六三郎が悩んでいる頃、長宗我部家が動き出す
秀吉は喜び、安芸乃の心中が揺れ動いていた頃、六三郎達は
「柴田様!これで、伯耆国の東側は完全に征圧した事になります!進軍を続けて、伯耆国全土を征圧しましょう!そして、伯耆国の先の出雲国も征圧したら、
備後国へ南下して、征圧して、一気に毛利の本拠地である安芸国へ攻め込みましょうぞ!」
と、山中鹿之介が提言する。しかし、六三郎は
「山中殿。羽柴様との軍議で、山陰を征圧すると決まったのですから、急な予定変更は要らぬ混乱を招きます。それに、尼子殿はその様な事を望んでおらぬ様ですぞ?」
と、勝久を盾に、鹿之介の提案を却下する。しかし六三郎は
「山中殿。その提案は、伯耆国、出雲国、石見国を征圧してから、羽柴様に提案してみますので、今は征圧する事に集中してくだされ。よろしいですな?」
鹿之助にそう提案すると、鹿之助は
「ははっ。申し訳ありませぬ」
納得した。それを確認した六三郎は
「さて、それでは西側を征圧する為に、進軍を再開しましょう」
進軍を再開した。そして、少しずつ、確実に伯耆国の征圧地域を広げていき、遂に
天正十三年(1585年)十一月五日
出雲国 某所
「柴田様!伯耆国を征圧し、遂に出雲国に入りました!月山富田城の戦に敗れて、出雲国を追放されて十九年。尼子家の手に出雲国を取り戻す事のみを考えていた事が、生きているうちに叶うとは!柴田様、そして皆様方!誠に、誠に!」
皆さんこんにちは。毛利との戦を終えてから、2週間と少しかけて、伯耆国全土を征圧して出雲国に入りました、柴田六三郎です
出雲国に入って、落ち着いた場所に本陣を構えると、山中さんが涙を流しながら平伏しております。
そんな山中鹿之介さんと同じく、尼子殿も平伏して、
「柴田殿。歳若い頃に追放されて、二度と戻れないと思っていた、出雲国に、父祖の土地に戻れる事、誠に感謝しかありませぬ」
そう言って来たら、2人以外の新宮党の皆さんも、同じ様に平伏しております。気持ちはわかりますが、次の事を決めたいので
「尼子殿、山中殿。そして、新宮党の方々。お気持ちは受け取ります。ですが、そろそろ次の事を決めたいので、立ってくだされ」
と、お願いしまして、皆さんを立たせてから、
「さて、それでは。この出雲国を征圧する事は決まっておりますか、その為にどの様な行動を取るか?を決めましょう」
軍議の開始です。俺以外の参加者は、前回の毛利の戦の時と同じメンバーですが、今回の軍勢は、山中さんの言葉から始まりました
「皆様!月山富田城を取り返しましょう!」
山中さんと尼子殿以外、「それは何処にある城?」みたいな感じになりましたので、俺が聞きましょう
「山中殿。その月山富田城は、出雲国を征圧する為には避けて通れぬ城なのですかな?」
「はい!元は尼子家の居城でした!それを奪い返す為にも」
山中さんは城を奪い返す事が目的の様だけど、
「山中殿。城を奪い返したい気持ちは分からんでもないが、その、月山富田城は兵を最大何人収容出来るのですか?」
「一万人は収容出来ます!」
一万人が収容出来る城らしいけど、それなら
「山中殿。その城に、我々に敗れた毛利が籠城している可能性もあるのですぞ?」
俺が考えている事を官兵衛さんが言ってくれた。更に、
「山中殿。失礼ながら、貴殿の主君である尼子殿は、月山富田城を取り戻す事を望んでおられるのですか?」
昌幸さんに至っては、「城を取り戻したいのは、お前だけじゃないの?」と遠回しに聞いてくる
名将2人の質問に山中さんは、言葉が出ない。そこで尼子殿は
「各々方。鹿之助が申し訳ありませぬ。毛利への憎しみが出てしまい、進軍予定を考えてなかった様です」
そう言って、俺達に頭を下げた。そして山中さんに向かって、
「鹿之助。お主の気持ちはありがたい。だが、今は尼子家の為という気持ちよりも、織田家と共に毛利征伐を行なっている事を優先してくれ
儂達の働き次第では、出雲一国といかずとも、月山富田城周辺くらいは領地になる可能性もあるのだから、今は城の事は後回しじゃ。良いな?」
尼子殿の説得に山中さんは
「ははっ!各々方、申し訳ありませぬ!」
と、頭を下げて静かになった。それじゃあ、軍議を再開しますか
六三郎達が出雲国の事で軍議を開いていた頃、四国でも動きがあった
天正十三年(1585年)十一月六日
讃岐国 高松城
「殿!弥五郎叔父上が参りました!」
「直ぐに大広間へ案内して差し上げよ」
「ははっ!」
場面は代わり、六三郎率いる別働隊が出雲国へ入った頃、讃岐国の高松城では、親和が叔父の親貞の到着を信房に伝えて、信房から大広間へ連れてくるところから
そして、親貞が大広間へ来て、直ぐに信房に平伏すると信房は、
「弥五郎殿。頭を上げてくだされ」
「ははっ!それでは」
信房に促された親貞は、頭を上げる。信房は親貞の顔を見るなり、
「弥五郎殿!左中将様から文が届いたぞ!読んでくだされ!待ちに待った内容か書かれておりますぞ!」
興奮気味に、親和経由で親貞に文を渡す。受け取った親貞は、
「読ませていただきます。「長宗我部土佐守。文が遅くなり、済まぬ!事前に羽柴筑前と六三郎からの文を読んでおるじゃろうから、簡潔に言うが、伊予国を征圧し、
征圧完了後は、備中国へ渡り、羽柴筑前と六三郎の援軍として、暴れて来い!準備が出来たら、即座に出陣せよ!」こ、こ、これは源三郎様!」
「そのままの意味じゃよ弥五郎殿。早く土佐守殿へ伝えてくだされ」
「ありがたき!それでは、兄上へ一日でも早く伝えたいので、失礼します!」
「うむ。気をつけて行ってくだされ」
「ははっ!」
親貞は、信房の言葉に返事をすると、直ぐに大広間を出て、城内に響く声で、
「伊予国への出陣が決まったぞ!急ぎ、土佐国へ行くぞ!憎き毛利を叩きのめすぞ!」
と、待機していた自分の家臣に伝えると、家臣達も
「「「「おおおお!」」」」
と、テンションが高くなり、周囲には戦か?と勘違いする者も居た。そんな状態の親貞達が城から出ていくのを確認した信房は
「さて、左近殿、五郎次郎。儂達も四国の安全の為、軍勢をいつでも動かせる様にしておいてくれ」
「「ははっ!」」
万が一の事を考えて、軍勢が動ける様に指示していた。信房の大名として成長した様子に一益も親和も、少しばかり嬉し涙を流していた。




