家康が娘夫婦を休ませると六三郎の元にあの家の使者が
天正十八年(1590年)四月二十日
遠江国 浜松城
「父上!無理を聞いていただき、ありがとうございます!」
「義父上!拙者も督と同じく、ありがとうございます!」
「うむ。まあ、気持ちは分かった。とりあえず小田原から急いできたのじゃろう?少し休め」
「「お心遣い、ありがとうございます!」」
督と氏直が小田原城を出発してから、2ヶ月と少し、家康が指摘した様に、2人はかなり無理をした様で、浜松城に早めに到着した。
しかし、顔はかなり疲れていたので、家康が休む様に命じて、2人は言われた通りに休む事にした
2人が大広間から出ていくと、家康は
「のう、小五郎。母上を甲斐国へ行かせたのは、間違いだったかのう?於義伊と六三郎殿が居るから大丈夫だと思っておったのじゃが、まさか督と婿殿が来るとは思わなかったぞ」
2人が浜松城に来る事を予想していなかった様で、側に居る酒井忠次に本音をこぼしていた。家康の本音に忠次は
「殿、色々と思うところはあるかもしれませぬが、督姫様と左京殿を安土城に連れて行って、右府様と内府様との話し合いに参加させては、
於大様が武田家の世話になる期間が長引くので、拙者としては、お二人を今からでも甲斐国に行かせた方が良いかと思いますが」
家康にこれからの提案をする。忠次の提案に家康は
「儂もそう思う。だが、母上は文の中で二人に対し、三郎殿に頭を下げて来い。と、言われておるからのう。そこをどうするか。それが問題じゃ」
2人を安土城へ連れて行くのか、それとも甲斐国へ行かせるのかで悩んでいた。悩みに悩んだ家康の出した答えは
「督を、儂の文を持たせて甲斐国へ行かせて、婿殿は儂と共に安土城へ行ってもらおうと思う。督が側に居た方が、新次郎も心が落ち着くじゃろうし、婿殿は三郎殿と話し合い、臣従するかを考えてもらおう」
二人を離して、それぞれの役割を持たせよう。だった。それを聞いた忠次は、
「殿が御決断したのですから、拙者達は従います」
家康の決断を後押しした。家康は
「明日、二人にこの事を伝えるとしよう。今日はゆっくり休ませてやれ」
「ははっ!」
2人を休ませて、明日にでも伝える事を決めた。
徳川家がそんな状況になっている頃、甲斐国に居る六三郎の元に、面倒事確定の文が届いていた
天正十八年(1590年)五月五日
甲斐国 躑躅ヶ崎館
「六三郎殿、新次郎殿の父方の祖父である北条相模守殿から、六三郎殿宛の文が届きましたぞ」
皆さんおはようございます。今日も農作業に行こうとしたら、虎次郎くんから、「北条相模守から名指しの文が届いたよ」と言われました柴田六三郎です
新次郎くんが世話になっているのは武田家なんだから、俺じゃなくて、武田家と北条家だけで文のやり取りをして欲しいのですが。まあ、武田家の皆さんに変な感じに思われたくないので、とりあえず読みましょう
「とりあえず読んでみます。では、「柴田播磨守殿、いきなりの文、驚かせて申し訳ない。そちらで世話になっておる新次郎の祖父の、北条相模守じゃ。
武田家当主の虎次郎殿からの文で、播磨守殿の家臣が新次郎に理財を含めた色々な事を教えている事を知ったのじゃが、
実家に居る時は武芸しかやらなかった新次郎に理財を教えてくれた事、誠に感謝します。そこで、勝手ながら、もしも新次郎が解放された時は、
期間限定でも構わないので、播磨守殿と家臣一同を北条家に客将として来ていただきたく。そこで、新次郎を含めた孫達に理財を含めた色々な事を教えてもらいたい!
勿論、北条家として、何もしないわけではない!新次郎が窃盗を働いた畑の手直しを含めて、武田家が現在やっている事への応援の人員を手配したいと思う
武田家当主の虎次郎殿と、織田家当主の内府殿と相談して、決めたくだされ」と、ありますが。虎次郎様、武田家の復興を手伝うと言っておりますが、
如何なさいますか?拙者としては、この文を殿と大殿へ渡した方が早いと思いますが」
俺の言葉に虎次郎くんは
「拙者もそれが早いと思います。悔しいですが、六三郎殿が甲斐国を離れる事は、復興が遅くなる事に繋がります。なので、内府様と右府様に判断をいただきましょう」
俺と同じ考えだった。なので、
「では、この文を安土城へ届けさせます」
家臣に渡して、安土城へ走らせた。これで、とりあえず面倒事は無くなりました筈ですので、それじゃあ農作業に行きますか
と、思っていたら
「虎次郎様!」
新左衛門の弟の新之助さんが慌てて走って来た。何か重要案件かなと思っていたら、
「あ、あ、安房国の殆どを治めている、里見家の使者が、六三郎殿にお会いしたいと、来ております!」
まさかの武田家じゃなく、俺に用事があるとの事です。どうしようかと思っていたら、虎次郎くんが
「まったく、武田家もそうじゃが、里見家も、何故に源氏の血筋は、考えるよりも前に行動するのかのう。新之助、儂達の目の前でならば、六三郎殿に会う事を許すと伝えてまいれ!」
少し、不機嫌な感じで、新之助さんにそう命令する。命令を受けた新之助さんは
「ははっ!伝えてまいります!」
里見家の元へ走って行った。これは、精神的に疲れる仕事なんだろうな。そんな予感がします
※六三郎の予感はフラグです。




