表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
532/612

戻りましたら移動の開始と下準備

天正十四年(1586年)九月七日

安芸国 某所


「羽柴様。ただいま戻りました」


「うむ。思っていたよりも早くて驚いたぞ!」


皆さんおはようございます。約50日ぶりに、毛利家でのお手伝いを終えて、本陣に戻ってまいりました柴田六三郎です


毛利家の嫡男、幸鶴丸くんが少しずつ、でも確実に健康体になって身長も伸びた事と、小早川藤四郎くん達の若武者達が逞しくなって、


毛利家の料理番の皆さんも、簡単ではありますが俺の肉料理レシピを覚えたので、帰る事になりましたが、事前に言われていたとは言え、やっぱりお偉いさんが後ろに居るのは緊張しますよねえ、だって


「羽柴様。お気づきかと思いますが、こちらが」


「羽柴筑前殿。お初にお目にかかる。毛利安芸守にござる」


毛利家当主の輝元さんを引率しているんですから。そんな輝元さんに秀吉は


「こちらこそお初にお目にかかる。毛利安芸守殿。よくぞお越しくださりました。此方に来てお越しくださったと言う事は、拙者の家臣からの文が届いたのですな?」


挨拶も早々に、話をする。輝元は


「はい。文の中には、拙者や嫡男の斬首も切腹も出家も書いてなかったので、命は救われたのだと思っております」


安堵の表情を見せる。しかし秀吉は


「安芸守殿。恐らく、殿も大殿も、毛利家が条件に出した、「公方を捕まえて織田家に渡す」を達成して、初めて、命を奪わない沙汰をくだすと思いますので、


油断はしないでくだされ。殿も大殿も、基本的には優しいお方なのですが、言った事を達成出来ない者には厳しくなりますので」


浮かれない様に、釘を刺す。それに気づいた輝元は、


「ご指摘、感謝いたす」


気を取り直して、お礼を言う。そして、


「改めてですが、羽柴殿。その公方の捕縛についてですが、基本的には毛利家だけで捕縛するつもりです。


ですが、万が一の場合は、羽柴殿達にも協力を要請するかもしれませぬ。その時は何卒」


阿呆公方捕縛の為の話になると、秀吉に頭を下げた。秀吉は


「安芸守殿。その様な事をせずとも、我々も手伝います。本音としては、公方捕縛の際は、簀巻きにしても良いと思います。ですが、一応は公方ですから


多少は敬う形で捕縛しないといけないかと思うのです。あんな公方でも」


あんな阿呆でも、形式上、敬う形を取らないといけないと思っているらしいが、正直、簀巻きにして馬に引っ張らせた状態で、安土城まで連れて行けばいいのに、と、思います


そんな俺の考えを他所に、吉川さんと輝元と秀吉は


「素直に応じる事は絶対無いでしょう」


「だからと言って、やらずとも良い戦を仕掛けるのも」


「どうにか本人の意思で外に出てくれたなら」


悩んでいるけど、良い策が出ない様です。そんな3人と同じく、考えてくれているのが黒田官兵衛さんですが、


名軍師と言えど、簡単には策が出ない様です。そこまでだと、経験豊富な人達でも悩む案件。だったのですが、その官兵衛さんから


「六三郎殿!何か、思い浮かびませぬか?百里を十日で走り抜くと決断した時の様に」


なんて無茶振りか来たのです。この官兵衛さんの言葉に、吉川さんと輝元と秀吉の3人が俺に注目して来まして


「柴田殿!何か思いついた策でも言ってみてくだされ」


「柴田殿!見事な策があるのであれば」


「六三郎殿。先ずは言ってみるだけでも」


(俺への期待値を爆上げした目で見ております。あんな阿呆だろ?自分1人では何もしないで、遠い場所から偉そうに物を言う、戦経験も殆ど無いのに、


人を使いたがる、気位だけは高い。ん?人を使いたがる、気位だけは高い、、、、、これならイケるかも!)


「羽柴様!毛利様!吉川殿!官兵衛殿!1つ策は思い浮かびました。聞いてから、判断していただきたい」


「「「「聞かせてもらおう」」」」


「はい。先ずは羽柴様が軍勢を率いて戻る際、あえて公方の屋敷の近くを通り、大声で戦に負けて敗走している事を広めてください」


「負けを装いながら、それを広める」


「はい。次に羽柴様の軍勢を追っている毛利様と吉川殿が、公方の屋敷に行き、公方に対して、軍勢の総大将になってくれと懇願します」


「負けを装った羽柴殿の次は、毛利家が勝ちを装うと」


「はい。その懇願する際、公方に対して移動手段を馬ではなく、輿で移動していただく。とでも煽てていただきたく」


「馬ではなく、輿で移動させる理由とは?」


輝元が俺に質問して来ると、官兵衛さんが


「拙者が予想している内容と一致しているのであれば、中々に面白くも恐ろしい策になりますな」


と、笑いながら言って来たので、


「官兵衛殿。恐らく予想と一致しているでしょうから、お三方に説明をお頼み願います」


「承知した。それでは、六三郎殿の策ですが、先ず羽柴殿の偽りの敗走は公方を外に誘き寄せる餌です


織田家が敗走したと聞いた公方は、織田家への恨みから軍勢を攻撃したい、戦に勝ちたい。それこそ、今の敗走している織田家ならば、背後から攻撃出来る


そう思っている所に、毛利殿の軍勢が登場し、織田家を叩く。と言う甘い言葉を投げかけ、更に、公方へ総大将になっていただきたい。と、公方が必要である、


自身の為に働いてくれる。と思わせて、出陣を決断させ、輿に乗せて移動しながら、羽柴殿の元へ連れて行き捕縛する。そう言う流れですな?」


うん。見事に当ててくれた。流石です


「官兵衛殿、お見事!細かい部分を言いますと、馬ではなく輿に乗せるのは、万が一、策に気づかれた時に逃げられない為です。


そして、輿に乗せる際、どうにかして、公方から刀を奪っていただきたい事と、公方の共の者を、公方から遠ざける事。この2つをどうにかして、やっていただきたく存じます。


あんな阿呆の為に輿を支える者達が死んだり、怪我をするなど、あってはなりませぬ」


俺の説明を聞いて秀吉は、


「成程、公方の気位の高さ、後先考えぬ戦経験の少なさを攻める。そう言う事じゃな、六三郎殿」


「大まかに言えば、そう言う事です。阿呆と煙は高い所を好みますから」


俺の策の核の部分を理解した様だ。俺の説明を聞いた吉川さんと輝元のうち、吉川さんは


「はっはっは!公方に対して「阿呆」と言い切るとは、柴田殿、いや、六三郎殿は豪胆じゃな!だが、言い得ておる!」


大笑いして、輝元は


「羽柴殿が最初の餌として逃げる振りをして、毛利家が次の餌として共に戦う振りをする。気位の高さを利用して、輿に乗せて行き着く先は羽柴殿の元、


そして、逃げようにも武器は無く、輿に乗せられているから落ちる以外は逃げられず、更に共の者達は周りに居ない。二重どころか五重の罠とは」


軽く引いていた。でも、


「では、各々方。拙者の策を実行に移す。という事でよろしいでしょうか?」


「「「「おう」」」」


と、言う事で阿呆公方の釣り出し作戦が決まりました。それじゃあ、準備開始と行きますか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
屋根付き扉付きの輿を作って外から鍵かけようw
取り巻きの元幕臣達には余罪(公方やらかしを煽るとか事実無根や針小棒大な噂の流布)が有りそうだから隔離捕縛しておくとよいのでは
いっそ取り巻きの側近連中は皆殺しにしといた方が良いのでは? 手足になって動くやつ居なけりゃ将軍って言っても何も出来ないし 阿保公方にもお前死にたいのか?って脅しにもなるし
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ