未来の投資話の内容
「それでは、父上、母上。拙者の提案ですが、先ず、虎次郎殿と江に許婚の形を取っておいて、そこから5年以内に、甲斐国の復興と二ヶ国保持が出来なければ、2人が夫婦になる事を諦めてもらいましょう」
俺の言葉に、江は
「兄上!何故その様な事を言うのですか!!」
めっちゃ大声で俺を怒る。でも、虎次郎くんは
「江殿。六三郎殿は、拙者に対して「妹を嫁に迎えたければ、それくらい成し遂げよ」と言っており、江殿に対しては、「婿殿を信じて待てないのであれば、
嫁入りを諦めろ」と言っているのです。つまり、夫婦になりたけれは、お互いがお互いの為に頑張れと。ですな、六三郎殿?」
俺の提案の核の部分を当てて来た。やっぱり、幼い頃から、色んな経験している若者は強くて賢いな
「まあ、そう言う事じゃ。江よ、夫婦になる為に、茶々も初も、夫の喜平次殿と弥三郎殿が、夫になる事を認めてもらう為に、出陣して武功を挙げたのじゃ
その際、2人は自らの気持ちを抑えて、帰って来る事を祈っていたのじゃ。虎次郎殿は元服前だから出陣する事は現状無い。それならば別の事で、
周りを納得させるしかなかろう。だからこそ、この形を提案したのじゃ。甲斐国と実家で離れ離れになるが耐えよ
父上、母上、この内容を2人が成し遂げたのであれば、2人が夫婦になる事を認めていただきますかな?」
俺の提案に親父とお袋は
「儂はその内容で良い。市はどうじゃ?」
「出陣がまだ先ですから、武功を挙げて来いと言うのは無理でしょうし、分かりました。その内容を成し遂げたら、二人が夫婦になる事を認めましょう」
「成し遂げたら夫婦になる事を認める」と言ってくれました。それじゃあ次は
「茶々!初!父上と母上がこの内容に納得したのじゃ。お主達も納得せよ!江の幸せの為、心配だから色々と言っていた事は分かっておるが、二人の事を見守ってやってくれぬか?」
茶々と初に呼びかける。そして、
「「分かりました」」
納得してくれた様だ。それじゃあ、最期に
「仁科様。そう言う事に決まりましたので、甲斐国に戻る際は、皆様に多少の無理をさせてしまいますが、その事を周知させてくだされ」
五郎さんに伝えると
「も、勿論です。この事は武田家中の全員に知らせて、若君の嫁取りを一日も早く成し遂げないといけませぬ」
めっちゃ気合いを入れてくれました。それじゃあ、
「それでは、父上、母上。知っていると思いますが、今月末に長浜城で拙者の家臣の銀次郎と次姫様の祝言があるのですが、大殿より、
その祝言に虎次郎殿を顔見せの為に出席させよ。との事なので、5日後に出立します。その間に次の本拠地となる国を決めますので」
これからの予定を伝えて、準備を。と思ったのですが
「あと、利兵衛。銀次郎の祝言が終わったら、甲斐国へ行くが、その時は道乃は勿論、側室の皆も連れて行く。その際、世話役として、利兵衛が共に来るか、
源四郎が共に来るか。2人で話し合って決めてくれ」
利兵衛に甲斐国に来るかを聞いておくと利兵衛は
「かしこまりました。源四郎と話し合っておきます」
そう返事をした。とりあえず、これで江と虎次郎くんから始まった話し合いは終了です
天正十五年(1587年)一月六日
越前国 柴田家屋敷
「三吉様、長丸様。挨拶が遅くなり、申し訳ありませぬ」
皆さんおはようございます。前日に色々あり過ぎて、挨拶する事を忘れていた大殿の五男の三吉様、六男の長丸様に挨拶をしております柴田六三郎です
2人共、気を悪くしているどころか、
「六三郎殿。気にしないでくだされ」
「そうですぞ。身内のゴタゴタをまとめる為ですから、気にしないでくだされ」
「あんな状況からなら仕方ないよね」みたいな感じで優しくフォローしてくれます。俺より歳下なのに、人間性が素晴らしいです
「優しいお言葉、ありがたき。話は変わりますが、利兵衛と源四郎はお二人にしっかりと理財を教えておりますか?」
「それはもう、とても分かりやすい教え方ですぞ」
「確かに。安土城で丹羽殿を始めとした方々が教えてくださった時は、いくらか遠慮が感じられましたが、利兵衛殿も源四郎殿も、遠慮など一切無く、細かく教えてくださいますので、とても身に付いております」
「そう言っていただき、嬉しく思います。それでは、拙者はこれにて」
挨拶を終えて、次にやる事は側室の皆さんの所への顔見せだ。中々休めないなあ
六三郎が屋敷内でバタバタと動いている頃、安土城では、信長がある夫婦を甲斐国から呼び寄せていた
その夫婦とは、
「内府様、左中将様。此度はお呼びいただき、恐悦至極にございます」
「うむ。銀次郎の祝言に、兄であるお主とその嫁と子供が出ないのは、よくないと思ってな」
銀次郎の兄夫婦の。惣右衛門夫婦だった。親族が誰一人出席しない事を良く思わなかった信長なりの配慮なのだろう
挨拶を受けた信長は、
「惣右衛門よ。お主達の事は、当日になってから銀次郎に知らせて驚かせてやりたい。なので、当日は顔を隠して、儂の従者の振りをせよ。筑前にもこの事は伝えておるから、安心せい」
「柴田家の一家臣にすぎない弟の為に、そこまでの御配慮、誠にありがとうございます」
こうして、信長による銀次郎へのサプライズがスタートした。