南蛮の甘味でリクエストの形が見える
銀次郎と次姫のリクエストを聞いた六三郎は、長浜城内に作られた特別な台所に来ていた、そこに
「六三郎殿!殿から、全部使っても良いとの事です。そして、拙者も出来る事は少ないかもしれませぬが、精一杯手伝います!」
紀之介が助手として、秀吉から派遣されていた。六三郎は
「紀之介殿。ありがとうございます」
礼を言って、食材を見てプランを考えるが
(基本的には源太郎様と勝姫様の時と同じ、パンケーキの積み重ねを土台にしたウエディングケーキにするとして、
問題は銀次郎と次姫のリクエストなんだよなあ。銀次郎は野苺のジャムをリクエストしてた、これはどうにかなる!
問題は次姫のリクエストの「幸せが末長く続く様な甘味」なんだよな。悩んでも直ぐに答えは出ない!
とりあえず、紀之介殿に土台の部分を見て覚えてもらおう)
2人のリクエストを直ぐに形に出来なかったので。紀之介にパンケーキの作り方を教える事を教える事にした
「紀之介殿。此度の祝言にお出しする甘味の土台をお見せしますので、作り方を1から覚えてくだされ」
「承知した。見せてくだされ!」
こうして、六三郎は紀之介にパンケーキの作り方を教えた。すると、
「六三郎殿!先ずは一枚、焼いてみてもよろしいでしょうか?」
紀之介が一枚焼いてみたいとリクエストしてきたので、六三郎は
「そうですな。先ずは一枚、挑戦してみましょう」
(お、案外早く作り方を覚えたみたいだ。まあ、余程のポンコツじゃないかぎり、誰でも作れるものだしな)
試しにやらせてみる事にした。すると、
「六三郎殿!出来ましたぞ!」
「おお!これは見事な物が出来ましたな!」
(マジで?めっちゃ綺麗なんだが!やっぱり、病気を患ってない大谷吉継は、織田家における堀秀政の様に、器用に何でもこなせる人なんだな!それでも料理まで出来るのは想定外過ぎるが)
六三郎も驚く程、綺麗なパンケーキを1枚だけとはいえ焼き上げた
それを見て六三郎は、
「紀之介殿。今から言う大きさの物を焼いてみてくだされ」
ウエディングケーキの土台部分を紀之介が作れるか試してみる事にした
「分かりました。どれ程の大きさですか?」
「先ずは、1尺の大きさを5枚!焼いてくだされ」
「分かりました」
紀之介が30センチのパンケーキ5枚を焼き始めると、六三郎はカスタードクリームを作り始めた
2人が居る特別な台所には、甘味作りの材料が大量にあったので、遠慮なく試作品を作れていた
そして、紀之介が30センチのパンケーキを焼き終えると同時に、六三郎もカスタードクリームを作り終える
カスタードクリームを見た紀之介は
「六三郎殿!それを塗るのですな?」
直ぐにカスタードクリーム作りの意味を察した。勘の良い紀之介に六三郎は
「紀之介殿、その通りです。ですが、これで完成ではありませぬぞ。次は、7寸程の大きさで5枚焼いてくだされ」
「積み上げるのですな。分かりました」
20センチのパンケーキ5枚を焼く事を頼む。そして、あっという間に
「六三郎殿!出来ましたぞ!」
20センチのパンケーキ5枚を焼き終えると、六三郎は
「次は3寸程の大きさで5枚焼いてくだされ」
10センチ程のパンケーキ5枚を焼く事を頼む。これも紀之介はあっという間に焼き終える。
それぞれの大きさのパンケーキを積み上げ、熱も落ち着いた頃に、カスタードクリームを塗り、基本形を完成させて、紀之介に食べさせてみると
「これは濃厚な甘さですな。しかし、くどくない甘さなので、手が進みます」
紀之介の反応を見た六三郎は
「紀之介殿。これが銀次郎と次姫様にお出しする甘味の基本形です。このままお出ししても問題は無いでしょうが、それでは内府様は納得しないでしょう!
なので、拙者は事前に銀次郎と次姫様に希望を聞いて来たのですが、それが」
「中々に難しい内容なのですか?」
「銀次郎の希望は叶えてやれるのですが、次姫様の希望が」
「銀次郎殿の希望は、どの様な内容なのですか?」
「銀次郎の希望は、この赤い木の実を使った物なので大丈夫なのです。ですが、次姫様の希望が、「末長く幸せが続く様な甘味」と言う内容なのです」
「それは、何とも抽象的な希望ですな」
「はい。なので2人の希望をどの様に組み合わせるかで、悩んでおります」
「まあ、祝言は三日後ですから、じっくりと考えていけば、何か思い浮かんでくるかもしれませぬから、じっくりと考えていきましょう」
「そうですな。紀之介殿が土台を焼ける様になりましたので、少し余裕も出来ました。じっくり考えるとしましょう」
と、六三郎が少しだけど、お気楽な発言をしたが
天正十五年(1587年)一月十日
近江国 長浜城
「六三郎殿、いよいよ明日が祝言ですが、何か思い浮かんでおりますか?」
皆さんおはようございます。大殿から言われて、銀次郎と次姫からのリクエストを聞いたウエディングケーキの完成形に到達出来ないから、大谷吉継に心配されております柴田六三郎です
野苺のジャムは作って形にするのは簡単だけど、次姫のリクエストが形に出来ておりません
どうしようか?そんな俺に紀之介殿が
「六三郎殿。これでも食べて、頭の中を一度、空にしてみましょう。何かしら思い浮かんでくるかもしれませぬぞ」
小さい食べ物を渡して来た。
「紀之介殿、こちらは?」
「殿が毛利征伐の帰り道で、堺に寄った時に買った南蛮の甘味の「コンフェイト」なる物です。口の中に入れて、少しずつ転がしているうちに溶けていくので、
物足りないかと思いきや、満足感を得られる甘さがありがたい甘味ですぞ」
「忝い。いただきます」
六三郎はコンフェイト、いわゆる金平糖を食べながら
(ああ〜。何か安心する甘さとでも言うのかな?これで色んな味があったら、溶かしてジュースに出来るんだけどなあ。それこそ苺味の金平糖があったら、
溶かして苺ジュースとかさ。ん?溶かしてジュース?金平糖自体は砂糖が主原料だから、、、2人のリクエストを形にしたウエディングケーキが出来るかもしれない!)
「紀之介殿!土台の物を以前の様に、大きさ違いで5枚焼いてくだされ!これかもしれない物が思い浮かんできましたぞ!」
「わ、分かりました」
六三郎は紀之介にパンケーキを焼く様に頼む。六三郎が思い浮かんだ事とは?