捕獲の連絡を聞いたからゆっくり移動しますと
天正十四年(1586年)十月三日
備後国 某所
「もう捕獲したのか?」
「はい。毛利安芸守様の手の者より、「公方の他に幕臣五十名も捕獲し、現在、安土城に向かい進んでいるとの事です」
「そうか。分かった。護衛の任務に戻ってくれ」
「ははっ」
皆さんこんにちは。雷花の部下から「阿呆公方と幕臣達を捕獲した」との報告を受けて、予想以上の速さに驚いております柴田六三郎です
正直言って、あと3日くらいかかると思っていたのですが、あれかな?毛利家の皆さんが、公方の阿呆度合いに嫌気がさして、酒を呑ませて、寝てる間に秀吉に引き渡したとか?
その可能性も無くは無いか、まあ、どっちにしろ、あとは殿と大殿がどんな沙汰をくだすか次第だしな
とりあえず、安土城へ向けて進みますか
六三郎が呑気に考えながら進む事、3日
天正十四年(1586年)十月六日
備後国 某所
「殿。備後国の海は、越前国の海と違い、波が穏やかですな」
「確かにのう。官兵衛殿。播磨国の海も、同じ様に穏やかなのですかな?」
「六三郎殿。播磨国の海なのですが、淡路国に近い所は荒れ気味ですが、遠い所は穏やかという、不思議な海なのです」
皆さんおはようございます。銀次郎から瀬戸内海の波は、日本海の波と違い穏やかだと言われたので、播磨国の波も同じなのかと質問した柴田六三郎です
前世の記憶だと、瀬戸内海は全体的に波が穏やかだったと思っていたのですが、淡路島周辺は荒れ気味と言っているので、恐らく渦潮周辺の事を言っているのかもしれません
「そうですか。しかし、その様な穏やかな海と荒れ気味な海の両面があるとなると、此度の戦で1番の武功を挙げた羽柴様は、恐らく、
領地替えで中国地方の複数の国を持つ事になるでしょうから、海に強い者達を増やさないといけない事も含めて、色々と大変そうですな」
俺がそう言うと、官兵衛さんは
「はっはっは!六三郎殿。確かに羽柴殿は一番の武功を挙げましたが、六三郎殿はその次の武功を挙げたではないですか。それを考えたら、
毛利家の領地がどれだけ削られるかにもよりますが、六三郎殿の柴田家も、移動と同時に複数の国を持つ可能性が高いですぞ?」
笑いながら、柴田家の治める国が増える可能性を示唆してきた。その可能性は、無くは無いか
柴田家が羽柴家と共に中国地方へ移動したら、殿も大殿も間違いなく、毛利家と秀吉と俺を九州征伐の先陣として行かせるつもりだろう。と言うか確定だろうな
それを逆の視点から考えると、関東と東北には行かないで済むという事になる。良い点としてはそれぐらいだけど、まあ、とりあえず沙汰を聞いてからだな
「そうなったら、隠居した父上にも少しばかり働いてもらわないといけないですな。まあ、あまり期待せずに沙汰を待つとしましょう」
「それが良いでしょうな」
そんな話をしながら、進んでいた六三郎達だが
「殿!浜辺に人が倒れております。生きているのか、確認しますか?」
(ええ〜。土左衛門、とは違うか。まあ、死んでない可能性もあるし、確認くらいはしてみるか)
「そうじゃな。確認して、生きておるのであれば、少しくらい面倒を見て、
その後、話を聞いてから色々対応しよう。官兵衛殿、上杉殿、尼子殿。少しばかり、止まるが、それでよろしいですかな?」
「戦も無い状況下じゃ。黒田家はそれで構わぬ」
「上杉家も同じく。急ぐ必要も無いのであれば」
「尼子家も同じく。こんな事も偶には良いかと」
皆さんが納得してくれましたので、急遽レスキュー開始です。レスキューとは言っても、浜辺に打ちあげはれている人間2人を連れてくるだけですが
で、赤備えの10人くらいで、2人と、2人の荷物らしき物を回収して、急遽作った仮の本陣に移動させまして
火を焚いて、2人を温かい格好で寝かせていました。背格好だけで見ると、10歳前後の女の子と、8歳前後の男の子の姉弟の様です
呼吸はしているので、生きている事は間違いないのですが、無理に起こす必要も無さそうなので、今日は寝かせてやりましょう
翌日
「殿!前述に助けた姉弟が、目を覚ましました」
皆さんおはようございます。朝からレスキューした姉弟が目覚めたとの報告で起きた柴田六三郎です
朝から仕事が出来ましたが、とりあえず姉弟の前に行って、色々聞きますか
「目覚めた様じゃな。体調は大丈夫か?腹が減っておるなら、簡単な物になるが作らせるぞ?」
俺が声をかけると、弟の方が
「腹が減ってます。飯を食わせてくださいませ!」
正直に言ってくるものだから、思わず笑顔になる
「そうかそうか!腹が減っては何とやらじゃ!誰ぞ、飯を食わせてやれ」
「ははっ!」
で、準備した飯を2人に食べさせて、完食して、落ち着いたら、姉の方が
「誠にありがとうございます」
と、お礼をする。つられて弟も
「ありがとうございます」
と、お礼をする。これなら、話が出来そうだな
「うむ。それでは、色々と聞きたいのじゃが、その前に儂の自己紹介からしよう。儂は織田家家臣の柴田六三郎じゃ。お主達の名を教えてもらいたい」
「はい。私の名は一条信子と申します。そして、この男児は」
「一条万千代と申します。此度は、叔母上と拙者を助けていただき、誠にありがとうございます!」
ん?瀬戸内海周辺で一条さん?これって、まさかのあの一条さんの一族の子供の予感がするのですが?
※六三郎の予感はフラグです。