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親父達の宴会と肩身の狭い嫡男様!

この作品はフィクションです。史実と違いますので、その点、ご理解ご了承ください。

「遅くなって申し訳ありませぬ」


俺達は村から借りた荷車に解体された猪を乗せて、やっと屋敷に着いた。奇妙丸様達に荷車を引かせる訳にも行かないので、俺と犬千代殿と市松と夜叉丸の四人で頑張って引いて親父達に声を掛けて、俺の意識は完全に無くなった


〜〜信長達目線〜〜


「着いた様じゃな。権六よ、出迎えてやれ。それと労いの言葉も掛けてやれ」


「はは」


信長に言われて勝家は正門まで向かった。すると、「若様!若様!!誰か殿を!早く!!」と言う叫び声が聞こえたので、慌てて走った


「何事じゃ?」


「若様が荷車を私達に渡したら、突然倒れたのです」


「何?吉六郎!吉六郎!!おい、返事をせんか!!吉六郎!吉六郎!!」


勝家の大声に信長達が正門に集合する


「権六、如何した?」


「殿、倅が荷車を渡したら、倒れたのです。吉六郎!返事をせんか!殿の御前なのだぞ。吉六郎!!」


「待て、権六。落ち着いて確認せよ。まず、出血はしておらぬか?」


「は、はい。出血は••しておりませぬ」


「ならば、次は呼吸の確認をせよ」


「は、はい。呼吸はしております」


「ならば、疲れ果てて気を失ったのであろう。寝かせておけば、明日にでも目覚めよう。今日は寝かせてやれ」


「ははっ!倅を寝床に連れて行くので、暫し席を外します」


勝家が吉六郎を背負って歩き出した直後だった


「ドサドサドサ」


荷車を一緒に引いていた犬千代、市松、夜叉丸の三人が同時に倒れた


「犬千代!」


「市松!夜叉丸!」


犬千代の父の利家、市松と夜叉丸の主君の秀吉がそれぞれ寄り添う。そして、勝家が吉六郎にやった様に確認をした、すると


「「良かった、死んでない」」


「恐らく三人も疲れ果てて気を失ったのであろう。権六よ済まぬが、この三人も寝かせてやってくれ」


「ははっ!又左、藤吉郎。ついてまいれ」


「はは」


「小一郎、お前は夜叉丸を頼む。儂は市松を持つ」


「分かりました」


こうして、四人は同じ部屋に置かれて、深い眠りについた


「遅くなって申し訳ありませぬ。四人は置いて来ました」


「うむ。今しがた、つる殿の料理のひとつが出来た。先ずは、これを肴に呑むとしよう。皆、盃は持ったな!では、乾杯」


信長の挨拶と同時に宴会が始まった


「うむ。この味噌を纏わせた状態で焼いた猪の肉がまことに美味い!権六よ。お主は幸せ者よな。この様な美味い飯を毎日喰えるのだから」


「ありがたきお言葉にございます。倅から「台所の食材が少なくなって来たので、山に入って取って来て良いか?」と聞かれた時は、野鳥でも取って来て飯の足しにするかと思っていたのですが、よもや領内の村人の協力を得て猪や鹿を退治していたとは」


「いつも猪退治の後は此度の様に疲れ果てておるのか?」


「いえ、いつもは村人に先触れを出して十日程かけて入念に準備をするのですが、そこまで疲れる事は無いのですが、今日に限っては何故か即座に猪退治に出たのです。理由を聞こうと思ったのですが、あの様に寝ているので•••やはり叩き起こして聞いてまいります」


「待て待て!そこまでせずとも良い。つる殿なら何か知っているのではないか?呼んでみよ」


「ははっ」


勝家は家臣を使い、つるを広間に呼びつけた。程なくして、つるが到着すると、信長が質問した


「料理の最中に済まぬな、つる殿。聞きたい事があるのだ。権六から聞いたが、吉六郎は普段は準備を入念にしてから猪退治に行くそうじゃが、此度は何故、即猪退治に行ったか知っていたら、教えていただきたい」


「はい。その事ですが、関係者の皆様が揃っているので、言い難いのですが•••」


「構わぬ!文句を言う者が居るなら、儂がこの場で切り捨てる。教えてくだされ」


「はい。最初は前田様が殿を連れて清洲に行った後でした。「父上は前田様の他にも連れて帰ってくる筈だから、多目に飯を作ってくれ」と。私達もそう大人数が来るに違いないと思い、料理を作り準備しておりました。

すると、最初に前田様の嫡男の犬千代様が若様に修練を共にすると言う事で来訪しまして、修練を終えた後、食事をお出ししたのてすが、


その後に大殿様の嫡男様が共の方々を連れて修練を共に行う目的で来訪したのですが、若様が「昼食を食べていただいてから、修練を行いましょう」と嫡男様に提案して、了承された様なので、


食事を人数分お出ししまして、料理の量が心配になって来た時に、木下様の家臣の方々が来訪しまして、若様が「若い二人には特に多く喰わせてくだされ」と言って来たのですが、


私達は「若様の食事がありませぬし、殿達にもお出しする食材が無くなります」と伝えたのです。しかし若様は、


「父上がこの場に居たら、儂は要らぬ!客人に喰わせよ。吉六郎。お主も我慢せよ!と言うでしょう」と仰りました。その後若様は、


「今から猪退治に行って肉を持ってくるので、料理を作る準備をしておいてくれ」とその後は皆様のご覧になったとおりでございます」


「そうか。つる殿。教えていただき忝い。戻って構わぬぞ」


信長に言われてつるは台所に戻った。つるが居なくなった広間では


「「親父殿!申し訳ありませぬ!!」」


利家と秀吉が勝家に頭を下げていた


「止めんか二人共。殿の御前ではないか」


「拙者の倅が最初に来て、つる殿が作っていた食事を喰ったから、食材が少なくなって、この様な事になったのです。拙者の責任です」


「又左以上に拙者の責任の方が重い筈。小一郎に聞いたら、市松と夜叉丸が吉六郎の前で殴り合いをして、それを見た吉六郎が


「腹が減っているから気が立っているのでしょう。腹ごしらえをしてから、修練をしましょう」と言って屋敷の中に案内して、大量に食事を与えてくれたとの事。その事が原因で食材が少なくなってしまったのです」


「二人共、止めてくれ。別に倅は死んでおらぬ。犬千代も藤吉郎の小姓達も良い修練になった筈じゃ。それに倅が三人を連れて猪退治に行ったのだから、誰に責任があるとかは無しじゃ。それで良いな」


「「な、ならばせめて吉六郎に礼の何かを」」


「それは要らぬ!二人の気持ちだけで充分じゃ。殿の御前なのだからな」


「「はい」」


「殿、お騒がせして申し訳ありませぬ」


「何、大した事では無い。しかし、権六よ。顔が嬉しそうじゃが、此度の吉六郎の働きは心中に来るものがあったか?」


「やはり殿には露見しておりましたか。正直、吉六郎がつるに対して「父上ならこうするだろう。だから自分も父上と同じ事をする」と言っていた事が誠に嬉しく思いまする」


「確かに、そこは倅が自分と同じ考えだと分かると嬉しいな。しかし権六よ。先程、吉六郎が気を失った時の様な優しさも少しは見せても良いのではないか?」


「拙者もそう思う時もあります。しかし、三年前に亡くなった嫁が拙者の手を取ってこう言っていたのです。

「吉六郎を立派な武士にしてくださいませ。そして、私が死んだら新しい嫁をもらってくださいませ」と。

四十を超えて初の我が子、しかも嫡男と言う事もあり、厳しさが和らいでしまう時も有りますが、それでも•••」


勝家が言葉に詰まると、信長がフォローにはいる


「権六よ。辛い事を思い出させて済まぬ。お主が吉六郎を大切に育てている事は充分に分かっておるからな。先程の慌て様は、誠に父親の顔をしておったぞ」


「殿、ありがたきお言葉にございます。失礼ながら、拙者は既に殿の御父上、御先代様が身罷られた歳を超えております。吉六郎が嫁を貰う前に死ぬ訳にはいきませぬ。さりとて、いつ死んでも良い様に厳しく育てる事も必要だからこそ、あの様に接しているのです」


「権六よ。吉六郎は賢き童じゃ。きっとお主の思いも伝わっておるであろう。だからこそ、猪退治では、あの様に先陣を切ったのであろう。良き嫡男に育っていると儂は思うぞ?」


「ありがたきお言葉にございます」


ここまでは宴会も良い雰囲気だった。ここまでは•••

信長がある人物を指名しなければ


「童達は励んだが、奇妙丸!猪退治の時、其方は何をしておった?」


「ええと、その」


「吉六郎達と同じく山中に入り猪を追い立てる事もせず、猿の弟の小一郎の様に柵を踏ん張る役割もせず、皆がお膳立てした止めを刺そうとしたら、暴れる猪に驚いて尻もちをついて、其方に向かって来た猪を吉六郎に止めてもらって、改めて止めを刺しておっただけであったな?!」


「拙者も出来れば先陣に加わりたいところではありました。しかし」


「しかし何じゃ?」


「猪退治をやり慣れている吉六郎に尋ねたら、止めを刺してくだされと言われたので」


「たわけ!!止めを託されたのに一度目に止めを刺せなかったのは、お主の怠慢じゃ。あの猪がもし戦における敵大将であったら、お主は逆に首を取られていたのかもしれぬのだぞ!?」


「•••」


「それに、お主が先触れも出さずに来訪したから、此度の猪退治せざるを得ない状況になったのだぞ。分かっておるのか?」


「はい」


「次、猪退治に参加する時までに武芸を再度磨いておけ。そして、家臣の家に行く時は先触れを出しておけ!分かったか」


「肝に命じます」


「ならば、吉六郎達や村人に感謝しながら食せ」


「ははっ」


こうして、奇妙丸が肩身の狭い思いをしながら宴会は終わった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 蝮さんとか子たぬきやら真面目鉄砲(明智さん)はそのうち出ますか?
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