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転生武将は戦国の社畜  作者: 赤井嶺


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織田軍が来る迄に毛利家は話し合う

天正十四年(1586年〕五月二十日

備後国 某所


「次は更に東に進む!準備せい!」


「ははっ!」


吉川元春達が小早川隆景を探しに吉田郡山城を出て3日目、今だに隆景を見つけられない元春達は、少しずつ捜索範囲を東に移動させていた。


総勢2万人での大捜索にも関わらず、今だに見つかっていない状況に元春は


「これで、もしも、又四郎が織田に殺されていたら、儂達以上に、家臣達を抑えられなくなる、そうなっては戦の落とし所が無くなってしまう!そして、


太郎が長門国の兵達を連れてくる愚行が原因だと伝われば、謀反が起きる可能性が高い。そうならない為にも、又四郎を織田よりも早く見つけないと!」


隆景が戦の落とし所を考えているのと同じ様に、元春も戦の落とし所を考えていた。更には、輝元の愚行が敗戦の原因だと、兵達に伝わらない様に考えていた


そんな元春の考えが伝わったのか、元清が


「次郎兄上。敗戦の原因に思うところはあると思いますが、先ずは又四郎兄上を探す事に集中しましょう」


元春に捜索に集中する様に声をかける。元春も、


「済まぬ」


冷静さを取り戻すと、再び捜索に集中する。そして、捜索を開始して4日目、遂に事態が動く


天正十四年(1586年)五月二十一日

備後国 某所


「次郎兄上!周辺の百姓数名が、この近くで五十名前後の武士の集団を見たと言っておるそうです」


「誠か!?その場所に行って、更に詳しく聞こう!」


元春達は、更に東に進みながら、隆景を捜索していた。そんな中で、可能性の高い情報が入って来た事もあり、元春は直ぐにその場所への移動を決めた


移動して間もなく、目的地の農村へ行き、


「皆!農作業をしておる時に済まぬ!この中で、武士の集団を見た者は誰じゃ?話を聞きたい。出て来てくれ」


武士の集団を見た百姓に出てくる様に命令した、そして、その百姓が出てくると、元春は


「お主か。名は何と申す?」


「はい。竹吉たけきちと申します」


竹吉に質問を開始する


「竹吉じゃな。改めて聞くが竹吉よ、お主が見た武士の集団は、何処へ向かって進んでいたか分かるか?」


「西の方へ進んでいました」


「次に竹吉よ、その者達の格好は覚えておるか?儂達の様に、甲冑を着ておったか?」


「はい。ただ、皆様と違って、戦の後だったのか、何人かの方は、怪我を負っていました」


「誠か!?」


「はい」


「その者達は、どこら辺を通って行った?」


「山の中を通って行きました。それと、おら達から米や野菜をもらって、その礼として、こちらを渡してくださいました」


竹吉はそう言いながら、元春に小刀を見せた。それを見た元春は


「又四郎の小刀じゃ!間違いない!竹吉、その者達は、安芸国、いや、西へ向かっておったのじゃな?」


「はい」


重要な質問を竹吉に投げかけ、答えを聞くと、


「竹吉よ、感謝する!これは儂からの礼の小刀じゃ。もらってくれ」


「は、はい」


自らの小刀を竹吉に渡した。そして、村をあとにすると、


「皆!聞いたから分かるじゃろうが、又四郎達は生きて吉田郡山城を目指しておる。儂達が織田より先に又四郎達を見つけるぞ!」


「「「おお!」」」


こうして、隆景捜索の有益な情報を得た元春達は、全員で山の中に入って、隆景捜索を再開する。そして、


天正十四年(1586年)五月二十二日

備後国 某所


「又四郎!何処に居る!返事をせんか!」


「又四郎兄上!四郎にございます!姿を見せてくだされ!」


「又四郎兄上!」


「又四郎兄上!織田の者達の姿はまだありませぬ!安心して、姿を見せてくだされ!」


「又四郎兄上!」


元春達は、声をあげながら隆景を探す。そして、遂に


「次郎兄上!四郎!皆!拙者は此処に!」


隆景が元春達に声をかけながら、姿を見て見せる。それを見た元春達は、


「又四郎!無事か!」


「又四郎兄上!お身体は?」


「生きておる事、感無量ですぞ!」


と、隆景の姿を見て安心する。そして、隆景も落ち着いたからなのか、


「次郎兄上。織田の者達が安芸国へ進軍している可能性が高いのですから、急ぎ吉田郡山城へ行きましょう」


「分かった!先ずは、城に戻ろう!」


直ぐに城へ戻る事を提案して、元春もそれを受け入れた。隆景達の体調を気遣い、少し遅めに進む。吉田郡山城へ到着した時には、月が変わっていた


天正十四年(1586年)六月二日

安芸国 吉田郡山城


「又四郎叔父上!良く御無事で!嬉しい限りです!」


「殿。お話したい事がありますので、兄上達を大広間へ集めてくだされ」


「分かりました」


吉田郡山城へ到着した隆景や家臣達は、疲労困憊の為、到着したその日は深い眠りについた。そして、翌日には動ける様になったので、輝元に会い、元春達を集合させた」


全員集合すると、


「次郎兄上!そして皆!集まってもらい、忝い!皆は勿論、集まった理由は分かると思いますが、織田との戦についてです」


隆景は直ぐに話に入る。すると輝元は


「当然、戦いま」


と言うところを元春が


「殿!殿は藤四郎と共に、備中国の戦から撤退したのに、何故すぐに戦を継続すると決めるのですか!先ずは、我々と軍議を交わしましょう!良いですな?」


「う、うむ。直ぐに決めるのは良くないな。皆の意見を聞こう」


輝元に圧をかけると、輝元は圧に負けて静かになった。輝元が静かになった事で、隆景の仕切りから軍議が始まる


「さて、皆も知っていると思うが、前月に備中国で織田に敗れた。はっきり言って完敗と言っても良い!


山陰で兄上が、山陽で儂達が織田に敗れた。この事実は備中国周辺の国人領主と地侍に伝わっておると見て、間違いない


それに、我々の軍勢を総動員しても、長宗我部を加えた織田の軍勢は、我々の倍以上と言ってよい。備中国での戦で、身を持って実感した


はっきりと申しますが、これより先、一戦や二戦なら勝利出来るでしょう。ですが、最終的に毛利は織田に負けます!」


隆景の言葉に、元春達兄弟は反論をしない。兄弟の中でも随一の戦上手である、2人の兄が敗れた事実に、


自分達がどうにか出来るわけがないと、分かっているからである。しかし、輝元だけは分かっていない様で、


「叔父上達!まだ戦は終わっておりませぬぞ!地の利は我々毛利にあるのですから、その様な弱気な考えは」


戦の継続を主張していた。そんな輝元に対して、最初に抗議したのは叔父達ではなく


「父上!まだ、その様な事を考えておられるのですか?いい加減にして下さいませ!」


娘の安芸乃だった。娘に嗜められた輝元は、


「安芸乃!軍議に口を挟むでない!」


「いいえ!挟みます!よろしいですか父上!そもそも、此度の戦に敗れた原因の一つは、父上が長門国の兵達を。又四郎叔父上の元へ連れて行った事なのです!


父上が長門国の兵達をそのままにしておけば、次郎叔父上に勝利した軍勢を、攻撃出来たかもしれないのですよ!」


安芸乃の言葉に、輝元は黙るしか無かった。そんな中で、隆景は


「殿。姫様の仰る事も一部当たっております。ですが、それ以前に、織田の軍勢に長宗我部の軍勢を合わせた総数は、毛利の全軍の倍以上と言っても過言ではありませぬ!


更にもうすなら、織田の大将、とりわけ、山陰を攻める軍勢の大将ですが、次郎兄上から教えてもらいましたが、


件の大将の元には、尼子の残党、そして播磨国の小寺家の家臣で、小寺家を支えていた黒田家も参戦しているとの事。そして、何より驚いたのは、その大将が、まだ二十二歳の若武者であるという事です


その様な若武者が率いる軍勢に我々が敗れた事実は、周りの者達が毛利を見限る理由として充分でしょう」


六三郎の事を話す。輝元は、


「ならば、その若武者を狙い撃ちしたら良いではないか!」


と、提案する。しかし隆景は


「殿。織田と長宗我部、合わせて四万もの軍勢に対して、どの様にその若武者だけを狙い撃つのですか?」


静かに圧をかけながら輝元に質問する。輝元は、


「種子島を撃ちまくれば!」


輝元の答えを聞いた隆景は


「殿。種子島の弾も硝石も無限にあるわけではないのですよ。それに、良く考えてくだされ。二十代の若武者が、


歴戦の武将が居る中で大将として出陣しているのです。期待もあるでしょうが、それ以上に、その若武者なら一万を超える軍勢を預けても大丈夫、


という信頼あってこそでしょう。そんな若武者に、拙者と睨み合いをしていた老獪な大将が組み合わされたなら、地の利も無意味になってしまいますぞ?」


輝元に、六三郎と秀吉の組み合わせが危険であると伝える。しかし、輝元は


「毛利に勝ち目は無いと申すのですか?」


と、微妙に諦めきれない様子で、隆景に話しかけた。隆景は


「最終的に負けます。なので、毛利家を残す為に降伏する事も考えてくだされ」


そう輝元に伝える。輝元は


「じっくり考えたい。今日の軍議はこれまでとする」


そう言って、大広間を出て行った。残された面々も何も言わずに、そのままにした。

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― 新着の感想 ―
輝元くんさぁ…w ワンチャン六三郎を狙撃なんかで撃ち倒したとしても、秀吉という大将がいるし何より赤備え達を筆頭に、悪鬼羅刹の百鬼夜行になってぺんぺん草も生えなくなりそう。
毛利の存続がかかった重要な局面で当主の軽挙妄動に注意しなければいけないとは。この点については敵である織田家が羨ましいと両川の2人も思っていまいそう。 更新お疲れ様です。
輝元がそのまま大人しく降伏するか、暴発して手勢を連れて飛び出すかによって毛利の取れる方法も変わる。 また、飛び出した時、連れ戻せず、討死するともっと変わる。 両川の頭の痛いところですね。
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