俺の予定は決まっていた
「殿。ちなみにですが、毛利家への沙汰の内容を、教えていただきたいのですが」
「うむ、毛利家は本貫の地である安芸国と周防国を領地とした。ただ、ずっと二ヶ国ではなく、いつか実行する九州征伐での働き次第では、長門国も返す事を伝えて、それ以外の領地は没収した
そして、人質に関してじゃが、毛利安芸守の娘の安芸乃姫、そして、毛利両川の倅から、吉川の三男と、小早川の嫡男が人質になる事が決まった」
「では、没収した領地は殆どが羽柴様の領地になったのですか?」
「ああ、それに関してじゃが、備前国、備中国、備後国、美作国、そして出雲国の半分じゃ。そして、此度、援軍として武功を挙げた長宗我部家には、
伊予国の半国を渡す事になった。もう半分は源三郎の領地になる。東西で分けるか、南北で分けるかは、源三郎と土佐守の話し合いに任せる事にした」
「では、石見国はどなたが治めるのですか?」
「織田家の直轄領として扱うが、任せられる者が見つかるまでは、当面は筑前に見てもらう予定じゃ」
「そうでしたか。そう言えば、柴田家が移動する越前国は、どなたが治めるのですか?」
「越前国は明智家じゃ。そこから色々と移動させて、越前国は明智家、加賀国は前田家、越中国は佐々家に任せる。そして、前年に上杉家との戦に参戦してくれた徳川家への礼として、
能登国の残り一部を徳川家に渡す。六三郎よ、これまでの領地の移動と、分割を聞いた上で、何か気になる点は無いか?」
(気になる点?北陸と中国地方は問題無いだろうから、話に出た人達が移動したのに、話に出てない国)
「殿。美濃国の一部を治めていた明智家が移動するとなると、誰かしらに美濃国一国を与える。という事でしょうか?」
「思ったより早く気づいたな。そうじゃ、美濃国、そして飛騨国は、一人に一国ずつ任せる事にした」
「どなたか任せるのですか?」
「儂の弟達じゃ」
「三介様と、別のお方ですか?」
「いや、三介以外じゃ。源三郎より下の弟達に、将来の為に、今から経験を積ませて、統治者として立派、とまでは言えずとも、最低限の内政が出来る様になってもらう為にな」
「それは、壮大な計画とでも言いましょうか」
「六三郎よ。きっかけはお主じゃ。お主が元服前から色々やって来た事を、儂も父上も元服前からやらせよう。と、決断したから。と、言っておこう」
「そうでしたか」
何だか、俺のせいで、源三郎様より下の弟さん達が働く事になった様で、軽い罪悪感を感じます
ですが、そんな俺の罪悪感を吹き飛ばす発言を、大殿がしました。それは
「六三郎!忘れているだろうから、伝えておくが、お主の家臣の土屋銀次郎に、儂の娘で、筑前の養女になった次が惚れていて、筑前が戻って来るまでは、
耐える様に命令していた事じゃが、見事耐え切ったぞ!なので、銀次郎の嫁になる事を許可しよう!銀次郎を呼んで来い。儂から伝えたい」
大殿からのサプライズですね。分かります
言われたので、銀次郎を連れて来ましたら
「銀次郎!お主と次の祝言を睦月の末に、筑前の長浜城で行なう!それまでに色々と準備しておけ!」
到着と同時に発表しました。予想通りのサプライズなのですが、銀次郎は
「え?え?殿?左中将様?内府様?次姫様は、他の男に」
パニックになったけど、大殿は
「脇目も振らずに、銀次郎を待ち続けておったのじゃ!それ程の女子を嫁にもらうのじゃ!人生をかけて幸せにせんと、儂が叩き切るぞ!」
めっちゃ笑顔で怖い事を言って来ました。その迫力に銀次郎は、
ドサッ!
まさかの気を失う事になりました。俺と官兵衛さんと上杉さんが近くに居たおかげで、倒れずに済みましたが、約180センチの筋骨隆々の男が、大殿の娘を嫁にもらうからといって、気絶すんな!
と言うのは簡単だけど、天下人の娘を嫁にもらうプレッシャーと、大殿の覇気は怖いから、仕方ないという事にしておこう
そんな銀次郎を運んでから、再び大広間に戻って、もう一つ気になる事を質問してみよう
「大殿、殿。そう言えば、武田家のお二人の事ですが、拙者が出陣した後、甲斐国に一旦帰ったのですか?」
俺の質問に、大殿が答えたのですが、その答えは予想の斜め上でした
「うむ。確かに一旦は、甲斐国に帰ったが、その際、甲斐国へ岩の板の材料を持って帰っていってな、
作り方の手順書を見ながら、自分達で作ったそうじゃが、早くも結果が出て来ておるとの事で、今年の長月に入ってから、安土城へ来て材料の回収をしておったのじゃが、
その時、虎次郎が「六三郎殿の両親に感謝の礼をしたい」と言って来たのでな、そのついでに利兵衛に儂の五男の三吉、六男の長丸に理財を教えてもらおうと思って、
一緒に越前国へ儂と同行したのじゃが、そこで虎次郎も共に学びだしてな、現在、五郎と共に越前国に居るのじゃ」
「つまり、拙者の実家に居るという事ですな?」
「まあ、簡潔に言うと、そう言う事になるな」
(何だろう。柴田家が元服前の子供が集まる学舎と言うか、学習塾と言うか、そんな感じに思えて仕方ないのですが。
まあ、俺がどうこう言える事じゃないからなあ。一旦、実家に帰ってから、本拠地の件も含めて、色々と話し合おう)
「では、殿。拙者が甲斐国に行く時に、一緒に越前国から移動するという事でよろしいでしょうか?」
「それでも良いが、どうせならば銀次郎と次の祝言に出席させて、筑前にも紹介しよう!なので、六三郎よ
睦月の末に間に合う様に動け。今から実家に向かっても良い」
「ははっ!」
こうして、俺は直ぐに実家への移動を開始しました。