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六三郎からの報告で睨み合いは更に重くなる

天正十四年(1586年)三月十五日

備中国 某所


「毛利は中々動かぬのう長宗我部殿。毛利を叩きのめしたいのに、戦にならずに済まぬな」


「いえ、羽柴殿。これ程の大軍が睨み合いをするなど、狭い四国では経験出来ないのですから、いつか内府様が、関東か九州へ大規模な戦をする為の経験と思えば、大した事はありませぬ」


「そう言ってもらえて、気が楽じゃ。だが、この様な状況だと、無策で動く事は悪手じゃな。だが、毛利両川、流石は名将と呼ばれるだけあるのう


こちらの動きも牽制してきよる。何か、毛利の隙を作る動きを出来たら良いのじゃがなあ」


六三郎達が石見国に入ってから、およそ20日後、備中国では秀吉が小早川隆景との睨み合いを続けていた。援軍として参陣している元親も簡単に動けない程、重苦しい空気を感じていた


それは毛利側も同じだった様で、


「ううむ。世鬼から伝えられた情報じゃと、織田の大将は羽柴筑前守という重臣らしいが、中々動かぬ


しかも、毛利に強い恨みを持つ、長宗我部家を抑えながらも動かぬとは。何かきっかけが欲しいのう」


小早川隆景が、秀吉と同じ様に、睨み合いを動かすきっかけを探していた。そんな隆景に対して、家臣は


「殿。大殿は、本陣に居たままで良いのですか?」


輝元が置物状態になっている事を質問した。その質問に隆景は


「殿が前線に居ては、織田の足軽の放つ矢弾で討死する可能性がある。万が一にもその様な事が起きない為に、殿は本陣にて控えてもらっておる」


と、答えたが、内心は


(この様な睨み合いの場に、太郎が来ては「自分が出陣して、織田を動かす」と言って、儂達を混乱させていらぬ労力を使う羽目になる。そうならぬ為に、本陣に大人しく居てもらった方がましじゃ!)


余計な事をさせない為に、本陣で大人しくさせていただけだった。隆景としては、輝元が置物状態のおかげで、戦に集中出来ているが、それでも


「何かきっかけが欲しいのう。これ程の緊張感溢れる戦は、陶の軍勢と戦った、厳島の戦以来じゃな。あの時は父上も次郎兄上も居たから勝てたのじゃが、儂一人では、織田の軍勢の穴を見つける事も出来ぬか」


何とかして、この睨み合いを動かしたいと考えていた


そんな両者だったが、秀吉に喜ばしい文が届けられる


「殿!柴田様からの文でございます」


「六三郎殿からとな!山陰で何か動きがあった様じゃな。どれ」


秀吉は文を受け取り読み出す


「どの様な内容じゃ。「羽柴様へ。山陰の進軍状況ですが、如月の初頭時点で出雲国を征圧し、文が届いている弥生の頃には、石見国の中央付近に進軍している予定です。そこで羽柴様へ提案したいのが、


尼子殿の家臣の山中殿から教えていただいたのが、石見国の真下に、毛利の本拠地の安芸国があるという事です。そこで、拙者達が石見国を征圧したら、


毛利は安芸国を守る為に、山陰の軍勢を安芸国へ戻すと推測し、石見国を征圧したら、安芸国へ向かわずに、


あえて遠回りの長門国から周防国を通り、安芸国を目指したいと思います。毛利の山陽の軍勢と睨み合いがまだまだ続くと思いますが、


毛利が拙者達の動きに気づいたら、動くはずですので、その時は長宗我部殿と共に、毛利を叩きのめしてくだされ。逆に毛利が動かない場合は、拙者達が、毛利を叩きのめします」とあるが、やはり六三郎殿は


若いながらに、戦を分かっておるな!儂と長宗我部殿は勿論じゃが、毛利も動けないのてあれば、動きやすい自分達が動くと!見事じゃ!長宗我部殿、文を読む儂の声が聞こえておったな?」


「勿論!六三郎殿が、毛利をかき回すと宣言したのですから、きっとやってのけるでしょう!そうと決まれば、羽柴殿!」


「うむ!毛利との睨み合いを続行じゃ!もしも、毛利が撤退したのであれば、六三郎殿達の動きに気付いた証!その時は、儂達が徹底的に追撃してやろう!」


「ははっ!」


こうして、六三郎からの報告は、秀吉にとっては幸運の報告になった。そんな中、六三郎はと言うと


天正十四年(1586年)三月二十五日

石見国 某所


「六三郎殿。これより先の進軍は、羽柴殿へ送った文の内容どおりに進むという事でよろしいのですかな?」


皆さんこんにちは。黒田官兵衛さんから、「進軍予定は秀吉に伝えた内容どおりなのか?」と質問されております、柴田六三郎です


まあ、内容とおりに進むのですがね。何故なら、石見国に入ってから、毛利の軍勢に一度も遭遇してないのです。毛利が何かしらの一発逆転を狙っている可能性もありますが、思い浮かぶ内容を官兵衛さんに説明しますか


「官兵衛殿。以前、山中殿が言っていました、「石見国の真下が毛利の本拠地の安芸国」との情報と石見国で今だに毛利の軍勢と遭遇してない現状から推測するに、石見銀山を守らずに、別の場所、


それこそ、石見国と安芸国の境に陣取り、我々が来るのを今か今かと待っているでしょう


なので、その毛利の裏をかき、遠回りになりますが、長門国と周防国を征圧しながら、安芸国へ向かいましょう」


俺の説明を聞いた官兵衛さんは、


「毛利が長門国と周防国にどれ程の軍勢を置いているか分からないが、安芸国よりは少ない可能性が高いか、分かり申した」


納得してくれた様だ。それじゃあ、さっさと石見国を征圧して、長門国へ行きますか!

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― 新着の感想 ―
秀吉と隆景がほぼ同格で睨み合ってるなら、それぞれ六三郎と元春の動きが明暗を分けるかな? 輝元が三本目の矢になれてたなら…ってのはたらればかなぁ。
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