重要な事は家族を交えて
天正十五年(1587年)六月二十一日
甲斐国 躑躅ヶ崎館
「殿、我々は何故、呼ばれたのでしょうか?」
「しかも、典厩様までご一緒とは」
「何かありましたでしょうか?」
皆さんおはようございます。朝も早い時間から、山県家の3兄弟を呼び出しました柴田六三郎です
3人を呼び出した理由ですが、まあ、雪の事なんですが、やっぱり妹が嫁入りするとなると、兄貴達にも頑張ってもらおうと、典厩様と話し合って決めました
「うむ。実はな、お主達の妹の雪が安土城から来ておるのじゃ」
「ええ?」
「殿、何か理由があるのでしょうか?」
「まさか、雪の奴、松姫様から放逐されたのですか?」
3人共、良いリアクションをしておりますね。ですが、勘違いさせたままなのは、よろしくないので
「源四郎、佐兵衛、三郎右衛門。雪は放逐されたわけではないから、安心せよ」
「それならば安心ですが。では、何故、雪は甲斐国へ?」
「うむ。実はな、松姫様たっての願いでな、武田家の復興の手伝いで甲斐国へ来たのじゃ」
「松姫様の願いですか。雪がそんな大役を」
「これまで雪が松姫様の侍女として、しっかりと働いて来た結果じゃ。それに、この事は殿と大殿も了承しておる」
「左中将様と内府様も」
「まあ、そういう事じゃ。ただ、松姫様と殿の信頼が厚い雪だからこそ、畿内で不憫な目にあっておったそうじゃ」
「ど、どの様な事が」
「うむ。松姫様と殿が、雪の為に嫁入り候補の者を複数人、紹介していたそうじゃが、紹介された者は全員、雪ではなく、
雪の後ろに控えておられる松姫様と殿を見て、更には大殿を見ていたそうじゃが、ここ迄言えば、意味が分かるな?」
「雪を政の道具としか見ていない、扱ってない。そんな者ばかりが、雪の相手だったわけですな?」
流石、理解が早いな
「簡潔に言うと、そう言う事じゃ。それで、ここからがお主達3人に伝えないといけない事じゃが」
「「「どの様な事でしょうか?」」」
「実はな、雪から「良き殿方を紹介して欲しい」と頼まれてな」
「「「妹が申し訳ありませぬ」」」
「いや、雪は儂と共に働いた事も含めて、戦友みたいなものじゃ。だから気にせずとも良い。だが、雪の嫁入り先候補として、儂と典厩様が推挙したいお相手が居るのじゃ」
「「「その方は、何方なのですか?」」」
3人の質問に
「五郎殿じゃ」
典厩様が答える。数秒の間が空いたところで
「「「えええっ!」」」
3人同時に驚いたので、本番と行きますか
「3人が驚くのも無理はないじゃろう。だがな、儂としては、仁科様が雪を嫁にもらってくれた方が良いと思うのじゃが、お主達はどうじゃ?」
俺の問いかけに長兄の源四郎が答えるが、
「拙者としても、仁科様が雪を嫁に迎えていただけるのであれば、とてもありがたいのですが」
「雪が五郎さんの嫁になれるか怪しい」みたいな事を言っておりましたので、
「源四郎。その事ならば安心せい。ですな、典厩様?」
「うむ。源四郎殿、五郎殿が雪殿を嫁に迎えるかどうか?と言っておったが。実際は逆じゃ?」
「典厩様、逆と言いますと?」
「うむ。実はな、前日の事なのじゃが、五郎殿と雪殿が会話していた時に、五郎殿が久しぶりに笑顔になっておった。それも顔を真っ赤にしてな
雪殿の顔は見えなかったが、五郎殿は雪殿に悪い感情は持ってないじゃろう。だからこそ、雪殿の嫁入り先に五郎殿を推挙したいのじゃ」
典厩様が「五郎さんなら大丈夫!むしろ雪の方が分からない」
と、伝えてくれました。それを聞いた源四郎達は
「に、仁科様が雪を嫁にもらってくださるのであれば、誠にありがたいお話です!今から、雪にその事を伝えて来てもよろしいでしょうか?」
直ぐに行動に移そうとするが、
「待て待て待て。直ぐに行動するのではなく、仁科様と雪が、お互いを知っていく事からじゃ。思い返してみよ、
雪は出世や栄達の道具にされる事が嫌だからこそ、松姫様と殿と大殿の御三方から、儂に頼んでみよ。と言われて、お役目と共に甲斐国へ来たのじゃぞ?
それならば、仁科様に無理に嫁がせるよりも、少しずつ、お互いの事を知ってもらおうと思う
そこで典厩様にも提案したい事なのですが、雪に特別なお役目として、仁科様の侍女になってもらう。と、言うのは、どうでしょうか?」
俺の提案に典厩様は、
「う〜む。松姫様の侍女である雪殿を五郎殿の侍女にしている事は、織田家に露見したら何か言われてしまうのでは?」
微妙に反対しております。ですが
「典厩様。雪に我々の様な土木作業をさせる方が、織田家から色々言われてしまいます。それに、御三方共、拙者に頼んでみよ。と仰っていたのですから、
拙者が織田家へ、こうしました。と、文で伝えます。今やるべき事は、雪を普通の女子に戻す事です
その為に、畿内の出世争いとは無縁な仁科様のお側で働いてもらって、為人を知ってもらって、嫁入りしても良い様になってもらいましょう」
俺の事細かな説明に
「分かり申した。それならば、六三郎殿のやり方で進めましょう」
納得してくれました。源四郎達は反対しなかったので、それじゃあ、復興作業と並行して、五郎さんと雪のカップル成立の為、頑張りますか!