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傾奇者VS 表裏比興の者

何とか前田家の問題は解決したので、俺は、近日中に甲斐国へ行く為の準備をしておく様に、赤備えの皆の元へ行く。すると昌幸さんが


「殿。前田家の問題はどの様に解決したのですか?」


と、聞いて来たので、俺は簡単に内容を話す。そしたら昌幸さんは


「殿。拙者の推測になりますが、件の慶次郎殿。夜闇に紛れて、出奔する可能性が高いかと」


なんて不穏な事を言って来ました。理由を聞いてみるか


「喜兵衛。何故、そう思う?」


昌幸さんは


「はい。話を聞いただけですので、偉そうな事は言えませぬが、嫡男の慶之助殿の事は気にかけているのは、間違いないでしょう。ですが、その実、お調子者の様ですから、


前田様が慶之助殿を前田家中での立場を一番下にしない事、そして最悪、一番下の立場になっても柴田家で預かってくれるだろうと判断し、奥方殿も前田家の一族の出ならば、何もされないと判断して、


自らは出奔して、風来坊の様になると思われます。だからこそ、話がまとまったと安心させて、前田様に酒を勧めていましたら、その可能性はより高くなるかと」


流石、知将であり、史実で表裏比興の者と呼ばれるだけの事はあるだけの事を言って来た。それを聞いた俺としては


「あり得るな。皆!大広間を確認してくる!もしかしたら、今日は夜通し屋敷の周囲を警戒しないといかんぞ!今のうち、休んでおいてくれ!」


「「「ははっ!」」」


赤備えの皆に、一声かけて大広間の様子を隠れて見ていたら、昌幸さんの予想どおり、慶次郎殿は前田様に、ガンガン酒を飲ませていました


これは、うん。出奔計画を練っている事、確定だな。赤備えの皆に残業確定を伝えると


「久しぶりに面白い事になりそうですな!」


「慶次郎殿はどれだけ動けるのか楽しみですな!」


「猪や鹿より、骨がある事を願いましょう」


皆、とても嬉しそうな笑顔になっております。うん、これは慶次郎殿、屋敷の外に出られたとしても、赤備えの皆に追いかけ回される事が確定だな


まあ、仕方ない。やるべき事をやらない慶次郎殿が悪いしな。それじゃあ昌幸さんに聞いてみるか


「喜兵衛!この様な場合は、一ヶ所だけ逃げやすい様に、仕向けた方が良いか?」


昌幸さんの答えは


「そうですなあ。殿の考えた定石通りの策も良いと思いますが、どうせならば、慶次郎殿に少しばかり、お灸をすえるやり方もよろしいかと


それこそ、我々が慶次郎殿を追いかけ回すのではなく、気がついたら、慶次郎殿が屋敷の外で捕まっていた。みたいな形なども含めて」


単純に捕まえるだけでなく、少し懲らしめるやり方で捕まえた方が良い。みたいな事を言っております


それなら、このやり方が良いかな


「ならば、このやり方を含めた2段構えで行こう。1つ目は、慶次郎殿がそのまま捕まったら、そのままにするが、


2つ目は、慶次郎殿が皆を見て逃げだした場合じゃ。その場合は」


皆に2つ目の捕獲方法を伝えると


「それはお灸もすえられて、一石二鳥ですな」


「朝まで、そのままにしておくのも良いですな」


皆、ノリノリになっております。それじゃあ、準備しますか


「それでは皆、急いで準備にかかろう!」


「「「ははっ!」」」


こうして六三郎達は、屋敷の複数箇所で捕獲の準備に取り掛かった。そうこうしているうちに、日も落ちて夜中になり、人の声もしない時間帯になると、


「慶之助、ふゆ。済まぬ。やはり、儂は諸国を見たい。叔父殿はあの様な事を言っておったが、


きっと慶之助に対して、その様な事はしないはずじゃ。だから、儂が居なくとも大丈夫じゃろう。だから父を許せ!」


慶次郎が厠の近くで、そう呟きながら周囲を確認する。人の気配が無い事を確認した慶次郎は、門番から見つかりにくい場所の壁を飛び越え、静かに着地すると


「よし。これで」


安心した。しかし、その瞬間、


「屋敷から怪しい者が出たぞ!!」


「集まれ!!」


「東側の壁じゃあ!!」


「捕まえよ!!」


「「「おおお!」」」


赤備え達が一斉に、慶次郎の元へ走り出す。慶次郎も多少は体格に自信はあったが、赤備え達の様に、自身より屈強な身体の人間が大量に走って来たら


流石に逃げるしかなく、慌てて逃げ出す。その逃げだした先でも


「居たぞ!」


「捕まえよ!」


「逃してはならぬぞ!」


待機していた赤備え達が居た。その赤備え達からも逃げようとした慶次郎は、追いかけ回される形になりながらも


「や、やっと諦めたか」


何とか撒いた。そう思っていたら


「居たぞ!」


「逃しては赤備えの恥じゃ!」


「追い詰めよ!」


今度は別の赤備え達が追いかけて来た。それを見た慶次郎は


「何人おるのじゃあ!」


叫びながら、再び走り出す。そして、再び


「こ、今度、こそ、撒いた。はず、じゃ」


息も絶え絶えながら、追手が居ない事に安堵していた。しかし、安堵して歩き出した、その瞬間


「うお!」


慶次郎は叫びと同時に、縄で作った籠状の罠に身体ごと覆われた。慶次郎がその状態になってから、登場したのは


「慶次郎殿。昼間に前田様に領地に戻ると言っていたのに、屋敷の外に出ようとするのは良くないですなあ」


赤備えを率いて来た六三郎だった。六三郎を見た慶次郎は


「六三郎殿。貴殿も男なら、諸国を見て、見聞を広めたい拙者の気持ちは分かるじゃろう?」


六三郎を説得して、逃してもらおうとするが、六三郎は


「慶次郎殿、それは、慶之助殿が拙者くらいの歳になってからやればよろしい!元服どころか、


10歳にもなっていない慶之助殿に責任を含めた全てを押し付けておるのでは、慶次郎殿の言葉は、ただの自分勝手で無責任な言葉にしかならないですぞ!」


正論を返す。そして更に


「慶之助殿の事が大事なのである事は、昼間の話し合いで分かっております。なので、慶之助殿の為、奥方殿の為、自らを律してくだされ」


と、返すと、慶次郎は黙るしかなかった。そして、赤備えや六三郎の声が大きかったのだろう。いつの間にか、大人達が全員集まっていた


その中に、利家が居ないのは、慶次郎が酒を勧めて呑ませまくったからで、泥酔して深い眠りに落ちていた


なので、集まっていた大人の中で勝家が、


「慶次郎。赤備え達を見張りに立てておくから、又左が起きるまで、そうしておれ」


朝まで捕獲された状態で過ごす様に伝えた。こうして、慶次郎と昌幸の知恵比べは、昌幸の完勝で終わった。

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― 新着の感想 ―
絶対赤備えの面々は六三郎と狩りができてニコニコしてるんだろうなぁ…。 毛利への偽米の計といい、昌幸さんと六三郎の知略が合わさると敵に回したくないって赤備えの中ですら思われてそう。
次回いよいよ堪忍袋の緒が切れるであろう利家の怒り具合が見ものですね。 更新お疲れ様です。
( ̄ー ̄)ニヤリ
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