名軍師の父はどんな人物か
天正十四年(1586年)十二月十日
播磨国 某所
「六三郎殿、備前国は、何事も無く進めましたな」
皆さんこんにちは。黒田官兵衛さんから、備後国と備中国で色々あった事をイジられている柴田六三郎です
まあ、返す言葉も無いのは事実ですし、ここで色々言うのも可笑しな話ですので、スルーしますが。
で、官兵衛さんと吉兵衛くんの地元の播磨国に入ったのですが、俺個人のやっておかないといけない事、それは、官兵衛さんの親父さんに挨拶しておく事だと思うんです
まあ、理由としては「軍勢を寄越してくれてありがとうございます」を伝える事です。それくらいはやっておかないとね。それじゃあ、官兵衛さんに聞きますか
「官兵衛殿、吉兵衛殿。一つお頼みしたい事が」
「「何でしょうか」」
「官兵衛殿のお父上に、軍勢を寄越してくださった事の挨拶をしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「父上にですか?」
「ええ。感謝を込めて挨拶をさせていただきたく」
「分かりました。それでは、屋敷へ行きましょう」
という事で、黒田家屋敷に向かいましたら、
「おお!貴殿が柴田の鬼若子殿か」
官兵衛さんの父親の甚四郎さんに会いました。うちの親父と違って、明るくて人当たりの良い人ですが、
あの黒田官兵衛の親父ですから、間違いなく謀略の腕は凄いのでしょう。と、軽く警戒しております
まあ、警戒しても仕方ないので、とりあえずは感謝の挨拶をしておきましょう
「黒田殿、此度の毛利征伐へ官兵衛殿と吉兵衛殿を始めとした軍勢を与力として送っていただいた事、誠に感謝します」
「いやいや、柴田殿。無理矢理参戦させてもらったのじゃから、そんな礼など」
「いえ!官兵衛殿の見事な軍略の才と、吉兵衛殿と共に見事な暴れっぷりを見せた播州武士の方々の働きが無ければ、被害を抑えながら勝てたか分かりませぬので」
俺がそう伝えると、甚四郎さんは
「ほう。官兵衛も吉兵衛も家臣達も、見事な働きを見せてくれたと申してくれるとは。官兵衛、吉兵衛!
どの様な戦であったか、覚えている範囲で良いから、詳しく話してみせよ」
と、話を振ったと思ったら、最初に官兵衛さんが伯耆国での戦の話をしましたら
「ほう。敵を誘い込む為に、偽の米蔵を建てるとは。更には米俵に種子島の硝石を使った武器を詰め込み、
更に足下に同じ武器を敷き詰めて、敵を壊滅させるとは」
「黒田殿。それを立案したのは官兵衛殿で、拙者や周りの方々は、改善案を出した結果ですので」
訂正をしたら
「はっはっは!官兵衛が立案し、周りの者達の改善案を組み合わせても、実行する決断をくだしたのは、柴田殿ではないか。
まだまだ若いのに、家臣や与力を信頼して、策を実行して、皆の手柄と言えるのは、中々、出来る事ではないですぞ」
と、笑いながら、褒めてくれているのですが、
「父上。伯耆国での戦も素晴らしい経験でしたが、何と言っても百里を十日で走り抜けた後に、一日休んでからの備中国での戦でしょう!
あれ程の壮大で剛毅な移動と戦は、これからの人生の中で起きるとは思えませぬ程でしたぞ!」
吉兵衛くんの言葉に、
「待て待て吉兵衛!今、百里を十日で走り抜けた。と言っておったな?官兵衛、それは誠か?」
軽くなんてレベルじゃない感じで、引いていました。そんな甚四郎さんに官兵衛さんは
「父上。誠ですぞ。毛利を出し抜く為に、長門国から伯耆国までの百里を十日で走り抜けたのです」
冷静に説明する。でも、甚四郎さんは
「いやいやいや、官兵衛よ。その移動の間に毛利の軍勢と遭遇しなかったのか?だとしたら、あまりにも幸運過ぎぬか?」
と、冷静にツッコむ。でも、官兵衛さんは俺の方を見ながら
「それがですな父上。六三郎殿の見事な策と言いますか、人使いの荒さと言いますか、共に与力として参戦していた尼子家の者に、
「山陰に潜んでいる尼子家家臣を総動員して、進む国に毛利の軍勢が居ないか調べてくれ」と言ったのです」
細かい部分を伝える。けど、甚四郎さんは
「官兵衛よ、十日で走り抜けたのであれは、その尼子家家臣達は何日で毛利の軍勢が居ない事を調べ終えたのじゃ?」
と、気になった事を聞いてくる。官兵衛さんは笑顔で
「二日です。六三郎殿は、尼子家家臣に二日で石見国、出雲国、伯耆国が安全かどうかを調べてくれ。と頼み、尼子家家臣達も、尼子家再興の為に働き、
安全が確認されたら、一気に走り抜けた結果、毛利との戦に勝利出来たのです。拙者も吉兵衛同様に、
あれ程の壮大で剛毅な戦は、初めてでした。そして、これから先もその様な戦が経験出来るか疑わしいと思っております」
説明したら、甚四郎さんは
「内府様と左中将様が仰っていた事は誠にであったか」
大殿と殿に会った時の事を話した。気になったので、聞いてみよう
「大殿と殿に会ったのですか?」
「うむ。官兵衛達が出陣した後、臣従を申し出た時にのう。お二人曰く、「六三郎は味方の被害を少なくする為に、無茶な事をする場合があるから、倅と孫が帰って来たら、聞いてみると良い」と、
言っていたのじゃが、正にその通りになっておる事に驚いてのう」
いや、大殿と殿?そんな前振りみたいな事は言わないで欲しいのですが!まあ、俺の行動が分かりやすいという事にしておこう
「それは、拙者の行動が、大殿と殿に読まれていたのですな」
「はっはっは!まあ、そう思っていたくらいが良いじゃろうな。これから安土城へ向かう予定なのであれば、そろそろ出立した方が良いぞ!
官兵衛!お主が儂の名代として、此度の戦の沙汰を聞いてまいれ!領地の話も出るじゃろうからな。しっかりと頼むぞ!」
「ははっ!それでは六三郎殿。動きましょう」
「そうですな。それでは黒田殿。失礼します」
こうして、黒田甚四郎さんへのお礼と挨拶を終えて、安土城へ移動を再開しました。
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