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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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出し忘れた文が届くと実家が慌てる

天正十八年(1590)九月二十一日

近江国 安土城


「殿!甲斐国の柴田様から文が届きました」


前日に小田氏治からの臣従申し出の文を読んだ信忠は、臣従を了承する旨の文を書いている途中に、六三郎からの文が来た知らせを受けて、その手を止めると


「六三郎から二日連続とは。基本しっかり者の、あ奴でも、忘れる事があるのじゃなあ。どの様な中身か見てみよう」


文の中身に目を通す。通し終えると、


「五郎左、六三郎からの文を見てみよ」


長秀に文を渡す。渡された長秀も文に目を通すと


「なんとまあ、六三郎殿らしいと言いますか。殿、どの様になさるおつもりでしょうか?」


信忠にどの様に進めるのか質問すると、信忠は


「父上にこの事を伝えると、「儂も参加する!」と言いかねぬからのう。父上には事後報告するとして、


権六と黒田官兵衛に伝える事は当然として、あとはそうじゃなあ、柴田家で学んでおる三吉と長丸に、六三郎の様に元服前ではあるが、戦場を経験させるか?」


文の内容が播磨国切り取り関連である事を示唆して、柴田家で学んでいる弟の三吉と長丸に戦場を経験させる旨の発言をする


その発言に長秀は


「殿。流石に三吉様と長丸様を戦場に連れて行くのは、大殿のお許しが無いと駄目だと思うのですが」


「信長に事後報告するなら、弟達は連れて行かせない方が良いと思います」と言われる。言われた信忠は


「む。五郎左は父上を通した方が良いと思うか。確かに、万が一弟達が負傷したら、父上から色々と言われると思うが、仕方ない


ちゃんと元服の儀を執り行なってから、初陣とするか。それがおおよそとはいえ、いつ頃になるかか分からぬのがのう


それにじゃ!今、小田左近への文も書いておるが、六三郎へ北条家当主が武田家の屋敷に行く旨を書かねばならぬ!


とりあえず、同盟という形でお茶を濁す事と、此度の倅のやらかした事で、上野国の南側半国を武田家に割譲する事になった事も伝えてやらぬとな!


六三郎が働くと、儂達も仕事が増えて忙しくなる!!五郎左よ、やはり六三郎は休めないどころか、人を休ませない人間なのじゃろうな!」


六三郎が関わると、仕事が増えると口にするが、長秀は


「殿、それだけ天下統一が近づいていると言うことだと思われます」


信忠をフォローする言葉を口にする。信忠も


「成程、そう思えばこの仕事量も苦にはならぬか。じゃが、他にもいろいろ見ないといかぬからのう。それこそ佐久間家の後継者問題もじゃ


甚九郎は目標であるである「一年間で三千貫の儲け」を中々達成出来ぬからのう。二千八百や二千九百までは到達するが、残りのあと少しが届かぬ


新十郎も、甲斐国がこの様な状況なら、まだまだ時間はかかるじゃろうからな。五郎左、これは進捗を見守るしかないか?」


「それが一番だと思います」


まだ解決してない佐久間家の後継者問題を含めた色々な事を考えながら、長秀に聞き、長秀も「当人達に任せるべき」と進言すると、信忠は


「分かった。とりあえず、佐久間家の問題はそのままにして、柴田家には六三郎からの文と今から書く文、黒田家には今から書く文を届けてくれ!」


「ははっ!」


今は、播磨国切り取り関連の文を書いて届けさせる事を優先した。


天正十八年(1590年)十月一日

播磨国 黒田家屋敷


「殿!織田内府様からの文です!」


信忠が急いで文を書いて家臣を急がせたからなのか、10日程で、黒田家に文が届く。届いた文を官兵衛が読み出す


「どれ。「黒田官兵衛へ。織田内府じゃが、いきなり文が来て驚かせて申し訳ない!文を出した理由じゃが、


甲斐国で働いておる柴田六三郎が、播磨国切り取りの事を気にしておるのでな。そろそろ、六三郎の父である越前守権六も含めて、調略を開始して、駄目なら戦に突入する事について話し合って欲しいと思ってな


同じ内容の文を柴田家にも出しておる。頃合いを見て、柴田家と話し合ってもらいたい。切り取りを始めてからで良いから、時々は報告してくれ」との事じゃが」


文を読み終えた官兵衛は


「いよいよ始まるか。何とも心が踊る様じゃ!越前守様は、六三郎殿の様な鬼手は出さぬじゃろうが、それでも播磨国がまとまる時が近い!


恐らく内府様は、我々黒田家が柴田家を与力として支える形を希望しておるじゃろう!そして、それか上手くいったならば、我々黒田家に但馬国一国を与えて、


柴田家に播磨国を丸々一国与える予定じゃろうな。だが、九州での戦で武功を多く挙げたならば、但馬一国に加えて、近場で多少の加増も期待出来よう!


うむ!今のところは、越前守様への文を送って、そこからどの様に動くかを待つとしよう!」


勝家からの連絡を促す為に、文を書く事にした


天正十八年(1590年)十月十日

因幡国 柴田家屋敷


「大殿!内府様からの文です!何やら二通あります」


黒田家に文が届いてから、更に10日後。柴田家にも文が届く。信忠の優しさで、柴田家には六三郎からの文も届けられる


文を受け取った勝家は、信忠の文から読み出すと


「どれ。「権六へ、いきなりの文で驚いたじゃろうが、甲斐国で働く六三郎が播磨国切り取りを気にしておる様で、儂に文を届けて来た


その事で、お主と黒田官兵衛に文を届けたのじゃが、この文と同じ内容の文を黒田官兵衛も読んでおるじゃろう。なので、お互いに頃合いを見て、


播磨国切り取りの調略を開始して、駄目なら戦に突入する事について話し合って欲しいと思ってな


切り取りを開始してからでも良いが、時々は報告をしてくれ」との事じゃが、やはりと言うか、六三郎は儂を休ませぬな。まあ、これも仕方ないのう。どれ、もうひとつの文は」


半分諦めた口調になる。そして、次に六三郎からの文を読み出す


「どの様な内容じゃ、「父上へ。六三郎ですが、健康に気をつけておりますか。まだまだ長生きしてくだされ。改めて本題に入りますが、殿か大殿からの文で知っているでしょう、播磨国切り取りについてです


拙者は甲斐国でのお役目があるので、参戦出来ませぬので、不本意ながら、父上に代理をお願いしたく!!そして、黒田家と共に行なう播磨国切り取りについて


拙者からお願いしたい事がひとつございます。それは、前田慶次郎殿を与力として、前田家からお借り出来ないか?です。現在、父上の元に居る軍勢と、


黒田家の軍勢は、合わせて一万三千くらいは居ると思われますが、数年前に慶次郎殿と知り合い、半分蟄居状態になってしまったお詫びも兼ねて、慶次郎殿を


お借り出来ないかを、前田様へ確認の程、お願いします!それから、これは個人的な報告ですが、側室の雷花が出産しました。姫で名前は六花と名付けました


それから、同じ側室で、明智様の娘の花江もやや子を授かりました。年明けぐらいに産まれる予定です


明智様に、伝えていただきたく!よろしくお願いします」と、あるが、市よ。とても嬉しそうじゃな」


文を読み終えた勝家は、側に居た市に話を振ると、市は


「権六様、六三郎と雷花の娘ですよ!間違いなく、見目麗しい姫になります!早く見せてもらいたいですねえ!しかも、明智殿の娘の花江もやや子を授かるとは


なんだかんだで、しっかり子作りをしていて安心しました!しかし、六三郎の娘ですから、生半可な男児に嫁がせる等、もっての外です!


権六様、家臣の方々にこの話をしても構いませんが、六花を嫁に出す話を安請け合いしてはいけませんよ?」


勝家に「孫娘の嫁ぎ先は吟味しますからね!」と釘を刺す。市の迫力に勝家は


「分かった分かった。その様にするから。とりあえず、孫娘の事は市に任せるとして、黒田殿と、又左に文を書くとしよう」


六花の事は、市に丸投げすると決めて、播磨国切り取りの事に着手する事にした。

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― 新着の感想 ―
甚九郎よ、なぜそこまで行ってあと一歩ができないのか…。 勝家と官兵衛が同じ戦場に立つとか、武力と知力の二本立てで相手からしたらたまったもんじゃないなw 実際六三郎の子供って、相当な影響力持ちそうだし…
母は強い。だがそれ以上に祖母は強い。ソースは於大の方
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