里見家の使者一行の後に佐竹家の使者一行が来る!
新之助さんの案内で、里見家一行が大広間に到着しました。人数は10名という、多いのか少ないのか、何とも言い難い人数です。そんな事を考えていると、
使者一行の代表者らしき若者が、
「武田家の皆様、此度は里見家の無理難題を聞いていただき、感謝しております!」
と、言いながら虎次郎くん、五郎さん、典厩様に平伏していた。そして、一通りのやり取りを終えると、俺の方へ向き直り
「あなた様が、柴田播磨守様ですな?拙者、里見従五位下安房守の嫡男で、此度名代として参りました、里見太郎と申します!」
自己紹介をして来た。俺も返しておくか
「ご丁寧な挨拶、忝い。織田家家臣の柴田従五位下播磨守六三郎と申します」
と、特に可もなく不可もなしな自己紹介をしたら、里見太郎さん、何故だか
「あの、つかぬ事をお聞きしますが、もしや柴田様は、元服前に初陣を経験しただけでなく、見事な軍略の才で、
数にも質にも劣る味方を勝利に導き、「柴田の神童」と呼ばれていた、ご本人で間違いありませぬか?」
と、興奮しながら俺の初陣の話を聞くして来た。俺としては、あまり話したくはないが、本題に入る為だ、仕方ない
「幼い、戦をまったく知らない小童だった頃の恥ずかしい話です」
と、伝えると里見さんは
「何を仰るのですか!元服前なのですから、逃げても罰せられる事も無いのに、逃げずに戦った事自体、立派なのですぞ!
それなのにも関わらず、味方を勝利に導くなど、正しく神童と呼ぶに相応しいではありませぬか!父上も、元服前の拙者に常日頃、
「数と質で相手に負けていると言えど、戦で負ける事が決まったわけではない事は、
「柴田の神童」と呼ばれていた若武者の初陣で示されておる!だから、お主も戦場では、知恵を使い、そして、領民が協力したくなる主君になれ!」と、
言われておりました!その、ご本人にお会い出来るとは!父上にこの役目を託してもらい、誠に感謝しております!」
と、更に興奮してしまった。これは、さっさと本題に入らないと長くなるな。多少強引になるが、仕方ない
「里見殿。拙者の昔話を聞きに来たのでは無いのであれば、本題に入っていただきたいのですが」
俺が強引に本題に入らせると、里見さんは
「これは申し訳ない!里見家の使者として、柴田様の元へ来た理由ですが、柴田様を通じて織田家への臣従を願い出る為にございます!
こちら、父上から臣従の申し出と、幾許かの条件を書いた文でございます!若くして織田家の重臣として仕えております柴田様のお力添えで、里見家の臣従と領地安堵をお願いします!」
親父さんからの文を渡して、平伏して来た。俺がどうこう出来る話じゃないんだけどなあ。でもまあ、やるだけの事はやるか
「里見殿、文とお気持ちは受け取りますが、織田家としては、臣従を申し出る場合、戦を含めた何かしらで働きを求めます。その働きが何になるかは分かりませんが、準備はしておく様に、お父上にお伝えくだされ」
俺の言葉に里見さんは
「ははっ!戦場が関東になるのか、奥州になるのかは分かりませんが、どちらになっても里見家は働きます!」
と、力強く宣言して、そのまま帰って行った。いやあ、エネルギッシュな若者だったなあ!俺が親父に家督寄越せ!と言った時は、もう少し落ち着いていたと思うが、
里見さんくらいのエネルギッシュさが、きっと普通なんだろな。まあ、こんなのは、そうそう無いよな?とりあえず、安土城へ口添えの文と一緒に、親父さんの文を届けさせるか
六三郎は、そう思い立つと、部屋へ戻り文を書く。書き終えると、家臣へ渡して安土城へ走らせた。それを確認してから、自らは農作業へ向かった
天正十八年(1590年)五月十八日
甲斐国 躑躅ヶ崎館
「武田家の皆様、そして柴田播磨守様!我々佐竹家の無茶を聞いていただき、誠に感謝します!
拙者、佐竹従五位下常陸介の嫡男で、名代を務めます佐竹次郎と申します!柴田の鬼若子と呼ばれる程の凄まじい戦の話は東国にも伝わっております!一度、お会いしたいと思っておりました!」
皆さんおはようございます。数日前に、安房国の里見家の使者一行が来て、臣従の申し出をしてきた事で驚いて疲れていたのにも関わらず、
今度は常陸国の佐竹家からの使者が来て、驚いております柴田六三郎です。この流れは、里見家と同じく、臣従の申し出の可能性が高いでしょうが、何故か
里見家の太郎さんも、佐竹家の次郎さんも、俺の戦の話をしてくるんだ?俺は基本的に戦の話を、誰かしらに細かく話した記憶は無いのだが?
まあ、俺の事は良いか。ただ、佐竹さんの興奮度合は、止めないと本題に入れないから、落ち着いてもらおう
「佐竹殿。戦の話を聞きに来たわけではないのでは?」
俺の言葉に、佐竹さんは
「そうであった!誠に申し訳ありませぬ!それでは本題に入らせてもらいますが、柴田播磨守様、我々常陸佐竹家、織田家に臣従したく!こちら、父上からの臣従の申し出の文でございます!」
少しだけ落ち着いて、本題に入ってくれました。そこで、親父さんからの文を渡して、帰るかと思ったら
「柴田様!此方に来る時、見慣れぬ農作物が大量に実っているのを見たのですが、あれらは常陸国でも育てて、収穫する事は可能でしょうか?その他にも」
質問攻めが続いて、気がついたら夜になって、更にいつの間に朝になって、やっと帰って行きました
いやあ、若者の体力って凄えな!でも、流石にこれで終わりだろ!うん、そうだ!関東の家が来るのは仕方ないと諦めるが、もう、流石に来ないだらう!そうであってくれ!
※六三郎の希望は却下され、まだまだ事務作業が続きます。




