前田家の問題児はどんな人物か
読者の皆様が楽しみにしております、前田家の問題児ですが、史実よりは若く、某世紀末漫画作者の作品よりは年齢を重ねています、そして身長と体格も上記の2つの中間くらいの設定で進めます。ご了承ください。
勝家に言われた利家は、源四郎の案内で屋敷周辺を動き回っていたが、中々見つからない。そんな時、
「前田殿!初めて走ったのに、あの坂を登りきる事は簡単な事ではないのに、お見事ですぞ!」
「四種の動きも、それぞれ二十回を達成出来るとは」
「真田様とそんな歳の変わらない様に見えるのに、凄いですな!」
「はっはっは!身体がこれ程、動けなくなるのは、いつ振りかのう!?だが、心地よい疲れじゃ!」
赤備えの訓練用の坂の所から、会話が聞こえてくるが、会話の中に「前田殿」という名前が出て来た事で利家は
「慶次郎!!」
と、叫びながら、坂の方に走って行った。今年で五十歳と思えない程の早さで、源四郎を置いてけぼりにして、坂に到着すると
「慶次郎!何をしておる!!」
探していた甥の、前田慶次郎利益を見つけると同時に、叱りつける。しかし、慶次郎は利家に対して
「叔父殿。五十歳を超えておるのですから、その様にいきなり走ったら、急死してしまいますぞ?」
「いきなり走ると、ポックリ行っちゃうよ?」と、心配しながらも、小馬鹿にしていた
そんな慶次郎に利家は
「たわけ!お主の姿が見えなくなったから、探しに来たら、何を寝転がっておる!」
大の字で寝ている事も注意するが
「はっはっは!叔父殿!この子達が、坂を走っていたので、試しに走ってみたら、
いやあ、走るだけで疲れて、更には見慣れぬ四種の動きを試してみたら、もう、身体が動けませぬ!はっはっは!」
慶次郎は、笑い飛ばして「疲れて身体が動けない」とアピールするが
「たわけ!お主はそんな弱々しい男ではなかろう!歩くくらいは出来るじゃろう!立て!」
利家はアピールを無視して「立て!」と言う。言われた慶次郎は
「叔父殿は厳しいですなあ。分かりました」
と、言いながら立ち上がり、
「それでは叔父殿!柴田様の元へ行きましょうぞ!」
少しフラつきながら、屋敷へ歩きだした。利家は慶次郎がまた、別の所に行かない様に近い距離で見張りながら、屋敷まで同行する
そして、屋敷に到着して、大広間に案内されると
「柴田越前守様、そして奥方様!拙者、前田又左衛門の甥の、前田慶次郎利益と申します!挨拶が遅くなり、申し訳ありませぬ!」
勝家と市に挨拶をした。ちなみに着物は利家が強制的に着替えさせた。慶次郎を見た勝家は
「お主が蔵人殿の倅か」
慶次郎の父の利久の名前を出す。すると慶次郎は
「亡き父上の事を知っているのですか?身体が弱い事で出陣出来なかった結果、叔父殿に家督を譲る事になったのに」
利家に聞こえる様に、大声で話す。それを聞いた勝家は
「まあ、何じゃ。前田家の事に儂は何も言えぬから、触れぬが。慶次郎よ、お主、前田家を出たいのじゃな?」
慶次郎に対して、質問する。すると慶次郎は
「はっはっは!流石、柴田様!「鬼若子」と呼ばれる程、戦上手な嫡男を育てたお人は、人心も読めるのですな!確かに!来年で四十歳になるので、
諸国を回ってみたいと思いましてな!それを叔父殿に伝えたら、何故か柴田家に連れて来られたわけです!」
勝家に本心を伝える。慶次郎の本心を聞いた勝家は
「それならば慶次郎よ、儂みたいな隠居の年寄りではなく、儂の倅の元で働いてみぬか?」
六三郎の元で働かないかと話をもちかける。慶次郎は
「鬼若子殿の事ですか?」
テンションが上がったのか、身を乗り出す。そんな慶次郎に勝家は
「そうじゃ。慶次郎よ、お主、諸国を回ってみたいと言っておったが、儂の倅の六三郎は、お主とは真逆で
諸国を回る気など、毛頭無いのにも関わらず、彼方此方に移動しておるぞ。
近い話だと、前年に終えた毛利との戦じゃな。慶次郎、六三郎は毛利との戦に出陣する事が決まる前は何処に居たと思う?」
六三郎の説明を始める。説明の中の質問に慶次郎は
「ここ越前国か、織田家の本拠地の近江国だと思いますが、違うのですか?」
意外にも、普通の答えを出すが、勝家は正解を伝える
「違うぞ。六三郎は当初、甲斐国に居たのじゃ」
正解を聞いた慶次郎は驚きながらも、質問する
「え?し、柴田様。甲斐国に居た、六三郎殿は真逆の位置に居る毛利との戦への出陣が決まったのですか?」
慶次郎の質問に勝家は
「それがな、何とも不思議な事なのじゃが、その頃の六三郎は甲斐国を治める武田家と共に、国内の復興のお役目に就いていたのじゃが、復興に必要な物の材料を織田家からいただく為に安土城へ向かった所、
佐久間殿が毛利に逆襲を受けたと報告があり、佐久間殿の援軍に行ける者を左中将様が見繕っていたら
六三郎が居た。というわけじゃ。儂も左中将様からの文を読んで、甲斐国に居るはずの六三郎が何故、近江国に居るのか不思議であった
だが、幼い頃から色々と常識外れな事をやって来た六三郎に普通を求めてはいかぬと、思ってな
そんな普通とは遠い六三郎の元で働いてみぬか?慶次郎が六三郎を気に入ったのであれば、そのまま仕えても良い」
細かい説明も入れつつ、最終的に六三郎に仕えないか?と聞くと、慶次郎は
「柴田様!その様な面白くも不思議な存在の六三郎殿の元で働いてみたいと思います!」
即決した。それを聞いた勝家は
「うむ。ならば、六三郎が戻って来るまでは、領内で身体を動かしながら、屋敷内でゆっくり過ごすとよい」
慶次郎に屋敷に住む様に伝える
「ははっ!ありがたき!」
慶次郎も直ぐに返事をする。こうして、前田家で持て余していた慶次郎を柴田家で預かる事が決まった
当然、六三郎はその事を知らない。




