表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
525/620

赤備え達の話に毛利家は涙する

亀次郎達の案内で山に入った赤備えの面々は、既に全員集合していたが、直ぐには動けなかった。理由は


「兄上。毛利家の方々、遅いですな」


毛利家の面々がまだ到着してなかったからだが、待っている間に源太郎は


「仕方あるまい。あの動きは、儂達も最初は苦しんでおったからな。それに、源次郎を始め、皆も分かっておるじゃろう。


百里を走り抜けた後、我々以外で問題なく動けた人間は少なかった事を。それはつまり、儂達がやっている訓練は異常という事じゃ。あの訓練をほぼ毎日やっておったら


生半可な事では、疲れも無いからのう。それに、儂達の速さで移動しておった上杉家、黒田家、尼子家の方々も、疲れておったが動けておった。


これは柴田家と共に訓練を行えば、それだけ精強な軍勢が増えるという事じゃ。それはひいては、殿が仰っていた、内府様の考えの「南蛮に負けない国作り」


の軍事の部分に必要な事だと、儂は思う。儂達が動けるうちに、日の本が統一されて南蛮や明との戦になった時、何としても参加したいのう」


天下統一後の動きとして、戦になった場合の事を考えていた。源太郎がそんな事を考えていたら、やっと


「赤備えの皆様、遅くなり申し訳ない」


藤四郎達が到着した。しかし、足が震えていたので、


「小早川様、そして皆様。その様に歩くのもやっとな状態では、万が一にも大怪我を負う可能性もありますので、あまり無理をしないでくだされ」


やんわりと「走るな」と言っておいた。そして、藤四郎達も、


「申し訳ない。次郎兄上の手前、何とか山の中までは来ましたが、槍や刀を杖代わりにしないと、立つのもやっとなのです。なので、猪や鹿退治をお頼みします」


自分達が動けない事を赤備えに伝えて、狩りを頼んだ。頼まれた源太郎は


「分かり申した。それでは、亀次郎殿。案内をお願いします。喜兵衛殿。万が一の為に連絡役として待機しておいてくだされ」


「うむ。皆も気をつけてな」


「それでは亀次郎殿」


「はい。こちらです」


「皆!静かに早く!いつものやり方を忘れるな」


「「「おう」」」


小さい声で返事をした赤備え達は、亀次郎の案内で山中の深くに入っていった


残された藤四郎達は、昌幸に対して


「真田殿。飯富殿達は、どの様な経緯で柴田殿に仕える様になったのですか?教えていただきたいのですが」


源太郎達が仕えた理由を聞いて来た。昌幸は


「小早川様。実は源太郎殿達は、殿の初陣の敵だったのです。吉川様が話しておられた十四年前の美濃国での戦の際、武田家の足軽だったのが源太郎殿達だったのです」


簡単に説明した。すると藤四郎は


「敵だったのに、何故、仕えておるのですか?」


細かい部分まで聞いて来たので、昌幸は


「それはですな、殿が源太郎殿の心を動かした。とでも言えばよろしいですかな。戦の後、捕虜となっていた源太郎殿は、殿に対して、


「自分の首で源次郎達を解放して欲しい」と懇願しておりました所、殿からある提案をされたのです


その提案とは、源太郎殿達の所属していた軍勢の本陣代わりの城に戻った時、源太郎殿に対して大将達が労いの言葉をかけたのであれば、源太郎殿の首で源次郎殿達を解放しよう。


ただし、労いの言葉が無ければ、解放する話は無しだ。と、約束したのですが、その大将は事もあろうに、その時から数年前に、武田家が割れない為に


自害した、源太郎殿と源次郎殿のお父上の事を愚弄したのです。そこで、源太郎殿は武田家を出奔したのですが、


その城から戻って来た源太郎殿を、殿は家老の利兵衛時と共に、待っていたのです。それこそ、日が昇る前から。そして、戻って来た源太郎殿に対して、


「自分の命と引き換えに家族や仲間を守ろうとする者は信用出来る」と言った事で、源太郎殿は殿に命尽きるまで仕える事を決めて、源次郎殿達も、


そんな源太郎殿に説得されて仕えて、そこからは、十年以上、平時でも戦場でも、常に側に居るのです」


細かい部分まで話すと、藤四郎達は


「な、何と、素晴らしい主従関係ですか」


「例え敵であっても、それ程の信頼を持って接するとは。しかも、それが八歳の時なのが」


「やはり、大将の器とは、何歳であろうとも関係ないのですな」


泣きながら聞いていた。そして昌幸は


「小早川様。この話には続きがありまして、拙者も着けている、この赤備えの甲冑ですが、実は武田家で源太郎殿と源次郎殿のお父上が創設したのですが、


源太郎殿達が仕え始めた初日に、二百人分の赤備えの甲冑を贈呈したのです」


「何と粋な事を!」


「それを八歳の童が実行したとは!」


仕えた初日の事も話すと、藤四郎達は更に驚いていた。そんな藤四郎に昌幸は


「小早川様もいずれは当主になるとはいえ、殿のやって来た事は、あまり参考にならないかと思いますが、


それでも、真似出来る所は真似をしても良いと思いますぞ」


話をまとめた。そして、話を終えた頃、源太郎達が戻って来て、


「喜兵衛殿!猪も鹿も雉も三匹ずつ捕獲出来ましたぞ!久しぶりに殿の料理をいただける好機なので。張り切りました」


「それは良き事ですぞ!それでは、戻りましょう!」


獲物を持って来たので、そのまま村に戻って行った。ちなみに、赤備え達が全く疲れてない様子に藤四郎達は、軽く引いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
定期的に1話から読み返すのですが、赤備えの面々が仲間に加わってからもう10年以上経過してるんですよね…。 そりゃ心身ともに鍛え抜かれた強兵になりますわ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ