姫様達を連れて甲斐国へ
天正十五年(1587年)二月十日
越前国 柴田家屋敷
「それでは父上、母上!行って来ます!利兵衛!源四を連れて行くが、理財の指導は負担が増えるかも知れぬが、光三郎達も働かせて、上手くやってくれ」
「はい。殿もお気をつけてくだされ」
「うむ。それでは甲斐国へ出立じゃあ!」
「「「おおお!」」」
皆さんおはようございます。前田家の問題も片付けられたので、安心して甲斐国での仕事に取り掛かる事をが出来て、安心しております柴田六三郎です
いやあ、史実では秀吉から天下の傾奇者と言われる程、格好良いイメージだった前田慶次郎が、あんな自分勝手なお調子者だったとは
違う世界線とはいえ、かなり残念な気持ちです。まあ、そんな前田慶次郎でも、しばらくは大人しくなる筈ですし、俺がとやかく言う事でも無いので、触れませんが
それよりも、これから甲斐国へ移動を開始するのですが、その移動の面々の中に、女性がかなり多いのです
俺の嫁の道乃と雷花と花江さんと高代さんは当然として、光と花と2人の母のつるさんも、まあ分かる
次殿が同行するのもギリ分かる。だけど、
「初。誠に父上と母上は、初が甲斐国に行く事を了承したのか?」
「兄上、屋敷を出る前から何度も話したではありませぬか!父上と母上からも説明しておりましたし」
妹の初が、同行しているのは何故だ?親父とお袋が言うには、そろそろ弥三郎の側に居させてやれ。との事だが、
もしも北条との戦が起きた場合、甲斐国は最前線になる可能性が高い事を知らないわけじゃないのに
でも、まあ、弥三郎も単身赴任で数年働いていたわけだから、流石に。みたいな気持ちもあったんだろうな
仕方ないという事で、そのまま連れて行きましょう。ちなみに、親父から万が一を考えて、柴田家の最大動員兵力2万のうち、三分の一にあたる七千を連れて行け!
と、託されましたが、親父よ。七千の兵力なんて、周りから警戒されると思うのだが?まあ、それだけ初の事が心配という事でもあり、復興作業を早く終わらせろ!
と言う事なんだろうな。早く終われば、弥三郎と初を土佐国へ行かせてやれるし、頑張りますか!
六三郎が甲斐国での仕事を早く終わらせようと決意して、移動する事、2ヶ月半
天正十五年(1587年)四月二十五日
甲斐国 躑躅ヶ崎館
「典厩様。お久しぶりです」
「六三郎殿。虎次郎様と五郎殿から話を聞いておったが、あのまま出陣したとは。誠に忙しいお人ですな」
皆さんこんにちは。越前国の実家から2ヶ月半かけて、甲斐国へ到着しました柴田六三郎です
およそ2年ぶりの甲斐国ですが、既に変化を感じております
今まで流れが緩やかだった川に、川幅と同じ大きさの、コンクリート製ハーフパイプが設置されていて、その結果、流れが分かりやすく早くなっておりました
更には、川沿いに植えられていた植物が全て伐採されておりました。そこら辺の事を聞いてみたら典厩様曰く
「虎次郎様が我々と話し合いを重ねた結果、先ずは泥かぶれにかかった者が少ないところから試しにやってみようとなりまして、信濃国との境からやってみましたら
信濃国から流れて来る水も増えまして、その結果、その周辺の米の収穫量が増えたのです。これは予想外でしたが、嬉しい予想外でした」
信豊の話し合いを聞いた六三郎は
(マジで?そんな嬉しい誤算が起きていたとは。でも、日本住血吸虫の本丸は、甲斐国の中央に広がる甲府盆地だからなあ。
コンクリート製ハーフパイプを作って繋げてを繰り返しながら、甲府盆地に繋げてをやるとなると、最初にやる事、あれだな)
何か考えていた様だった。そんな六三郎を見ていた武田家の面々は小声で
「六三郎殿が何かしら考えておるぞ」
「あの癖が出ておる」
「これは期待して良いかもしれぬぞ」
六三郎が妙案を出すに違いないと期待して、六三郎のハードルを上げていた。それに気づいてない六三郎は
「虎次郎様、仁科様、典厩様。ひとつ提案があるのですが、よろしいでしょうか?」
発表して良いかと質問し、虎次郎から
「是非とも聞かせてくだされ」
と、了承されると
「では。先ず確認したい事として、川に設置しております岩の板についてですが、何処で作っておりますか?」
そう質問する。その質問に盛信が
「今は躑躅ヶ崎館周辺で作っておるが、六三郎殿。何か気になる点でも?」
と、答える。それを聞いた六三郎は
「はい。現在のところ、躑躅ヶ崎館からそこまで遠くない場所に、岩の板を運ぶのであれば、今のままでも問題無いでしょう
ですが、泥かぶれに罹る者を減らす為、根絶する為、輸送時に壊さない為、
甲斐国全域に、岩の板を設置しないといけませぬ。なので、拙者の提案としまして、甲斐国のそれぞれの地域に岩の板を作る者達を置くと同時に、
作る者達が寝泊まりする為の家を作る事、それを出来るかぎりの広い範囲で実施する事を提案したく」
コンクリート製ハーフパイプを作る場所を一ヶ所にせずに、複数箇所で作って、輸送時に壊れるリスクを出来るかぎり減らそう。と提案する
六三郎の提案を聞いた虎次郎、盛信、信豊の3人は
「確かに、六三郎殿の仰る事は分かるのだが」
「今の武田家に、それが出来るだけの数が居ない事が」
「それだけではなく、岩の板の品質も同一に出来るかが」
悩みに悩む。それを見た六三郎は
「皆様。皆様の懸念に関して、家臣の方々の中から、岩の板を上手く作れて、教える事が出来る方を選別しましょう!それならば品質の不安も無くなると思いますが」
家臣の中から、製作チームと、チームのリーダーを務められる人を作って選別しよう。と提案する。その提案を聞いた虎次郎は
「叔父上達!六三郎殿が提案した内容ならば、一部の者に過度な負担がかかる事を減らせるのでは?それに、そこから岩の板を領民が作れる様になれば、
岩の板を作れる人間が増えて、復興もより早く、進むはず!それに、岩の板を作る事に関しては、家中の立場や年齢等は関係ありませぬ!やりましょう!」
六三郎の提案の内容を改善して、提案する。それを聞いた盛信と信豊は
「分かりました。典厩殿」
「五郎殿。仕えて間もない者、先代のお館様の頃から仕えている者、家中の全員でやらせてみよう。幸いな事に、
資材に必要な川の砂は、信濃国との境の川から回収出来るから、試しに作らせる事も可能じゃな」
「では、叔父上達。皆に知らせてくだされ」
「「ははっ!」」
こうして、武田家臣による立場も年齢も不問のコンクリート製作メンバー及びリーダーオーディションがスタートした。