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前田家の問題解決は柴田家で

天正十五年(1587年)二月一日

能登国 前田家屋敷


勝家は慶之助のリクエストを受けて、利家に慶次郎の件で文を出した。その文が利家の元に届く


「殿!柴田家のご先代様より文でございます!」


家臣からの報告に利家は


「親父殿から!?ま、まさか、慶次郎の奴、とんでもない不手際を起こしたのか?やっと、あ奴に振り回される日々が終わったと思ったのに」


愚痴をこぼしながらも、文を受け取り、読む


「どれ。「又左へ。いきなりの文、済まぬ。文を出した理由じゃが、お主の甥で現在、柴田家にて預かっておる慶次郎の事でじゃ。


実は、数日前に慶次郎の倅の慶之助と嫁と家臣達が屋敷に来て、慶次郎を連れ戻したい。と言って来てな。その理由として、慶次郎の奴、慶之助に対して


「お主も来年で、六三郎殿が初陣を経験した八歳になるのだから、家督を譲る!だから領地の事は慶之助のやりたい様にやれ!分からない事があったら、


母と家臣達に聞け!それでも分からないのであれば又左衛門様に聞け!」と、当主としての役目を放棄しておるどころか、当主としての立場まで放棄した結果、


慶之助達は、そんな無責任な慶次郎を連れ戻しに来たのじゃが、これは前田家中の問題なのだから、


儂も六三郎も口出し出来ぬ。なので又左よ。慶次郎達を一度、連れ帰るか、お主が儂の屋敷に来て、慶次郎達と話し合って、どうするかを決めてくれ


このままだと、殿と大殿が決めた新たな領地の件も白紙にして、もう一度考えないといかん事になる


そうなっては、毛利との戦で働いた藤吉郎を始めとした面々が不憫じゃ。なので、又左よ。とりあえず


一度、儂の屋敷に来てくれ」と、あるが、あの大たわけ者め!!儂には、「慶之助と家臣から領地の差配を経験させてくれと言われたから、しばらく任せる」と言っておきながら、


その実、まだ八歳の慶之助に丸投げしただけではないか!何故にあ奴は、四十歳手前でこの様な事を!!」


文を読み終えた利家は、怒りのあまり、文を破りそうになっていた。そんな利家に正室のまつが


「お前様。一旦落ち着きなされませ!!」


落ち着かせる為、声をかける。まつの声を聞いた利家は


「す、済まぬ。慶次郎の事で」


冷静になれた。冷静になった利家にまつは


「お前様。お気持ちは分かりますが、亡き義兄上殿の遺言を忘れたわけではありませんよね?」


慶次郎の養父で利家の長兄、利久の事を伝える。利久の事を忘れていなかった利家は


「勿論、覚えておる。兄上は、儂が家督を継いだ時も、儂に対して恨み言を言わないどころか、「戦に出陣出来ない自分が悪い」と仰ったり、儂が若い頃、織田家から放逐された際も


「又左衛門が許されるまで、前田家が潰れない様、皆で守らねばならぬ!皆、協力してくれ」と、家臣達に頭を下げてくれた。そんな兄上の遺言の


「慶次郎が人の道を踏み外さない様、頼む」を忘れた事など、一日たりとて無い。だからこそ、慶次郎には好きにやらせていたが、慶次郎の子、つまり兄上の孫の慶之助に無理をさせておるとなれば、話は別じゃ!


まつ!儂は、親父殿の元へ行って、話をまとめてくる!最悪の場合、慶次郎を放逐して、慶之助の面倒を見る事になっても兄上は許してくれるはずじゃ!


親父殿に文を書く!書き終えたら、早馬で届けよ!その後に、儂も越前国へ向けて出立する!準備をしておけ!」


「「「ははっ!」」」


こうして、利家は少しばかり、心中穏やかでは無い中で、文を書く。書き終えたら家臣に渡して、柴田家屋敷へ走らせる。その後、自らも準備して柴田家屋敷へ向かった


天正十五年(1587年)二月四日

越前国 柴田家屋敷


「大殿!前田様からの文にございます」


「うむ。見せてみよ。それから、慶之助と奥方を連れてまいれ」


「ははっ!」


利家が文を書いてから4日目、文が勝家の元へ届けられた。内容を確認する為勝家は慶之助と慶次郎の正室の「ふゆ」を呼び寄せる


2人が大広間に到着すると勝家は


「二人共、又左から文が届いた。慶次郎の事で間違いないじゃろう。今から読み上げるから、しっかり聞く様に」


「「はい」」


「では。「親父殿。慶次郎の事、誠に申し訳ありませぬ!言い訳になりますが、慶次郎の奴、儂に対して、「慶之助と家臣から領地の差配を経験させてくれと言われたからしばらく任せる」と言ってきたので、


その言葉を鵜呑みににしてしまいました。確認をしなかった拙者の落ち度にございます!なので、親父殿や六三郎には迷惑をかける形になりますが、


拙者が柴田家屋敷に向かい、慶次郎と慶之助を交えて話し合って決めたいと思います!色々と迷惑をかけてしまい、申し訳ありませぬ!」との事じゃ」


2人へ文を読み終えると


「柴田様。誠に父上が申し訳ありませぬ」


「慶次郎様をちゃんと見ていなかった、私の責任です」


2人揃って平伏していた。そんな2人に対して勝家は


「まあ、とりあえず、又左が来てから色々と話し合って決めたら良い。奥方も気にし過ぎも良くないですぞ」


と、優しい言葉をかけるが、市からは


「ふゆ殿。いざとなれば慶次郎殿の尻を叩くくらいやりなさい!慶次郎殿は、一家の長という自覚が足りないにも程があります!その様な人は、きつく言わないと駄目です!」


ふゆに対して、「一度、慶次郎の尻でも叩いてやれ!」と攻撃的な対処を伝えると、


「分かりました。いざと言う時は、その様にします」


ふゆの顔つきが変わる。それを見た市は


「そうです。だらしない夫は一度、叩いてやれば良いのです」


と、ふゆの背中を押す。そんな会話をしていると、


「父上!母上!帰って来ました!」


六三郎が帰宅してきた。この六三郎の帰宅のタイミングは前田家の話し合いにおいて吉と出るか、凶と出るか?

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― 新着の感想 ―
勝家だけなら「これ、どうすれば良いのだ?」ってなりそうだけど、六三郎帰ってきたなら任せられるやろ。 前田家は昔から付き合いあるから「いつもの」じゃないよね…(遠い目
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