主君は爆笑。親父は苦悩
元亀三年(1572年)十月十七日
美濃国 岐阜城大広間にて
「柴田吉六郎殿より早馬にて書状と武器の元と呼ばれる物が届けられました」
「今度は何じゃ?」
信長は声を出しながら書状達を受け取り、読み始める。読み出して、少し間をおいて
「ふ〜。権六!お主の倅は戦乱の世に愛されているとしか思えぬ程、家中の争いに巻き込まれた人間を拾うのう。此度はお主が読め」
そう言って信長は勝家に書状を渡した。受け取った勝家は、変な事が書かれてない事を祈りながら書状に目をとおす
「は?え?こ、こ、これは殿?」
「何とも言えぬ気持ちになるのは分かるが、読んでやれ」
「ははっ。では簡潔に読みたいと思います。え〜と、「来たる十八日に佐久間様が捕虜二百人全てを連れて岐阜城に戻ります。
拙者はその二百人全てを家臣として迎えたいのです。捕虜二百人の首領格の武士の名は飯富源太郎晴昌。副首領格の武士は弟の飯富源次郎繁昌。
彼等二人は甲斐武田の先代当主武田信虎に仕えて「赤備え」を結成した「甲山の猛虎」と呼ばれた飯富兵部少輔虎昌殿の忘れ形見であり、本来なら武田の赤備えの正統なる後継者だったのですが、
諸事情により父親は切腹に追い込まれ、領地を奪われて、更に父親が作り上げた赤備えまでも奪われて、それでもいつか領地を取り返し、父親の名誉を回復する為に臥薪嘗胆の心で武田に仕えていたのですが、
此度の戦で敗れた際、世話になった人間の首と鎧を武田に渡す役として、岩村城に行った際、亡くなって数年経過しているのにも関わらず父親を愚弄された事で武田を出奔し、
古臭い考えの武田ではなく戦でも内政でも新しい事を取り入れている柴田家に降りたいと申しております。
先の戦で武田を分断した武器と使用方法を先触れと共にお渡しします。こちらで何卒、二百人の助命を伏してお願い致します」との内容です」
「権六、お主の倅は戦だけでなく人たらしの才も持っておる様じゃな」
「元服前の童は、もう少し子供らしい言動をするものと思っていたのですが」
「権六、安心せい。こんな不思議な事をやってしまうのは吉六郎だけじゃ!」
「何とも不安しか無いのですが。それよりも殿。如何なさりますか?」
「そうじゃのう。赤備えを作った男の忘れ形見が首領格の二百人だからのう。いつか必ず来る武田との戦で吉六郎の麾下に入れて吉六郎の本当の初陣で共に戦わせるか。
武田に対する恨みも凄まじい様じゃからのう。吉六郎が扱えるなら、全員まとめて吉六郎の家臣で良かろう。それよりも、この武器の使い方を覚えるのが先決じゃ。仕様書を読んでみよ」
「は、ははっ。こちらの武器は種子島の筒の部分なので、使用不可になった種子島が有れば解体して量産可能です。そして、使い方は片方の穴を塞いで、
空いている穴から刀や槍の折れた破片や土や石の礫を入れて真ん中くらいまで詰めたら火薬を詰めて、火薬に紐を差して、
紐が隠れる様に火薬と土を交互に詰めて種子島の様に固めて、一応完成です。使う時は紐に火をつけて目的地に投げてください。試してみる際は、広くて人の居ない平野あたりで試す事をお勧めします」
「ふむ。説明を聞くだけだと種子島の様に火薬を詰めるが、引き鉄を引かずに紐の火が火薬に着くのを待つ様じゃな。よし!早速作ってみるぞ!物は試しじゃ」
こうして信長達による簡易パイプ爆弾の研究と試作が始まった




