話し合いの結果と名将の判断と悪知恵
天正十四年(1586年)四月十三日
長門国 某所
「それでは、出陣しますが、各々方!体調は大丈夫ですかな?」
「黒田家は問題ないですぞ!」
「上杉家も同じく!」
「尼子家も同じく!」
「それでは、周防国へ向けて出陣しましょう!」
「「「おおお!」」」
皆さんおはようございます。長門国に到着してから4日目の朝に、長門国の隣の周防国へ向けて出発しております柴田六三郎です
いやあ、長門国に到着して早々、まさかのかつての西国の覇者の子孫に会うとは思っていませんでしたよ
しかし、高代さんの実家の朝倉家と同じく、家督相続の邪魔になるから、男児を生んだ母親は出て行け!とか、領地がデカい大名の正室は、どれだけ怖いんだよ
正直言って、俺の正室の道乃は大丈夫だと思う。道乃は本来は武家の姫様だったけど、利兵衛が斎藤家から落ち延びて以降、百姓をやっていたから、基本的には変な性格ではないしっかり者だからな
ありがたい事に、俺の側室になった人は、まともな人だらけです、側室候補の高代さんは、まあ、この時代だと間違いなく変人だな。高代さんが俺の側室になるかは、流れに任せます
ああ、すいません。話が逸れましたね。改めて、大内家の皆さんですが、話し合いの結果、「戦が終わったら回収しに行くから、それまでは今までどおりに過ごしてくれ」
と、なりました。だって家族全員、これまで武士として人生を送ってないから、軍勢に参加させる事は出来ない!だから、待っててください。と、なりました
さて、周防国は安芸国の隣だから、流石に毛利の軍勢が居る可能性は高いよなあ。先ずは、じっくりと行きますか
六三郎達が長門国から周防国へ向けて出陣した頃、石見国と安芸国の境で陣取っていた吉川元春は、六三郎達がいつまでたっても姿を見せるどころか、姿を見たという情報も無い事に、疑問を持ち始めていた
天正十四年(1586年)四月十八日
石見国 某所
「殿。織田の軍勢は来ませぬな」
「ううむ。これは、出し抜かれたかもしれぬ!奴ら、もう石見国を抜けて、長門国へ入っておる可能性が高い!三男の又次郎よりも歳下の若造の掌の上で踊らされておる様じゃ!腹立たしい!」
と、苛立ちを隠せない口調の元春だったが、家臣から
「殿。口では腹立たしいと仰っておりますが、お顔は嬉しそうですぞ?」
と、ツッコまれ、嫡男の元長からも
「父上。二十年以上前の尼子との戦でも、その様に嬉しそうなお顔は見せなかったのに、此度の織田の大将の柴田六三郎とやらとの戦は、お顔が綻ぶ程、喜ばしいのですね」
と言われていた。元春はやはり生粋の戦人な様で、
「これ、内心を読むな!だが、隠しようの無い事実じゃ!二十年以上前の尼子との戦でも、これ程、心が昂る事は無かった!これ程の緊張感と高揚感は
そうじゃな、大内を滅ぼした陶某とやらと戦った厳島の戦の時以来かもしれぬ。あの戦では、父上も又四郎も共に出陣して、何とか勝った戦だったが、その時以来じゃな」
そう言いながら、笑っていた。そんな元春に、世鬼から報告の文が届けられる
「柴田六三郎とやらは、儂をどれだけ楽しませてくれるのじゃ?どれ、「現在、織田の軍勢は長門国を抜け、周防国へ入った模様です。そして、不思議な事に、周辺の地侍達も国人領主達も、
織田の軍勢に攻撃はしませんが、恭順の姿勢も見せておらず、織田の軍勢の被害は、ほぼ無い状況です」と、あるが、くっくっく、どうやら、無傷の状態で
安芸国へ来る事は、ほぼ確定と見て良いな。五十歳を過ぎて、戦の無いまま老いぼれて、死んでいくだけと思っておったら、これ程の戦上手な大将率いる軍勢が、続けて儂の前に出て来よった!」
元春は文を見て高らかに笑った。そして、
「織田の軍勢が周防国に進んでおるのであれば、此処に居るのは、もはや無意味じゃ!急ぎ撤退し、吉田郡山城の周辺に陣を構える!撤退じゃあ!急げ!」
「「「ははっ!」」」
即座に撤退する判断をくだした。元春達がそんな状況の中、六三郎達はと言うと、
天正十四年(1586年)四月二十一日
周防国 某所
「柴田様。これより先、七里もない距離にありますは、毛利の本拠地、安芸国です」
「山中殿、ここまでの先導、誠に感謝します」
皆さんこんにちは。周防国へ入りました柴田六三郎です。現在のところ周防国では、戦は勿論ですが、訳ありの人達に遭遇する事も無かったので、安心しております
ただ、俺の記憶の中の毛利家って、中国地方全域を支配していた家で、秀吉に臣従して領地を多少削られたあとでも、中国、四国、九州の一部を合わせて120万石は持っていたんだよ
でも、この世界線だと、じわじわと領地を削られても、備中、備後、安芸の3ヶ国を持っている。それなのに、まともな戦が伯耆国でしか起きてない
何故だ?まさか、織田信雄みたいな手柄欲しさに自分勝手な行動を取る大バカ野郎が、毛利に居るのか?
だとしたら、きっと毛利のお偉いさん達は、苦労してるだろうな。どうにか、その大バカ野郎を攻撃出来ないかな?
何やら、悪知恵を働かせ始めた六三郎だった。