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提案するのは俺だけじゃない

天正十五年(1587年)七月二十日

甲斐国 躑躅ヶ崎館


「米以外を年貢とする!?六三郎殿、それは甲斐国全域の話なのですか?」


皆さんおはようございます。朝から虎次郎くんに「甲斐国での年貢は米以外で収穫しましょう」と、提案して驚かれております柴田六三郎です


まあ、驚かれるのは想定内です。何故なら、日本人の主食は米ですから、その主食を別の物で補おう。なんて言ったら、驚くし戸惑いますよね


前世でも、日本国内に米が流通してないのにも関わらず、外国に輸出して国民にブチギレされた総理大臣もいたくらいですから。でも、甲斐国の現状を見たら、


米以外も食わないとダメだと理解出来るはずなので、じっくりと説明していきましょう!


「虎次郎様。これは、領民達にしっかり食べてもらう為の提案です。つまりは、領民達が食べる米を増やして、武田家が食べる米を減らして、


今まで以上に、領民達が武田家へ恩義を感じる様にすると同時に、米以外が年貢になる事を周知させるのです。米をしっかり食べた領民達は、


武田家が実施している甲斐国の復興を手伝い、復興の一助となるでしょう。そして、その為の第一歩として、武田家が米以外を食べて範を示すのです」


俺の説明に虎次郎くんは、


「ううむ。六三郎殿、仰っている事は分かるのですが、甲斐国は元々、米の収穫量が少なかったのです。それを、米以外で補うとなると」


分かってはいるけど、米以外の物って何?みたいな事を言っております。なので、


「米以外の物を使った料理を、お出ししますので、しばらくお待ちください」


と言って、残り一工程くらいの料理を3皿分、作り、持って来ましたら、


「何やら長い物が」


「しかし茶色い料理ですな」


「だが、この香りは食欲をそそりますな」


見た目と香りに注目しております。そして、3人のヒントで分かる人は居るでしょう。俺の作った料理は


味噌味の焼きうどんです!米の代わりになりそうな物の代表格はやっぱり麦でしょうし、そこから小麦粉にして、麺にするか、パンにするか。それだけでも


米を領民の皆さんに回せますし、麦は米よりは乾燥に強いですから、甲府盆地を埋め立てても作れる農作物として貴重ですから、それを理解してもらう為に


焼きうどんを作りました。で、焼きうどんを見た3人のうち、虎次郎くんは


「六三郎殿!食べてもよろしいですか?」


早く食べたかった様なので、


「どうぞ。気になるのであれば、どなたかに毒味をさせても構いませぬ」


と一声かけると、


「そんな、六三郎殿が余計な事をするわけが」


と言っておりますが、五郎さんから


「虎次郎様。六三郎殿は何もしないでしょう。ですが、他の家では、そうとはかぎりませぬ。なので、武家の習いの一つとして、毒味をさせましょう、六三郎殿、よろしいですかな?」


他所では余計な事をする奴が出てくるかもしれないから、やっておこう。と言われましたので、


「気にせず、やってくだされ」


そう伝えて、毒味役に選ばれたのは新左衛門の弟の、新之助殿です。その新之助殿は


「それでは、いただきます」


と言って、一口食べる。すると、


「こ、こ、こ、これは何と美味い!いつも味噌汁として飲んでおる味噌の味が、いつもと違う味に感じる!この野菜も、獣肉も!何とも言えない美味さ!」


そう言うと、気づいた時には完食しておりました。で、その様子を見ていた虎次郎くんは


「叔父上達。あの様子ならば、大丈夫ですな?いただきましょう」


そう言いながら焼きうどんを食べる。そして、


「六三郎殿!誠に美味いです!」


と、喜んでいた。その中で、


「ですが六三郎殿?この長い物は確かに腹に溜まる感じですが、これが米の代わりになる物なのですか?」


と質問してくるので、


「はい。実は、その長い物は麦を粉にした物を水で練った物なのです」


そう説明すると


「これが、麦粉と水だけで」


「麦ならば、米よりも水を必要としない」


「六三郎殿。武士達は麦を多めにして米を少なくし、百姓達は、米を多めにして麦を少なくした食事を進めていく。そう言う事なのですか?」


3人共、色々気づいた様です。なので、俺は


「はい。その通りです。そして、勝手ながら前月に安土城の殿と大殿へ、麦や果物を甲斐国で育てる為の種の要求と、そして虎次郎様が了承したのであれば、


安土城へ行き、米以外も年貢とする事の了承を殿達からいただく事をお願いします」


3人に頭を下げて、お願いする。そんな俺に虎次郎くんが


「分かりました。六三郎殿。どうせならば、安土城へ行くと同時に、甲斐国で育てられる農作物の種を堺で見つけましょう。堺は交易の中心地ですから、


南蛮由来で、甲斐国でも育てられる物があるかもしれませぬ。叔父上達、よろしいですな?」


「見聞を広められそうですから」


「まあ、よしとしましょう」


堺に行きたい。とリクエストして、2人も了承した。で、勿論、俺に


「六三郎殿。同行していただきますぞ?」


と、予想通りのリクエストが来た。言い出したのは俺だからね、勿論


「勿論です。無理を聞いていただき、忝い」


そう答える。で、虎次郎くんから


「六三郎殿。これは拙者の提案なのじゃが、殿と大殿に会う際、甲斐国の現状を伝える為の大まかな地図、


それこそ、米を作る事が出来る場所と、出来ない場所を分ける地図、その地図の中に泥かぶれに罹る者が多い地域、少ない地域を重ね合わせる。と言った事を、


安土城へ出立する前に、作り、殿や大殿へ見ていただきたいのじゃが、可能でしょうか?」


俺に無茶振りのリクエストが来ました


「可能とは思いますが、2ヶ月程いただきたく」


期間を長めに取りたい事を伝えたら


「それで構いませぬ。よろしくお願いします」


と、了承されました。それじゃあ、将来の義弟の為に簡単な地図製作作業をスタートしますか!

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― 新着の感想 ―
「飢えることなく飯が食える」と「お武家様は米を食わずに麦を主食としている」の2本立てで恩を感じさせておけば、泥かぶれ対策と合わせて評価されるだろうなぁ…。 ご当地料理の幅も広がりそうでなによりですな…
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