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傾奇者の言い分は

天正十五年(1587年)二月八日

越前国 柴田家屋敷


「さて、慶次郎よ。当主としての役目、親としての役目を放棄した理由を教えてもらおうか?」


皆さんおはようございます。朝から前田家の話し合いに参加しております柴田六三郎です


いやあ、今まで接してきた前田様は、基本的には優しいおっちゃんだったのですが、現在、甥の前田慶次郎に詰問している前田様、


歴戦の武将しか出せない凄みが出ております。この場に同席してるだけの俺ですら、心臓バクバクなのですから、詰問されてる当人は、言わずもがなでしょうね


で、その当人である前田慶次郎の言い分はどんな内容かと言うと


「叔父殿。拙者としては、慶之助も八歳になるのですから、そろそろ、柴田六三郎殿の様な働きを少しずつ」


慶之助くんに、俺みたいに働いてもらいたい。的な事を言っておりますが、そんな言い分で前田様が納得するわけもなく


「たわけ!!!」


案の定、怒声が出まして。そこから


「よいか!!!六三郎殿が幼い頃から、その様に働いておった理由は、親父殿が大殿の元でお役目に励んでいたからこそじゃ!それに、その当時の親父殿は、


お主と違い、家督を六三郎殿に譲っておらぬ!!それはひとえに、六三郎殿が何か不手際を起こしたら、


自身が責任を取る為じゃ!それをお主は、元服どころか、まだ十歳にもなっておらぬ慶之助に全てを任せて、自身は自由な立場じゃと!?ふざけるのも大概にせんか!!」


怒涛の正論攻撃です。それに対して前田慶次郎は


「いや、叔父殿。六三郎殿が八歳で初陣を経験したのですから、拙者としては慶之助に出陣とまではいかずとも、内政の方で。と思いまして」


と、今度は内政で俺の様に働いて欲しかった。と言っておりますが、これも火に油を注ぐ事になりまして


「何も分かっておらぬではないか!!先程も言ったが、六三郎殿は親父殿が領地に居ないから家臣任せにしない為に、家臣の意見を聞いて、時には遠くに居る親父殿や


大殿に意見を聞いて、領民達が飢えない様に試行錯誤した結果、内政で結果を出したのじゃ!改めて申すが慶次郎よ!お主は自らの都合で慶之助に全てを押し付けただけじゃ!


その様な愚行、許せるわけがなかろう!良いか慶次郎!!お主がその様な行動を取るのであれば、儂はお主を前田家から放逐して、領地も没収して、


慶之助においても、一門の嫡男という立場から、家中で一番下の立場の者として扱う事になるぞ!分かっておるのか!!」


前田様は、前田慶次郎に対して、「行動次第では、お前の嫡男が家中で1番の下っ端になるけど、その意味分かるよな?」と、中々の脅し文句を口にしております


でも、そうなる事も仕方ない程の行動だからねえ。そう言われた前田慶次郎も、傾奇者とはいえ我が子は大切な様で


「叔父殿。拙者の事で慶之助の立場が変わるのは」


と、慌てていましたが、前田様は


「たわけ!!それだけの事を、お主はやったのじゃ!良いか慶次郎!!もう、お主は独り身でなく、嫁も子供も居て、更には領主でもある、自由に動く事が許されぬ立場なのじゃぞ!


その事を分かっておるのであれば、言い訳などせずに、さっさと領地に戻り、差配をせんか!!」


トドメの正論をぶつけて来た。これには流石の傾奇者も


「分かり、ました」


渋々ながらに了承しております。これは、終わった様ですね。と、思っていましたら


「叔父殿。柴田様。ご迷惑をかけた拙者が、この様な事を言うのはおかしいでしょうが、ひとつお頼みしたい事が」


何やらリクエストがある様です


「親父殿。よろしいでしょうか?」


「儂は六三郎に家督を譲ったのじゃ。決めるのは六三郎に任せておる。六三郎、お主が判断せよ」


まさかの親父は俺にふって来ました


「内容にもよりますが、慶次郎殿。話してみてくたされ」


「はい。この数日、柴田家で過ごして、柴田家が行なっている事を見て、そして体験した上で、慶之助に理財を含めた色々な事を、柴田家で教えていただきたく」


まさかの「柴田家で慶之助くんを預かって、色々教えてやってくれ」でした。まあ、それくらいなら良いか


「慶次郎殿。預かるのは慶之助殿だけですぞ?奥方殿や、家臣の方々は預かる事は出来ませぬ。それでもよろしいでしょうか?」


俺の言葉に慶次郎殿は


「はい。その方が慶之助も良い経験を積む事が出来るでしょう」


と、納得してくれましたが、


「慶次郎様!私は反対です!慶之助はまだ八歳なのですよ!」


嫁のふゆさんが反対しております。ですが、


「ふゆ。儂は慶次郎の考えに賛成じゃ」


前田様が慶次郎殿の意見に賛成しております


「叔父上!」


ちょっと?前田家の皆様?家中の問題の第2ラウンドとか、やめて欲しいのですが?


俺の考えを分かってくれたのか


「父上!母上!叔父上!柴田様がお困りですから、やめてくだされ!」


まさかの慶之助くんでした。そんな慶之助くんに対して、慶次郎殿は


「慶之助。お主も、この数日柴田家で過ごした事で、新たな経験を得たじゃろう?それならば、将来の為に柴田家で学ばせてもらいたいと思わぬか?」


慶之助くんが柴田家で学びたくなる様、説得にかかる。でも、ふゆさんは


「慶之助。父上があの様な感じだからこそ、あなたが領地に居た方が、領民達も安心出来ると母は思います。それに、理財を教えてくれる方は、本家にも居ますよ?」


慶之助くんが実家に戻る様、説得する。2人から言われた慶之助くんは


「父上、母上。拙者は柴田様の元で、色々と学ばせていただきたく存じます。柴田様、よろしいでしょうか?」


俺に屋敷で学ばせてくれと頼んで来た。まあ、慶之助くん1人くらいは問題無いか


「良かろう。慶之助殿。しっかり学んで、領地に戻った時、役立てる様になされよ」


「ありがとうございます」


「奥方殿。慶之助殿にしっかり教えていきますので、了承していただけませぬか?」


俺の言葉にふゆさんは


「分かりました。慶之助の事、よろしくお願いします」


俺にそう言いながら、平伏した。とりあえず、これで前田家の問題は解決したと言って良いかな。

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― 新着の感想 ―
いやいや慶次郎がこれぐらいで出奔を取りやめるわけ無い!慶之助を六三郎に預けるのが主目的でこれで安心して出奔出来ると喜んでるはず!!翌日の朝を待たずに屋敷を抜け出して全国放浪に出掛けるはず。赤備え全員で…
いや、ダメオヤジ大活躍な殿戦がないと、息子にいい格好しなきゃ!
慶之助くん、父親のリアクションから「一刻も早く学ばないと大変かも」って危機感持ってそう。 実際問題、六三郎の逸話聞いた人によっては「我が子にもできるはず!」って思うケースも増えてきそうですな。
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