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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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近場だがらこそ人と情報の到着が早く

天正十八年(1590年)一月二十五日

相模国 小田原城


「左京様!その情報、誠なのですか?」


「うむ。風魔の者達は、新次郎が牢屋暮らしではなくなり、武田家の屋敷内限定ではあるが、自由に動いているとの事じゃ」


「良かった。他に情報は無いのですか?ちゃんと食べさせてもらっているのですか?」


新次郎が捕縛されてから、3ヶ月目。小田原城では父親の氏直が母親の督姫に、新次郎の現状報告をしている。新次郎の情報を聞いた督姫は喜んだが、次の情報を聞いて、その喜びが消えてしまう


「それとじゃが、督よ。新次郎を見ていた風魔からの情報で、武田家の屋敷に督の祖母の於大様が宿泊しておるそうじゃ」


「は?えっ?祖母様が、武田家に?そ、その理由は何故ですか?風魔の者から、何と言われたのですか?」


慌てる督姫に氏直は


「唇を出来るかぎり読もうとしたそうじゃが、距離が遠過ぎて、全てを読めなかったそうじゃが、於大様が新次郎に何かを言った後に、


新次郎が武田家の満面に対して、頭を下げていたそうじゃ。まあ、恐らくは此度の事で叱責されたのじゃろう。新次郎には良い薬じゃ


それに、於大様が側に居られるならば、新次郎が処刑される事も無かろう、これで、督も少しは安心して、督?」


宥める様に、督姫に話しかけるが、督姫は


「左京様!そんな悠長な事を言ってられません!祖母様が動くという事は、父上が此度の事を織田家と話し合っているという証拠です!


過去にも祖母様が動いた事がありました!それは、三郎兄上が母上と義姉上と共に、美濃国へ避難していた時の話です!兄上と義姉上が家臣達の嫁取りの為に、


世話になっていた柴田家に銭を出させて、大々的な見合いを開催したと!それを母上も止めなかっただけでなく、


かかった銭をそれぞれの実家に頼んだので、両家から使者が来て、お叱りになったそうです!その時に徳川家側の使者が、祖母様だったそうです」


過去に於大が動いた話をする。話を聞いた氏直は


「督、それならば、そのまま於大様に新次郎を任せても良いのではないか?」


しばらく新次郎を於大に任せようと提案する。しかし、督姫は


「それは私も考えました。ですが、そのままにしたらしたで、今度は私達をお叱りに来るかもしれません!


それこそ、祖母様は私が北条家に嫁ぐ前、こう言っておりました。


「於義伊や於古都の様に、訳ありでも分け隔てなく接してくれる、柴田六三郎殿の様な殿方に嫁ぎなさい」と。祖母様の事です!分け隔てなく接しているのか?


や、ちゃんと武家の男児らしい振る舞いをさせているのか?等、細かい所まで聞いてくるに違いありません!


でも、新次郎の事も心配ですし、ど、ど、どうしたら」


於大の怖さで軽いパニックになっていた。息子夫婦の状況に、氏政から


「二人共、その様に考えるくらいならば、一度、武田家へ文を出してからにしてはどうじゃ?」


との提案がなされた。その提案に氏直は


「文ですか。確かに、文ならば於大様に会わずに済みますが、督よ。父上の提案通り、武田家へ文を送ってみぬか?」


すんなり受け入れ、督姫は


「そう、ですね。一度、文を送ってみましょうか」


悩みながらも、氏政の提案を受け入れた。そして、代表して氏直が文を書く。10分程で書き終えると


「それでは、この文を武田家へ。間違っても、甲斐国で暴れてはならぬ!そこを忘れるでないぞ?」


「ははっ!それでは、文を届けてまいります」


側に居た家臣に文を託した。勿論、この家臣は風魔の者である。その風魔の者は獣道を走り抜けながら、通常の半分程の日数で甲斐国へ入ると、領民に扮している


風魔の仲間に文を託した。文を託された風魔の者は、何食わぬ顔で、武田家家臣へ文を渡す。そして、その文が虎次郎の元へ届く


天正十八年(1590年)二月一日

甲斐国 躑躅ヶ崎館


「虎次郎様!北条家からの文は、どの様な内容なのですか?」


「まさか、新次郎殿を返せとの内容ですか?」


五郎と典厩の質問に虎次郎は


「いえ、新次郎殿はちゃんと飯を食っているのか、病に罹ってないか。等の気遣う内容じゃ。そして、此度の事を詫びておる。まあ、堂々と甲斐国へ来られないから、せめて文だけでもと言った所でしょうな」


と、文の内容を大まかに2人に伝える。伝えられた2人は、


「文の内容だけならば、戦に発展する可能性は低そうですな」


「まあ、北条家からしたら、当主夫婦や先代が甲斐国に来るのは、良くないと判断したのでしょう」


と、安心したり、納得していた。しかし、側に居た於大は


「虎次郎殿、五郎殿、典厩殿。北条家への返事の文を書くのであれば、私にも少しばかり書かせてもらえませんか?」


背筋が凍える様な声で、文を書かせてくれとリクエストして来た。於大の迫力に負けた虎次郎は


「は、はい!それでは、拙者から書きますので、於大様、書く準備をしておいてください」


そう答えるのが、やっとだった。そして、虎次郎が書き終えて、於大の元に紙が行くと、スラスラと書いていき、あっという間に書き終えて


「ありがとうございます。これで、督や婿殿が動く筈です」


笑顔でそう言い切る。虎次郎はその笑顔にビビりながら、側に居た家臣に


「これを北条家へ届けてくれ!出来る限り早く!」


「ははっ!」


文を託すと、虎次郎も五郎も典厩も、於大の行動に、自身が怒られているわけではないのに、背中を冷や汗が流れていた

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― 新着の感想 ―
於大様に怒られるのは避けられないのに変に小細工するから…w
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