はもっともじゃ。攻城戦になった時の使い方はあるか吉六郎よ?神童の意見を聞かせてくれ」


「え〜と〜」


俺が考えていると


「さっさと答えんか!お主の事じゃ!何かしら考えておるのだろう」


親父からの大声が飛んで来た。何で親父は少しくらい待てないかな?一応思いついたアイデアだけ伝えておくか


「小童の考えではございますが、この武器を城内に投げ入れずとも、山城ならば城の土台部分の土に埋め込みまして遠くから火をつけて土台を削ったり、城壁や城門にぶつけて破壊するなどの使い方をしても良いかと思います」


俺が説明したら一瞬静かになった。そして


「確かに!無理に城内に投げ入れずとも、城門を壊せばこちらからは城に乱入出来るし、城壁を壊せば城の守備は弱くなる。うむ、使い方は色々じゃな」


「しかも、撤退する場合も殿軍の者が敵に投げたら追手を減らせますな」


「他にもこの様な使い方は」


「いや、この場合なら」


なんか使い方談義が始まっちゃったよ。後の事は知らねーぞ?


で、取り敢えず浜松城に戻って来て解散した訳なんですが、


「柴田吉六郎殿、お待ちいただけるかな?」


またこのパターンかよ!と思って振り向くと、さっきの小平太さんが立っていた


「え〜と、先程徳川様に進言していた」


「榊原小平太康政にござる。吉六郎殿にいくつか聞きたい事があってお呼びした次第」


今度は榊原康政か。確かこの人、史実だと小牧長久手の戦で秀吉に対して「あの猿野郎は織田家で重用された恩を忘れて織田家を乗っ取った天下人気取りの大罪人だぞ!」みたいな文書を書いて立看板で周辺に出しまくって秀吉が「あいつの首を取ってきたら十万石くれてやる!だからあいつの首を取ってこい」とブチギレる程のケンカを売ったメチャクチャ心臓の強い武将なんだよな。そんな人が何の用かな?まさか俺に恥をかかされたから、何かするのか?


俺が不安で頭の中がぐるぐるしていると


「しばしお時間を宜しいかな?吉六郎殿と話がしたい」


「家臣の二人も一緒であれば」


「構いませぬ。では、こちらへ」


そう言われて一室に案内されると


「楽にしてくだされ」


と言われたので胡座をかいた。そして


「吉六郎殿に聞きたいのだが」


「なんでございますか?」


「吉六郎殿は何故、元服前なのにあの様な戦の細かい事が考えられるのですかな?教えていただきたい」


なんかめっちゃ真剣な顔でちゃんとした質問をされたんだけど?これはふざけた答えを言ったら巡り巡って親父がうるさいだろうから、ちゃんと答えるか


「榊原殿。それはこれから先の世は戦も政も新しくなると思っているから。でございます」


「戦も政も新しくなるとは?」


「戦においては一騎打ちは減るでしょうし、種子島をどれだけ多く揃えて有用に使えるか、そして将兵の死者をどれだけ少なく出来るか?これを考えているからこそ、あの様な策が出ただけにございます。政に関しては、幕府の公方がどれ程の阿呆かは知りませぬが、日の本全体が乱れている今の世を作りだした原因が幕府ならば必要ないので、殿や徳川様が作る新たな世の為にも少しずつ新しい事を考えているだけでございます」


「誠に元服前とは思えぬ程しっかりしておりますな」


「いえ、父上が常に「うつけな振る舞いをするな」と耳が痛くなるほど言ってくるので、しっかりしている感じに見える様に気をつけているだけでございます」


「成程、ところで吉六郎殿」


榊原さんが更に質問しようとした時だった


「吉六郎!鍛錬を行うぞ!早う来い!」


親父のデカい声が聞こえてきた


「榊原殿。申し訳ありませぬ。父上から呼ばれておりますので、御免」


こうして俺は部屋を出たんだけど、特に何も無くて良かった


吉六郎が安心した様子で勝家の元に向かう一方、残った康政はと言うと


「あれで元服前とは」


吉六郎と会話をして呆気に取られていた。そんな康政の後ろから


「小平太。その様子だと上手くいかなかった様じゃな」


家康が現れた


「殿。申し訳ありませぬ」


「よい。気にするな。元より今直ぐどうこうする気は無い。しかし小平太よ、お主から見て、どの様に思った?」


「幼いながらにあれ程の頭と弁舌、政に関わって来たならば一国、いや複数の国を任せるに値する武将になるかと」


「やはりその様に思うか。儂もじゃ。吉六郎が元服した時、独身ならば嫁取りの話を三郎殿に出しておきたいものじゃな」


吉六郎も勝家も知らないところで徳川家は吉六郎を気に入っていた

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