本格始動の武田家とボロ儲けの織田家
天正十六年(1588年)三月二十二日
甲斐国 某所
「それでは、今日から我々は甲斐国の中央に座する盆地を埋め立てながら、川沿いの植物を焼いていきます!各々方!少しずつしか出来ませぬが、ひとつずつ進めていきましょう!」
「「「「おおお!」」」」
皆さんおはようございます。今日から埋め立て工事の本格始動の陣頭指揮を取ります柴田六三郎です。いやあ、甲府盆地の広さが凄まじいですね!
前世で見た地理の本とかでは確か、甲府盆地の面積は、375平方キロメートルだったと、なんとなくの内容を覚えているのですが、それだけの免責を埋め立てる土が甲斐国に有るとは思えないので、
先ずは、周辺の山から土を集めつつ、少なくなって来たら、安土城の殿達へ、「土をください!」と、何度目かのお願いをする事になりますが、こればかりは仕方ありません
甲斐国の国土復興が終わってから、武田家の財政改善がスタートするわけですから、その為に国土復興を早く終わる様に働くしかありません。あ、ちなみにですが、
五郎さんと雪の事が解決した事、その中で新十郎くんが嫁をゲットした事を書いた文を、作業開始前に安土城へ送りました。まあ、喜ぶでしょう
「殿!始めてもよろしいでしょうか?」
そんな事を考えていたら、源太郎から作業開始を求める声が聞こえてきましたので、
「うむ。始めよ!確実に固めて、埋め立てを完成させてから、進めて行く様に!」
作業方針を伝えて、スタートです
こうして、甲斐国の国土復興の最重要課題である、甲府盆地の埋め立てがスタートした。一方、その頃の織田家はというと
天正十六年(1588年)五月三十日
近江国 安土城
「殿!甲斐国の柴田様からの文です」
「ほう。六三郎め、何か進捗があった様じゃな。父上にも伝えたい!呼んで来てくれ!」
「ははっ!」
信忠からの命令を受けた家臣が、信長を呼びに行っている間に信忠は
「さて!津田殿と田中殿!此度は、安芸乃が書いた書物の初月の売り上げを持って来たとの事じゃが、どれくらいになったのか、教えていただこうか」
「「ははっ!こちらです」」
安芸乃が書いた恋愛小説の売り上げを持って来た、津田と田中に命令すると、2人はそれぞれ、「パンパン」と手を叩く。すると、大きな箱を2人1組で運んで来る
それが2箱有り、大広間に運び終えると、津田が
「此方の箱は、堺での売り上げです」
と、言い、田中は
「此方の箱は、洛中での売り上げです」
と、言う。それを信忠が呆気に取られて見ていると、
「それが、安芸乃の書物の売り上げか!」
信長がタイミング良く登場する。信長の登場で、元に戻った信忠は
「それでは、それぞれの売り上げを教えてもらおう。先ずは、堺での売り上げからじゃ」
津田に売り上げを聞くと、津田は
「はい。堺での売り上げは七貫になります」
七貫、現代換算でおよそ105万円を売り上げたと発表した。それを聞いた信忠は
「それは、かなり売れたのじゃな。あまり期待してなかったのにも関わらず、予想以上の売れ行きじゃな」
思わず、本音を漏らす。そんな信忠に対して津田は
「左中将様、この七貫は、我々納屋衆の取り分を除いた七貫ですので、実際の売り上げは十貫ですぞ」
自分達の取り分を含めたら十貫も売り上げた。と伝える
「それ程か!僅か一ヶ月程で、それ程の売り上げを叩き出すとは」
それを聞いた信忠は再度、驚く。そんな信忠に対して信長が
「勘九郎!洛中の売り上げも聞かないといかぬぞ?驚く事は分かるが、田中の話も聞かぬか」
信忠に喝を入れると、信忠は
「そうであった。改めて、田中殿。洛中での売り上げを教えていただこうか」
「はい。洛中での売り上げですが、十五貫です。勿論、我々の取り分の三貫を除いて十五貫です」
田中に売り上げを聞くと、堺を超える十五貫、自分達の取り分を含めたら十八貫も売り上げた事を伝えられ、
「何とも見事な。やはり、買っていくのは女子が多いのか?」
「堺では、意外と男も買っていきますぞ。特に人気なのが、伊勢守様のお話です。伊勢守様が少しずつ成長していく姿に、自らを重ねていく若者が多い様ですな」
「洛中では、左中将様のお話と讃岐守様のお話の人気が拮抗しております。ですが、どちらの書物も、買ってから神戸家の美味い物を食べながら、
じっくりと読む事が、流行りになっていると、派遣させている手の者が教えてくれました」
田中の言葉に信長は
「成程、だから、ここ最近の神戸家の売り上げが非常に増えておったのか。しかし、一冊の値を三十匁に設定したのに、良くぞそこまで売れたのう」
一冊、およそ900円くらいのまあまあな値段で売り上げていたのに、堺と洛中の合計でおよそ420万円も売り上げた事に驚いていた。そんな信長に津田は
「内府様。やはり、堺も洛中も織田家のおかげで、平和になって来ているからこそ、娯楽を欲しているのです」
と、説明する。続けて田中も
「それこそ、安芸乃様が仰っていた、全ての話を能の様に、芝居として形に出来たら、更に売り上げは増えると思われますぞ」
安芸乃の書物を舞台化、現代で言う実写化にしたら、更に売り上げが増えると押す。それを聞いた信長は
「うむ。それも良い考えじゃ。安芸乃と話してみよう。それでは、そろそろ甲斐国への支援と現地へ行く準備に取り掛かってくれ」
「「ははっ!それでは失礼します」」
2人に甲斐国への準備を促して、帰らせた。2人の足音が聞こえなくなった大広間では信長と信忠の2人が
「はっはっは!勘九郎!安芸乃の文才は見事!いや、見事過ぎるな!」
「まったくですな!これ程の儲けを出してくれるとは!それでは父上、二十二貫の内、安芸乃の実家の毛利家に送るのは、九貫でよろしいでしょうか?」
「そうじゃな!近々、安芸乃を呼んで、その事を伝えるとしよう!そう言えば勘九郎よ!お主、六三郎からの文が届いたと儂を呼んだのであれば、その内容を教えんか」
「申し訳ありませぬ。それでは、中を見でみましょう」
信忠はそう言いながら、文を開いて目を通すと
「はっはっは!父上!また、六三郎が面白い事をやってのけましたぞ!見てくだされ!
そう言いながら、信長へ文を渡す。信長も目を通すと
「はっはっは!これは、半介に伝えねばなるまい!急いで、半介を呼んでまいれ!」
信長に言われた家臣は、急いで呼びに動く。信長と信忠は、
「半介はどの様に反応するかのう?」
「きっと、驚きで固まってしまうかもしれませぬぞ?」
信盛の反応を予想しながら、到着を今か今かと待っていた。